放射性物質によって汚れた農地をどのように除染するのが効果的かを福島県内で検証してきた農林水産省は14日、これまでの結果を発表した。表土を削り取る方法が有効と確認できた一方、ヒマワリを植えて放射性セシウムを吸い上げる方法には、ほとんど効果がないことがわかった。
農水省は5月下旬から、東京電力福島第一原発に近い飯舘村と川俣町の6カ所の田畑を使い、除染方法を実証実験してきた。
表土を削る方法のうち、最も効果が大きかったのは、根の浅い牧草ごと約3センチはぎ取る方法。セシウムの減少率は97%と高かった。ふつうに表土を削り取る場合は深さ約4センチで75%の減少。化学物質の固化剤を使って表土を固めてから削ると82%減と、より効果が上がった。
水田に水をはって耕し、排水する方法は36%の減少率。田畑を30〜60センチの深さで掘って表土と入れ替えるのも放射線量を半減させる効果があった。
一方、ヒマワリが土壌から吸い上げる量は土のセシウム濃度の2千分の1にとどまった。農水省は「ほかに吸収量の高い植物の候補もない。現実的には除染には使えない」とした。
これらの結果を踏まえたうえで、農水省は土壌の汚染度合いに応じた除染の考え方を示した。
イネの作付け制限がかかる土1キロあたり5千ベクレル以上の福島県内の農地は推計で8300ヘクタール。実験の結果から、作付け可能な5千ベクレル未満まで下げるには、1万ベクレルを超す田畑では表土を削る方法以外は難しいことがわかった。5千〜1万ベクレルの範囲でもほかの手法を使える場所は限られるという。
仮に8300ヘクタールすべてを削った場合に発生する土は300万トンを超す。同省は「土からセシウムだけを除去する技術開発に取り組み、土をできるだけ戻せるようにしたい」と話している。(井上恵一朗)