総理府統計局では毎月様々な商品の価格を調査し、それを家計消費に占める購入金額でウエイト付けした消費者物価指数(CPI)を作成し公表している。ここでは、消費者物価指数を前年の同じ月の値と比べて何%変化したかという値をグラフにした(前年同月と比較するのは物価の季節変動の影響を避けるためである)。

 消費者物価は気候変動等で上下する生鮮野菜などの価格変動によって大きく影響されるので、生鮮食品を除いた指数で消費者物価の動きを追うことが常道となっている。

 2011年7月分から2005年基準の指数から2010年基準の指数に変更された。総合指数を算出する際の品目別のウェイトも変更されたので物価上昇率自体も以前と異なっている。物価の増減率が相対的に低い品目のウェイトが大きくなったので、物価上昇率は下方修正された。例えば、総合、及び生鮮食品を除く総合は2011年4〜6月はプラスであったのが今回の改訂でマイナスに修正された。

 消費者物価指数は2011年9月に生鮮食品を除く総合で対前年同月比プラス0.2%と3カ月連続で上昇した。生鮮食品を含む総合は0.0%だった。

 図録4722に見るように海外の物価動向と比較すると日本の物価上昇率は相対的に低く、日本のデフレ的体質からの脱却は容易ではないことが分かる。

 2010年4月については、平成22年4月から導入された高校授業料無償化(公立高校の授業料無償化・私立高校への高等学校等就学支援金制度)の影響がマイナス1.5%のうち0.54%分(寄与度)と計算されている。もし高校授業料無償化がなかったとしたらマイナス1.0%と若干の改善となっていたと見なせる。

 なお、09年5月以降の大きなマイナスは、08年5月以降に物価急騰が起こったためであり、下図の通り、指数そのものの毎月の動きを見ると5月以降で急に物価が下落したわけではない。また対前年同月比が最近回復しているといっても前年同月の指数が落ち着いた状況だったためであり、指数そのものはなお低下している。



(参考:2010年10月頃のコメント)

 我が国の消費者物価はデフレ基調の経済推移の中で長らく安定していたが、2007年後半から、世界的な石油価格や穀物価格の高騰の影響により、上昇基調に転じた(石油価格の高騰は図録4714参照、穀物価格の高騰は図録4710参照、物価の長期推移の国際比較は図録4730)。

 サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融不安と景気低迷により、原油市場や穀物市場はいっときの極端な高騰の状況は収まった。

 その後も物価が低迷するデフレ状態が長く継続している。2010年10月5日には、金融緩和策として、日銀は、政策金利(無担保コール翌日物)を年0.1%程度から年0〜0.1%程度に引き下げる事実上のゼロ金利政策を復活させた(2006年7月以来、約4年3カ月ぶり)。今回、目新しいのは「消費者物価の対前年上昇率1%程度が展望できる情勢となったと判断するまで、ゼロ金利政策を継続する」としている点であり、インフレターゲット政策にやや近づいている。物価が安定しているかどうかを判断する基準は「対前年比2%以下のプラスで、中心は1%程度」だという(東京新聞2010.10.6)。当図録、あるいは図録4722を見ても、こんな状況は何時来るのだろうか、という感を禁じ得ない。

(2008年6月9日収録、6/27・7/25・8/29・9/26・10/31・11/28・12/26更新、2009年1/30・2/27・3/28・5/1・6/1・6/26・7/31・8/29・9/29・10/30・11/27・12/25更新、2010年1/29・2/26・3/26・4/30・5/28・6/25・7/30・8/27更新、10/6更新・コメント改変、10/29・11/26・12/28更新、2011年1/28・2/25・3/25・4/28・5/27・7/1・7/29・8/26・9/30・10/28更新)

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