西日本新聞

法廷の録画 証拠採用 知的障害ある被告の真意は? 佐賀地裁

2011年11月16日 07:01 カテゴリー:社会 九州 > 福岡

 知的障害のある男性(59)が選挙ポスターを破ったとして公選法違反の罪に問われた佐賀地裁(若宮利信裁判長)の公判で、地裁は法廷での男性の様子をDVDに録画し証拠として採用した。15日の公判では、この録画などを基にした精神科医の鑑定結果が採用された。争点は男性の責任能力と訴訟能力。法廷の録画の証拠採用は異例で、迎合的な受け答えをしやすいともいわれる知的障害者の真意を慎重に見極める取り組みといえる。

 裁判員裁判では被告人質問を録画し、裁判員が評議の参考にするが、男性の弁護団によると職業裁判官のみの公判で被告の様子を録画・証拠採用するのは珍しい。

 事件は2009年8月、佐賀市で衆院選候補者のポスター4枚が破られているのが見つかり、近くにいた男性が逮捕された。罰金30万円の略式命令に男性側が納得せず正式な裁判になった。

 公判の録画は名和田陽子弁護士が申請した。男性の能力を慎重に見ることに加え「地裁も上訴審を見越して、一審の判断の根拠を記録に残そうと考えたのではないか」と名和田弁護士は言う。

 DVDに収められた男性は繰り返し立ち上がるなど落ち着かない。「私は誰ですか」と問う弁護士に「裁判官」と即答。「あの人は誰ですか」と検察官を指さしても「裁判官」と答えている。

 同じく証拠採用された捜査段階の自白調書で、男性は「私が住む佐賀2区からは○○が立候補していた」「うさ晴らしのためポスター全部を破ろうと思った」などと動機を明確に述べている。どちらが本来の姿なのだろうか。法廷では、男性の自白調書の信用性も争われている。

 15日の公判で採用された精神鑑定の結果は、男性には中等度の精神遅滞があり、精神年齢は7-9歳程度。訴訟能力はなく「善悪を判断する能力はある程度ある。(事件当時は)それに基づいて行動を制御する能力は著しく損なわれていた」と、責任能力は限定的だったとした。

 一方、男性の自白調書について地裁は15日の公判で「違法な誘導があったとは言えない」と判断した。求刑は来年1月17日、判決は同2月21日の予定。

=2011/11/16付 西日本新聞朝刊=

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