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震災せんだい圏 市民が撮った「あの日」
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(9)炊き出しの雑炊/温かさに救われる

トレーに入った雑炊風の汁物。電気、ガス、水道が止まっている中で、温かい食べ物はありがたかった=3月13日、仙台市宮城野区(佐藤圭子さん撮影)

 コメと野菜と少しの肉。味はしょうゆベースで雑炊風の汁物だった。
 「それでも温かくておいしかった」と、仙台市宮城野区の主婦佐藤圭子さん(46)は振り返る。近所の人が炊き出してくれたありがたい食事を自分のカメラに収めた。
 思えばついていなかった。東日本大震災当日の3月11日は、足の骨折で入院していた夫正実さん(47)の退院日。4日前が圭子さんの誕生日で、この日はすしでも取ろうかと思い、買い置きの食材はほとんどなし。おまけに、正実さんにと作っていたヒジキの煮物は、地震で鍋ごとひっくり返ってしまった。
 ギプスで動けない正実さんがいるため避難所には行かず、次男(12)と3人でマンションの3階の自宅にとどまった。
 余震が怖く、逃げられるようにドアを開けていると、ヘルメットを着けて避難している女性が見えた。言葉を交わした。
 しばらくすると女性が現れ、小さなおにぎりを2個届けてくれた。「幼稚園で炊き出しやってるよ」と教えてくれた。
 次の日から、幼稚園で炊き出しを分けてもらった。めんの入ったカレー味の雑炊、あんかけご飯が、今も記憶に残る。そこに集まってきた人に個人で近所に炊き出しをしている人の話を聞いた。写真の雑炊はそこでもらった。
 「遠くに行けなかったので、地元での炊き出しがありがたかった」と圭子さん。「あの時の牛丼また食べたいなあ」。次男は、小学校の炊き出しでおなかいっぱい食べた牛丼のことを今も話すという。


2011年11月18日金曜日

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