大震災“的中”の博士「関東近海でM9」と警告!その恐るべき根拠

2011.11.18

 東日本大震災の発生を“的中”させた研究者が、マグニチュード(M)9・0級の地震発生リスクが高まっていると指摘し、注目されている。震源地は関東地方の近海、十勝沖の可能性があり、地震エコーと呼ばれるFM放送向け電波の乱れが「3・11」発生前と似たような動きを示しているというのだ。今度は首都圏や北海道に最大震度7の強烈な揺れや大津波が襲いかかってしまうのか。

 地震エコーの研究を続けているのは、北海道大元助教授で同大地震火山研究観測センターの研究支援推進員、理学博士の森谷武男氏だ。

 2002年から、普段は受信できないFM放送向けVHF帯(超短波)が、地震発生前になると本来、到達しない地域にまで届くことに着目した。簡単にいえば、どこかの放送局が出した電波が、地震が起きる前になると、届かないはずのエリアまで伸びてしまうということ。

 その異常な電波の受信が続いた後、受信が落ち着く1−9日の「静穏期」を経て地震が起きる“法則”をみつけた。

 現在は北海道内と福島県、群馬県に計15カ所の観測点を設け、電波の乱れに目を光らせている。

 今年4月以降、本来は届かない89・9メガヘルツの電波を北海道えりも町に設置したアンテナが受信するようになった。

 同氏の統計では、異常な電波を受ける継続時間が長いほどマグニチュードや震度が大きくなることが分かっている。10分続けば震度1、100分なら震度2…と次第に強くなるという。

 「4月からの積算で、すでに20万分を超えている。マグニチュードが9レベル、震度だと最も強い揺れ(震度7)が発生する危険性を示している。海域なら大津波の発生もある」

 どこから発信された電波を拾ったのか。

 89・9メガヘルツはNHKが北海道の中標津(なかしべつ)町や枝幸(えさし)町、岩手県の洋野(ひろの)町と葛巻町などで放送、発信しているほか、民間の放送局が石川県輪島市、神戸市にある。

 森谷氏は「神戸や石川は遠すぎる。道内にある他の観測点を調べてみると、(NHKの)中標津、枝幸での(電波を拾う)異常がみられないことから、この線は消えた。岩手県から出た電波である可能性が高い」とみている。

 では、M9レベルの地震が岩手県を震源に起きるのか−というと、そうではないようだ。

 「M9だと、東日本大震災の震源域で起きる最大余震にしてはあまりに大きすぎる。新たな地震と考えたほうが自然。3・11の後も地下が壊れていない海域として南は房総沖から伊豆半島沖、北は青森沖から十勝沖で、巨大地震の発生リスクが高まっているとみている」

 岩手沖の地下も不気味に動いているが、実際に大地震が起きるのは南は関東近海、北は十勝沖というわけだ。

 これまで森谷氏の研究では2003年9月の十勝沖地震で、発生12日前に北海道広尾町の放送局からの電波を、本来はエリア外の弟子屈(てしかが)町でキャッチ。「M6−8の地震が起こる」と予測し、実際にM7・1、最大震度6弱の地震が発生した。

 実は森谷氏は89・9メガヘルツの異常な電波を東日本大震災の8カ月前から、今回と同じ北海道えりも町で観測していた。受信時間の積算が示した地震の規模は「M8からM9」。そのため、3・11後は「地震予知を的中させた学者」として注目され、マスコミ露出度も高まっている。

 しかし、東日本大震災では事前に情報を発信できなかった。「地震発生の前に生じる静穏期の変化が分かりにくかった。非常に残念だ」と悔しがる。

 「ただ、東日本大震災のおかげで巨大地震が発生する場合、危機が迫ったことを示す静穏期を判別しにくいことが分かった。現状でM9レベルのエネルギーが蓄積されていることは間違いない。つまり巨大地震は今後、いつ起こっても不思議ではないということだ」

 危機はもう、すぐ目の前まで迫っているというのか。

 ■非常にセンセーショナル

 FMラジオの電波に着目した地震研究について、他の専門家はどのようにみているのだろうか。東京大理学部、ロバート・ゲラー教授(地震学)は「非常にセンセーショナルな内容だ。本当にM9の地震発生を予知しているのなら、大変なことだ」と評した。

 「残念ながら、電波と地震の因果関係がよく分からない。電波の異常をみて、それが雑音なのか、何かのシグナルなのか、どのように判別しているのだろうか。同様の現象が起き、地震が発生しなかったときの検証はどうなっているのか、疑問が残る」

 そもそも、電波や電磁気現象の観測で地震を予知しようとする研究をこうみる。

 「一部の学者がとても熱心に行っている。しかし、学界の中では非常に“マニアック”な存在だ」

 ただ、「学説としては正しいのかもしれない。論文を学術誌へ積極的に発表し、学者からの批判を甘んじて受け、反論していくなかで自らの学説を固めていくべきだろう」とみている。

 

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