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派遣法改悪と反貧困系の凋落 - 政権と官僚に愚弄された果て
一昨日(11/15)、労働者派遣法改正について報道があり、製造業派遣や登録型派遣の原則禁止の規定を削除する修正案で、民・自・公の3党が合意したと伝えられた。このニュースはテレビで報じられていない。朝日の紙面(11/16・3面)には小さく記事が載っている。きわめて重大な事件だと思われるが、世間の反応は冷ややかで、ネットでも特に大きな論議が起こっていない。私が最も驚いたのは、反貧困系の面々がこの問題に何も反応を示さなかったことで、不可解でならない。まず、最初に関根秀一郎だが、先週末から四国に遊びに行っていて、その様子をTwitterに書き込んでいる。11/12に高知着、「看板の出てない居酒屋に入った。勧められるままに清水サバの刺身を頼んだ。これがうまい!弾力があって甘くて味が濃い。すだちと塩で食うのもうまい。続いてハゲの鍋をいただいた。肝もたっぷり。イッヒッヒッ」などと、現地レポートしている。翌11/13には、「すげぇうまいっすよ。酒盗に続いてかつおの塩たたきをいただいてますが、脂がのってて最高!」とも。11/14に四万十に向かい、11/15には件の報道に接したはずだが、当日は書き込みはなかった。ただ、衝撃のせいかどうか、現地レポートの方は筆が止まっている。四万十の天然鰻と手長エビの賞味はどうだったのだろう。最初に関根秀一郎を取り上げたのには理由がある。


11/11の東京新聞の記事を見ていただきたい。この記事と写真は記憶にとどめてよく、大袈裟に言えば、ある種の記録として歴史に残るものと言える。今回の製造業派遣と登録型派遣の禁止を解除した修正案に関心を持つ者には、凝視して意味を噛み締めるべき重要情報だろう。11/9、反貧困系の活動家リーダー3人が厚労省を訪れて副大臣に面会し、棚ざらしになっていた派遣法の早期成立を陳情した。写真の右端が鴨桃代で、左端が関根秀一郎である。応対したのは牧義夫。関根秀一郎が旅に出る3日前だ。Twitterには、「改正派遣法の早期成立を要請する文書を牧厚生労働副大臣に手渡しました。牧副大臣は『有期雇用など次の課題がたくさんあるので、何とか臨時国会で成立させたい』と意向を表明。派遣切りを二度と繰り返さず、日雇い派遣などの低賃金・不安定雇用をなくしていくために、改正派遣法の成立を!」とある。この東京新聞(中日新聞)の記事稲田雅文が書いている。記事を読むとわかるとおり、また、本人のTwitter情報からも窺えるとおり、稲田雅文は派遣問題に対して内在的な立場の記者で、この陳情現場を取材したのは、鴨桃代が手配して立ち合わせ、記事にさせたのだろうと想像がつく。鴨桃代は、11/7と11/9の両日、民主党と厚労省に派遣法改正の早期成立を求める要望書を提出していた。

11/15の民・自・公3党の合意の発表は、この鴨桃代と関根秀一郎の陳情と要望書に対する回答なのだ。牧義夫が素早く動いてくれたのであり、改正案成立の政治を実現してくれたのである。牧義夫、人も知る、民主党内の極右新自由主義の最悪の男。厚労副大臣は二人いて、現在は牧義夫と辻泰弘だが、牧義夫は民社協会の所属で、辻泰弘は旧民社党の議員である。1978年に大学を卒業して、すぐに民社党本部の専従になっている。時代を考えれば、どれほどの筋金入りかが理解できる。こんな強烈な二人が厚労副大臣に就いていた。2年前、山井和則がいたポジションである。鴨桃代のコメントを聞きたいものだが、残念ながら、鴨桃代はTwitterのアカウントを持っていない。要するに、官僚と民主党政権に反貧困系が嘲弄され、愚弄されている図なのだが、それに対して反貧困系が怒っている様子がない。こうした現実を見たとき、一般の派遣労働者はどう思うだろうか。反貧困系の幹部に対して不信感を持つ者も出るのではないか。結局、上同士は繋がっていて、巧くパフォーマンスをやっているだけなのではないかと。11/9に派遣法早期成立の要望書を提出し、11/15にこうした回答が出て来て、反貧困の幹部たちが沈黙していれば、そういう疑念を抱く者が現れてもおかしくない。少なくとも、反貧困の運動家たちへの期待や信頼は薄れる結果になるだろう。

次に湯浅誠だが、Twitterの方は5/10から更新が止まったままで、最近は、「湯浅誠からのお知らせ」というメールニュースで情報発信を続けている。それを見ると、何月何日にどこどこで集会がありますという告知ばかりであり、労働問題でメッセージを出す等の言論活動は一切やっていない。また、今回の件もそうだが、派遣関連の時事で何か発言し、マスコミが取材して報道するという場面もない。野田政権の発足と同時に、例のボランティア連携室の方は閉店となり、上司だった辻元清美と共にお払い箱になったが、内閣府参与はずっと続けている。震災ボランティアの任務は終わったのだから、政府に残って仕事を続けるとすれば、パーソナルサポート制の拡充だとか、厚労行政に関わる領域であるに違いない。この派遣法改正なども、まさに参与が識見をもって関与し、積極的にアドバイスをする政策課題ではないか。2年半前、神田一橋中学校での反貧困フェスタ2009に参加したとき、湯浅誠に対して、反貧困ネットで衆院選に向けて政策課題を提起し、政党の公約に反映させるように動いてくれと直接頼んだことがある。その場の中島岳志が賛同して援護射撃してくれた。その結果なのかどうか、反貧困ネットは投票直前の7/31に自前のマニフェストを策定、各党の代表を集会に呼び、これらの要求を実現せよと迫る展開となった。この前後の頃が、湯浅誠と反貧困が最も輝いていた時期である。

そのとき、「具体的にどうすればよいのでしょうかね」と問い返してきた湯浅誠に、私は、「例えば、製造業への派遣禁止を政策要求の焦点に設定したらどうか」と提案した。それに対する湯浅誠の回答を今でも覚えている。湯浅誠は私にこう言ったのだ。「製造業への派遣禁止は今は問題にしない方がいいと思う。むしろ問題は登録型派遣の禁止の方ですよ」。登録型派遣の禁止こそ最優先なのだと強調したのである。そして、それから半年後に民主党が政権を取り、民・国・社の3党の協議で派遣法改正の成案が纏まり、製造業派遣の禁止も、登録型派遣の禁止も、二つとも盛り込まれる経過となった。今回、湯浅誠が何より最優先だとした登録型派遣の禁止が改正案から削除される事態となったわけだが、厚労行政のアドバイザーの要職にある湯浅誠は、これに対して何も批判のコメントを発しないのだろうか。否、この政策を職掌する内閣府参与に対して、厚労官僚が先に情報を届けないはずがないし、湯浅誠の立場なら、民・自・公3党の協議がどう進行しているか、情報を掴めないはずがないのである。間もなく予算の時期であり、来年度の法制度改正はこの時期に表に浮上する。マスコミが既成事実として発表する前に、3党の協議に割って入り、この改悪は許さないと体を張って阻止するべきだっただろうし、マスコミを使って世間に騒動を起こせばよかった。今からでも、この改正案(改悪案)には反対で阻止すると明言すればよいのだ。

牧義夫と官僚と3党は、この派遣法改悪に対して、おそらく湯浅誠から反撃や妨害はないだろうと踏んでいる。そういう政治の目算があって、ここまでの反動政策を平然と発表できるのに違いない。普通に考えれば、こういう法案を政府が出すのなら、立場的に参与職を辞任して抗議するのが当然だ。しかし、参与に就任して以来、そういう局面は幾つもあったし、「税と社会保障の一体改革」の検討部会がそうだった。湯浅誠は参与を辞任せず、沈黙を続けるか、詭弁でその場を言いつくろうだろう。反貧困ネットの代表は宇都宮健治だが、日弁連のサイトには、3党合意の発表に対して何も反応がない(11/16現在)。反貧困ネットは、これまで何をめざしてきて、これから何をめざすのだろう。雨宮処凛は、11/15のTwitterで、「ずーっとたなざらしになってた派遣法問題、こういうことに・・・。なんで? どうして??」と書いている。何でどうしてと問いたいのはこちらの方であり、一般の派遣労働者であり、答える責任は反貧困幹部の雨宮処凛の側にあるのではないのか。自分の立場を勘違いしてないか。こんなことにならないように活動するのが反貧困ネットであり、その重大な任務を負うからこそ、国民から支持と期待を集めていたのだろう。雨宮処凛にせよ、河添誠にせよ、Twitterに書き込む内容は自己宣伝と自己顕示ばかりの羅列であり、自分自身をマスコミ論者か芸能タレントと思い込んでいる軽薄さが際立つ。自分の任務と使命に関わる問題を論じず、メッセージを発信をしていない。

その点は、マスコミ論者でありながら、金子勝の方がよほど真面目に丁寧にやっている。そんな中で、関根秀一郎のTwitterは、比較的地味な内容で、コツコツと日常の団交について触れ、反貧困の面々の中では納得できるものだった。反貧困系の意識が労働貴族化している。その契機(体制内上昇・タレント志望)は、初発から(関根秀一郎は別にして)彼らの中にあった可能性があり、そして官僚の一員に連なった湯浅誠の行動が拍車をかけている。湯浅誠が成功モデルだから、誰もがその真似をしてフォローするのだ。Twitterが見せびらかしとひけらかしで終始すれば、底辺の労働者一般の心が離れないはずがない。これは危機である。そして、資本と官僚の側にとって勝利と前進である。今、一部から「反貧困ブームの終焉」が言われ始めた。これは、新自由主義側からの言説の攻撃であり、小泉時代の原状に回帰するための戦略上の布石なのだが、それに対して、私は反貧困の側に立って反論しようという気にならない。赤石千衣子も、どれもこれも労働貴族化ばかり。彼らが労働貴族をめざすのは何故なのか。その構造的な問題に関心を覚える。おそらく、反貧困の運動の方向性を見失い、意味を見失っているのだ。意味を実感で確認できないからだ。これについての仮説は、また別の機会に論じよう。最後に、もう一つ、「派遣法の抜本改正をめざす共同行動」。1年前からBlogの更新が止まっている。彼らが派遣法抜本改正の主力部隊であり、2年前は頻繁に院内集会を開き、活発にアクションを続けていた。

どこへ消えたのか。誰かに倣って、転向と変節を遂げたのか。


by thessalonike5 | 2011-11-17 23:30 | Trackback | Comments(0)
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