長崎県保険医協会は8日、広島・長崎の原爆で放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びた約1万3千人に対する聞き取り調査のデータを、日米共同の研究機関「放射線影響研究所」(放影研、広島市・長崎市)が保管していることが分かったと発表した。黒い雨に関する大量の被爆者データの存在が明らかになるのは初めて。協会はデータを基に人体への影響を分析、公開するよう求める文書を国に提出した。
協会によると、データは、放影研の前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)が、1950年前後から約12万人を対象に聞き取り方式で実施した健康状態などの追跡調査(LSS)の一部。「原爆直後雨に遭ったか」の質問に対し、長崎の約800人を含む約1万3千人が「はい」と回答。被爆距離や市内滞在日数、発熱、下痢、脱毛など被爆後の急性症状についても聞いているという。
協会は9月、ABCCと米国のオークリッジ国立研究所がLSSを基に72年にまとめた報告書を入手。それによると黒い雨を浴びた人に高い確率で急性症状が認められた。放影研に照会したところ、黒い雨に関するデータの存在を認めた上で「報告書の集計結果は(データの数値と)違う」と指摘を受けたという。
放影研は、黒い雨が集中的に降ったとされる長崎市西山地区で住民の内部被ばく調査などを行っているが、LSSを基にした黒い雨の影響分析はしていない。協会の本田孝也副会長(55)は「福島の原発事故で低線量被ばくや内部被ばくに関心が高まる中、放射性降下物が人体に与えた影響を探る貴重なデータ」と訴えている。
=2011/11/09付 西日本新聞朝刊=