「高校無償化」、各団体が文科省に要請、公正な審査と即時実施求め
審査再開から2カ月以上が経過
要望書を手渡す全国朝鮮学園理事長連絡会の金順
彦会長(11日) |
去る8月末、朝鮮学校生徒への「高校無償化」制度適用の審査手続きが約9カ月ぶりに再開された。文部科学省は審査に要する期間を「少なくとも2カ月」としていたが、今も「審査中」だとし、期日を明確にしていない。
一方、審査再開以降、朝鮮学校の教育内容や運営状況をめぐり、一部のメディアが事実に反したわい曲報道を繰り返している。これに呼応するかのように、「無償化」問題を再び政治のかけ引きに悪用しようとする動きもある。
そうしたなか、文科省に対する要請活動が再び活発化している。
11日には、在日本朝鮮人教職員同盟 、全国朝鮮学園理事長連絡会、東京朝鮮学校オモニ会連絡会の代表らが文科省を訪れ、朝鮮高級学校生徒に対し「無償化」制度を即時適用するよう求める中川正春文科大臣宛の要望書を手渡した。
要望書は、結論を先送りしようとする政府内の動きや一部メディアのわい曲報道に注意を促し、「外交上の配慮などにより判断すべきでなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」とした日本政府の「統一見解」についてあらためて強調。「無償化」制度の趣旨と文科省が自ら示した審査基準に則り公正かつ速やかに審査を行い、朝鮮学校生徒に対し一日も早く実施するよう求めた。
応対した文科省修学支援室の和田勝行室長は、審査が長引き関係者が不安を抱えていることに理解を示しながら、「文科省としては最大限の中でやっている。極力早く審査を終えたい」と述べた。
文科省は現在、書類審査と実地調査を行っている。今後、それらをもとにした有識者会議を経て大臣が最終判断を下す。
神奈川の朝鮮学校関係者、保護者、日本市民らも
文科省に要請に訪れた神奈川の朝鮮初級学校校
長とオモニ会代表たち(16日) |
14日には、神奈川の朝鮮学校を支援する有志たちと神奈川朝鮮中高級学校の代表たち、16日には神奈川県の朝鮮初級学校3校の校長と保護者代表たちがそれぞれ文科省を訪れ、要請を行った。
「日朝国交正常化をすすめる神奈川県民の会」の原田章弘共同代表(前横須賀市議)は「朝鮮学校の生徒たちは過去、植民地時代に朝鮮半島から日本に渡ってきた人や強制連行された人々の子孫たちだ。日本政府はいつまで差別を続けるのか」、高梨晃嘉事務局長(前横浜市議)は「国の対応は理不尽で理解しがたい。これまで地域で日朝交流を進めてきた市民たちもそう言っている」と厳しく指摘し、一日も早く朝鮮学校に「無償化」を適用するよう求めた。
「神奈川朝鮮女性と連帯する会」は10月に行われた神奈川朝鮮中高級学校創立60周年記念行事について言及。「生徒の公演なども観たが、本当に素晴らしかった。生徒たちはきっと日本社会で活躍してくれるだろう。差別は許されない」と述べた。
横浜、川崎、南武の朝鮮初級学校のオモニ会役員たちは「いつまで待てばいいのか。その間にも子どもたちの不安や日本に対する疑念が日々積み重なっている」「草の根で朝・日友好をいくらすすめても、その芽を日本政府が摘んでしまっている」と指摘した。
また、朝高生たちが国家賠償請求訴訟の準備をしていたことに言及。「勉学に励み青春を謳歌する大切な時期に裁判に関わろうとしている子どもたちの気持ちを考えてほしい」と訴えた。そして、子どもたちが朝鮮人として胸を張って生きていけるよう、前年度の卒業生に対する支給も含め、一日も早く朝鮮学校生徒に「無償化」を適用するよう求めた。