2011年11月19日03時00分
東京スカイツリーがオープンしたら、展望台に早く上りたい。どうしたらいい?
今月中旬の夜、スカイツリーの「足元」にある東京都墨田区の串焼き屋。30〜40代の男女4人が、第1展望台の団体予約申込書を囲んで頭を付き合わせていた。
「個人予約の受け付けは来年3月22日。それを待たず、今月22日から始まる団体予約に人を集めて申し込んだ方がいい」。IT会社員、佐藤望さん(39)=墨田区=の言葉に、他の3人がうなずいた。
4人は職場の同僚でもご近所でもない。建設中のスカイツリーに注目し、ネットで情報を交換してきた仲間だ。例えば佐藤さんは、2008年7月の着工から毎日欠かさずブログにスカイツリーの写真や情報を掲載。発信は1200日を超え、毎日数百人が見ている。「スカイツリーウオッチャーズ」。そう記した名刺を持つ人もいる。
そんな4人の最大の関心事はもちろん「展望台の入場券をいかに早く手に入れるか」。目標は記念すべき5月22日の開業初日。この日はその「作戦会議」だった。
佐藤さんたちは「開業日が近づくほど注目を浴びるから、個人予約ではチケットの入手が困難になる」とみる。人数が集まるのなら、今から団体枠で申し込んだ方がまだしもハードルが低い、という見立てだ。団体予約は25人以上が対象で、4人は友人に声をかけ、足りなければブログ仲間に呼び掛けるという。
スカイツリーは高さ634メートル。350メートルに第1、450メートルに第2の二つの展望台がある。いずれも今まで高さ日本一だった東京タワー(333メートル)を超え、今月17日には「世界一高いタワー」というギネス記録の認定を受けた。ビルを含む世界のすべての建物の中でも、中東ドバイのブルジュ・ハリファ(828メートル)に次いで2番目に高い。
入場券の仕組みはやや複雑だ。第1展望台は混雑を緩和するため、オープンから1カ月半は「完全予約制」になる。第2展望台のチケットは第1展望台で買う。セット券はない。
第1展望台の入場券を手に入れるには、旅行会社が企画する宿泊や列車代などがセットになった旅行商品を購入する手もある。
東武鉄道が設立した事業主体の東武タワースカイツリー社は、エレベーターの輸送能力から、1日あたりの来場者を1万5千人と見込んでチケットを売り出す。団体枠3割、旅行商品購入者も含めた個人枠は7割という内訳だ。
団体予約は先着順で、初日はファクスだけで、翌日からは電話でも受け付ける。個人予約の申し込み方法は詳細が決まっていないが、ネットが中心となる見込みだ。
いま旅行商品を扱っているのは、東武鉄道系の旅行会社・東武トラベルだけで、東京都内か鬼怒川温泉(栃木県日光市)の宿泊と東武線の往復乗車券をセットにしている。1日につき先着100人を受け付けているが、開業日分は受け付け開始の10月14日に30分で完売してしまった。年末ごろには、他の旅行会社からも発売される見通しだ。
先の「作戦会議」のメンバーの1人で広告制作会社を営む山下紀如(のりゆき)さん(40)=墨田区=は妻と小2、幼稚園年長の4人家族。「家族みんなで開業日に第2展望台まで」と思い描く。
両親も招くつもりで、計6人分の入場料金を計算してみた。個人枠で申し込むと1人500円の日時指定料金が加算され、大人3500円、小学生1900円で総額は1万7800円に。一方、団体枠だと割引があり、大人2800円、小学生1310円で総額は1万3820円。個人枠より4千円ほど浮く。
財布に優しいのも、団体枠を目指す理由の一つ? そう尋ねると、山下さんは笑った。「僕の頭の中では金額はぶっ飛んでいます。開業日に上れるのなら、もっと高くていい」(黒川和久)
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〈東京スカイツリーの展望台〉 第1展望台はレストランやカフェ、ショップが入り、晴れれば70キロ先まで見渡せて富士山を望むこともできるという。収容人数は2千人。40人乗りの大型高速エレベーターで地上から50秒で到着する。第2展望台は外周をぐるりと囲む空中回廊を備え、空を散歩するような体験ができる。収容人数は900人。第1展望台からは30秒で着く。開業から1年で540万人、足元の商業施設を含めると2500万人の来場者を見込む。