【ロンドン=松崎雄典】欧州の市場参加者が債務危機の拡大を警戒している。財政悪化が際立つイタリアなど南欧諸国の国債だけでなく、域内最大の経済大国であるドイツに比べ財政力が弱いフランスなどの国債も売られ始めた。景気低迷で財政再建が容易ではないとの見方が広がったうえ、政治の混乱長期化が懸念されている。安全網である欧州金融安定基金(EFSF)の能力への懸念も強く、米国など域外から迅速な対応を求める声が強まっている。
オランダも上昇
16日はイタリアの10年物国債が欧州中央銀行(ECB)の買い観測を背景に値上がりし、利回りはいったん6%台に低下した。しかし債務不安を背景にした売りが強まると、前日に続いて一時は危険水域の7%台に上昇。フランスとドイツの10年債の利回り格差は1.9%強に拡大し、ユーロ導入後の最大を更新する場面があった。
16日はオーストリアやオランダ、ベルギーの国債利回りも一時上昇(価格は下落)し、ドイツ以外の国債は軒並み売られやすい状況が続く。同日の外国為替市場ではユーロが売られ、東京市場で円は対ユーロで一時1ユーロ=103円41銭と約1カ月ぶりの高値を付けた。
フランスやオーストリア、オランダは信用格付けが最上級で、通常なら財政懸念を背景にした売りは出にくい。しかし債務危機の長期化で欧州全体に景気と財政の不透明感が強まると、財政収支と経常収支の「双子の赤字」を抱えるフランスのような国は、市場参加者の懸念が強まり国債への売りが出やすくなる。
安全網にも不安
欧州首脳による危機対応の包括戦略取りまとめや、ギリシャ・イタリアの新政権発足へ向けた動きが好感され、欧州国債は何度か買い戻された。しかし危機対応の柱となるEFSFには資金力に不安がくすぶり、政治の対応にも懸念が残るため、本格的な買いは入りにくい。
フランス国債の信認低下がEFSFへの懸念に拍車をかける。フランスはドイツと並ぶEFSFの信用力の源で、EFSF債の利回りはフランス国債と連動する形で上昇が続く。信用力の低下したEFSFが十分な資金を用意できなければ、いざというときの対応能力が低下しかねない。
経済通の新首相誕生を好感した国債買いも続かなかった。モンティ新首相の下で財政再建を目指すイタリアでは、前政権で連立与党を構成していた北部同盟が新政権に協力しない方針。ギリシャでは新民主主義党のサマラス党首が、追加的な緊縮策を求められた場合に協力しない方針を表明している。
こうした政治の足並みの乱れについて、欧州域外の不満が強まっている。来日中のカナダのフレアティ財務相は16日、債務危機に関し「(事態が)前進しないのでいらだちを感じている国もある」と述べた。オバマ米大統領も同日、危機への対応について「技術的な問題ではなく、政治的な意志の問題だ」と強調。ガイトナー米財務長官は「可能な限り迅速に行動する必要がある」と指摘している。
ガイトナー、モンティ、フレアティ、サマラス、EFSF、オバマ、ドイツ、ECB、イタリア、利回り
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