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[30410] 【一発ネタ】生徒会役員共!!を性転換してみた
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2011/11/06 02:46
※これは完全に一発ネタです。
 生徒会役員共を全員性転換させてみました。
 作者の別作品「生徒会変態共」とは関係ありません。
 また、違う作品として差別化するためにこちらは4コマ形式のように細かく区切っていません。
 以下の内容が含まれるので、駄目な人はお気を付けください。
 ・性転換
 ・それに伴う一人称の変化
 ・話を合わせるために容姿、名前、状況の変化
 ・15禁程度な下ネタ?
  
 それでも大丈夫な方はどうぞ。







―――――――――――――――――――――――――――――

私立桜才学園。
元は伝統ある男子校だったが、近年の少子化の影響で今年から共学化。
その数男子524人、女子28人。
その学園に今年新しく入学してきた津田タカコ。
彼女が新入生として新しい学園生活を始めるところからこの物語は始まる……








#1





私の名前は津田タカコ、高校一年生。
5月に入り、入学式が終わって一ヶ月目の朝。
私は桜才学園への道を歩いていた。
家を出た時は特に何も思わなかったけど、今はちょっと違和感がある。
電車に乗って、学園前の駅に近づくと周囲の男子の割合が激増したのだ。
最初ほどじゃないけど、いまだにこの光景にはあまり慣れない。
電車の中では朝のラッシュの中、男子生徒たちが必死に私の体に触れないようにしているのがちょっとおかしかった。
最近じゃ痴漢の取り締まりはきついし、間違えられただけでも大変らしいし。
彼等にしてみれば、身の潔白を証明するために必死なのだと思う。
こういう時、女の私は痴漢に間違えられることもないし良かったと思う。
まぁ、狙われる可能性もないこともないかもだけど……

「うーん……」

それにしても、駅を出てからはさらに男子の割合が増えた。
学園前の駅からは徒歩10分ほどだけど、その間に女子二人しか見ていない。
それ以外はものの見事に男子ばかりだ。
皆、私みたいに女子生徒が珍しいのか、通り過ぎる時にこちらをちらちらと見ている。
嫌ってわけでもないけど、あまり見られるのは得意ってほどでもないし。
交通の便が良かったからあまり考えずに受験しちゃったけど、はやまったかしら?
だって男子ばっかりだし、ちょっと肩身が狭そう。
いくら男子校だったっていっても共学化するんだからもう少し女子がいるものと思ったんだけどなぁ……
この学園なら、家を出るのは8時前で十分間に合う。
朝の睡眠時間が他の学校よりも長くとれるという理由から選んだんだけど。
やっぱりもう少し考えた方が良かったかも。

「こら!! そこの女子生徒!!」

「?」

校門をくぐると、急に大声で呼び止められた。
周囲を見渡しても男子生徒ばかり、女子はこの場に私しかいない。
必然的に呼び止められたのは私なんだろう。
声の主の方を見ると、私を指さして腰に手を当てている男子生徒がいた。
きりっとした眉が凛々しい印象を与える。
制服をきっちりと着こなしていて、ぴんと背筋をのばしている姿は凛とした印象を受けた。
真面目そうで、まさに大人の思い描く理想の青年像といった感じ。
しかも顔も整っているからちょっと気圧される。
彼は私のほうに近づくと、じろじろと私の体を上から下まで見た。
セクハラかとも思ったけどその表情は至極まじめそのもの。
よく見れば、彼の左腕には生徒会と書かれた腕章がついていた。

「君は新入生だな」

「はい」

「制服の着かたがだらしないぞ。ちゃんとタイをつけろ」

どうやら朝の服装チェックをしていたらしい。
あー、入学早々面倒な感じの人に捕まったわね。


「まったく近頃の生徒はラフなスタイルが格好いいと思っているから困る。
 その点、私はきっちりと固くしめているぞ」

「はぁ」

「やはり男はきっちりと固くなくてはな!」

「はぁ―――は?」

「女子とて同じことだ。
 君も締まりの悪い女とは思われたくはないだろう?」

「意味がわかりません」

何?
セクハラなの?
こんな朝っぱらから見ず知らずの人間にセクハラするのが元男子校のノリなの?

「む? そうか……とにかく制服の着崩しは校則違反だ」

「はぁ」

「どれ、私が直してやろう」

彼が私の襟元に手を伸ばす。
いきなりなことで、私は抵抗するタイミングを逃してしまった。
流れるような動作で男子の手が私に制服のタイを綺麗につけなおす。
知らない人に制服を触られるのに抵抗はあったけど、目の前に整った男の顔が来れば動揺もするものだと思う。
私は別に男性恐怖症ってわけじゃないし、中学でも男子の友達はいたけど……
ここまで綺麗な顔した男の人って今まで周りにいなかったからなぁ。

「よし、これでいいだろう。以後、気をつけるようにな」

いつのまにか制服を直すのが終わっていて、その言葉に私は正気に戻った。
ちょっとこの男子生徒から距離を開ける。
うぅ、ちょっと恥ずかしい。
中学の時の男子の友達は、少なくともこんなになれなれしく触れてきたりはしなかったんだけど。
私が恥ずかしいと思っているのに、向こうは平然としているのが少し気に食わなかった。

「こうして一人一人がきちんと身なりを整えれば、気持ち良く授業が受けられるというものだ。」

満足げに語るその人に、私は少し意趣返しがしたくなった。
本当に、別に歯向かうつもりじゃなくて、ちょっとくやしかっただけなんだけど。

「でもこのての検査って、ひっかっかっても教室に戻ればもとにもどしちゃうんですよね」

「ほほう?……では念入りにきつく結んでやろうか」

「う、嘘です!! 大丈夫です!!」

私の言葉にわきわきと両手の指を動かしてせまる男子。
あきらかにその指の動きは制服の乱れを直す動きじゃない。
なんというかこう……逆に乱れを作るような卑猥な動きだ。
ドン引きして慌てて訂正する私。
それに満足したのか、男子生徒は卑猥な動きをする指を向けるのを止めてくれた。
だけど、変わりに私を非難してくる別の声が。

「俺たち、生徒会の活動は行動することに意義がある。
 “やっても無駄”というのは理想に向かって行動出来ない怠け者の逃げ道」

背後から現れたのは、綺麗な金髪をした小さな男の子。
身長的に私の胸くらいまでだから小学生だと思うんだけど、何故か学園の制服を着ている。
その子は下から私を見上げるようにして、こちらを睨んでいた。

「はっきり言って、お前みたいな小さい人間嫌いなんだよ!!」

「……」

いきなり初対面の人間に向かって、小さいとか嫌いとか……何、このこ?
ちょっと生意気だとは思うけど、子供のいう事だからそこまで腹はたたない。
まぁ、男の子ってそういうものなのかもしれないけど。
小学生の頃の男子たちってやんちゃな口のきき方するしね。
あれ、でもなんで小学生がここに?
しかもこの子も生徒会の腕章をつけている。

「あの……このお子さんは?」

私は隣にいる先ほどの生徒に聞いてみた。
だけど、その言葉がこの子供の怒りのスイッチに触れたみたい。

「貴様ー!! 言ってはならないことを言ったなー!?
 俺を怒らせるとどうなるか思い知らせてやる!!」

怒ってます!……と訴えるかのように目を吊り上げて地団駄を踏む男の子。
これが漫画ならぷんぷんという擬音が背後に出ていることだろう。
あっ、そういえば子供って自分が子供扱いされると嫌がったりするのよね。

「うりゃ―――――!!」

男の子が私に向かって蹴りを入れようとする。
でもいかんせん、距離が微妙に離れていたことでその蹴りは私の体に届かない。
届かなかったんだけど……つま先が私のスカートのすそを捉えた。
ふわりと巻き上がるスカート。

「……」

「ほう、純白か。やはり女子高生の下着は白に限るな」

「……ど、どうだ参ったか!?」

ばっちりと見えていたのか、最初に声をかけてきた男子生徒がうんうんと頷いている。
男の子は自分がしたことにちょっと赤面しつつも、どうだと胸を張っている。
……ていうか、さすがに高校生になってまでスカートめくりをされるとは思ってもみなかったんだけど。

「……エロガキ」

「な!? 俺はエロくない!! ガキでもない!!」

「高校生にもなってスカートめくりされるとは思ってなかったんだけど」

「ぐっ!……わざとじゃない!!」

「自分から足でめくっといてわざとじゃない?」

「うぅ~~~」

「なんで小学生が高校にいるのよ」

こちらを真っ赤になって恨めしそうに見上げる男の子。
でも別に小学生に睨まれても怖くないのよね。

「ぬぐぐ……俺はこれでも16歳だ!小学生じゃない!!」

「ええ!?」

私と同じ年にはどう見ても見えない。
金髪も染めている感じはしないし、ハーフっぽい顔つきだけど。
純粋な日本人顔じゃないにしても幼く見える。
そもそも身長があきらかに150ないわよね……むしろ140あるのかしら?

「いいかぁ!俺はIQ180の帰国子女だぞ!英語ペラペラの10桁の暗算なんて朝飯前!!
 その才能を買われ現在生徒会の会計を務める!!
 どうだ!? これでも俺を子供扱いするか!?」

「しかし夜の9時には眠くなる」

「子供じゃない」

「ちくしょ――――!!」

私に食ってかかろうとする子供を、先ほどの男子生徒が羽交い絞めにして止めてくれている。
なんというか、その様は保護者に喧嘩を止められている小学生そのもので、逆に微笑ましかった。
私もうそろそろ行ってもいいかなぁ?

「こらこら二人とも」

そんなことを考えていると、また別の人が出てきた。
二度あることは三度あるというけれど、この人も同じように生徒会の腕章をつけてる。

「新入生を困らせちゃ駄目だぞ」

そう言って二人に注意してくれる男子。
三人の中では一番身長が高い。
茶色がかった、若干パーマのかかった髪型をしている。
柔和な笑みを浮かべていて、そのふんわりとした雰囲気の美形の人。
なんていうか、おとぎ話の王子様的な紳士オーラを出している。
先の二人と違って常識的な感じがするわね。
そのせいもあってか、ちょっと胸がどきどきする。
私だって一応女の子だし、こういういかにも王子様的な人を夢見ていたころもある。
実際に目にすれば、そりゃあ恋までいかなくてもどきどきくらいはするものよね。
彼は二人に注意すると、私に向きなおって花の咲くような微笑を浮かべた。

「すまないね、足止めしちゃって」

「いえ助かりました。わざわざ助けにきていただいて……」

「いや、別に助けたわけじゃないよ。
 面白かったからさっきまでずっと陰で見させてもらっていたよ」

「うわー、助からねー」

結局この人も似た者か。
まともそうに見えたけど実際はそうじゃなかったみたい。
さっきまでの胸の高鳴りが嘘のように引いていく。
知らず、私の頬が引きつるのを感じた。

「つかぬことを伺うけど、君はなんでうちの学園に入ったんだい?」

「え、まぁ……近かったからで」

正直、判断を誤った感がひしひしとするけど。

「そうなのか。共学化が決定した際に女子生徒は逆ハーレム目当てで入学してくると聞いたものだから」

「いや、ありえないでしょう」

いくらなんでもそんな理由で学校選びするなんて……想像つかない。
これが逆のパターンで、元女子高に男子がって話ならわかる気もするけど。
逆ハーレムはないわね。さすがにない。

「そうか、君は違うんだね」

「ええ、違いますよ」

「まぁ、仮に逆ハーレムが目的であっても無駄なことなのだけれどね。
 うちの男子たちはみんな男にしか興味がないからねぇ」

「???」

「そんな目で見るな。私はいたってノーマルだ。
 彼は重いジョークが好きなだけで男色家はこの学園にはいない……はずだ」

いいきったりしないのね。
まぁ個人の嗜好なんてわからないけれど、なんか後味悪いわね。
朝からこんな重いジョーク聞かされるとか、今日はなんなのか。
正直、王子キャラの背後に背負う薔薇の意味が別のものに思えてしまったじゃない。
……ちょっとしばらくは少女マンガを読むのはひかえようかな。

「ん?」

そうこうしていると気がつけば登校時間が過ぎていて始業ベルが鳴りだした。
私のいる場所は校門の前。
今から走ったところで、朝のHRには間に合わない。
せっかく今日はちゃんと早く起きれたのに!

「ちょっとー!! こんなとこでぐだぐだやってたから私遅刻じゃないですか!」

「あらら」

「そうか、それはすまなかったな。
 お詫びに君を生徒会に入れてやろう。光栄に思え」

「え?」

意味がわからない。
なんでに遅刻したことに対する抗議をしていたら、その謝罪で生徒会に入ることになるの?
そこは生徒会から先生に言って今回の遅刻免除とか、そんなのじゃないの?

「な、何故?」

「君も知っての通りこの学園は今年から共学となった。
 しかしそうなるとこの学園生活も今までと勝手が違ってくる。
 できれば女の立場から意見を言える人間がいると助かるんだ」

「一理ありますけど……私には荷が重すぎます」

確かに共学化の上で、女の立場の意見も必要なのはわかる。
でもそんなの私じゃなくても、他にも何人か女子は入学したわけだし。
私よりももっと仕事できる子もいるんじゃないかしら。

「軟弱なことを言うな。君も月一で重い日があるんだろう?
 それを乗り越えている君にできないはずはない」

「あんたには関係ないだろ」

セクハラか?
これはあきらかにアウトよね?
そろそろ訴えてもいいわよね?
私がどうやって文句をつけようかと考えていると、金髪の子供が少し慌てた様子を見せた。

「か、会長……こいつを入れるって本気ですか?」

「ん? 不満か?」

あ、この人会長なんだ。
確かにこの凛とした人が三人の中で一番偉そうだけど。

「いえ、おっしゃることは解りますが……
 由緒あるこの生徒会にいきなり女を入れるのはちょっと抵抗が……」

むしろこっちが抵抗あるんだけどね。
男ばかりの生徒会室って、なんか汗臭そうだし。

「大丈夫だよ、ほらこの子真面目そうだし。
 君も安心していいよ、うちの生徒会室は綺麗にしてるからね。
 役員もみんな綺麗好きだからそこまで汗臭くもないはずだよ」

「はぁ、そうですか」

別にそういうフォローが欲しいわけじゃないだけど。

「まぁ、イカ臭くはあるかもしれないけど」

「……え?」

「うむ。大丈夫だな」

「いや、全然大丈夫に思えないんですけど……イカって何!?
 今の会話のどこに大丈夫だと思えたの!?」

「まぁそう慌てるな。入ってくれれば私個人としても嬉しいんだ」

そういって、頬をそめて少し恥ずかしそうにはにかむ会長。
それはまるで恋の告白をするかのような気恥ずかしい空気を醸し出していた。

「君自身にも興味があるから」

「え……」

私は、不覚にもまたどきりと胸が小さく音を立てた気がした。
でもそれはやっぱり間違いで……

「保健体育の授業じゃ限界があるんだ」

「ちょっ!? どこ凝視してるんですか!?」

会長さんは私の股間の位置を凝視していた。
思わず身の危険を感じて胸と股間を庇うように腕で隠す。
だけど私の戸惑いやら何やらはすべて無視して話を進めてしまう生徒会の人たち。

「とゆーわけで、私が2年で生徒会長を務める天草シノだ」

「同じく2年の書記、七条アリマ。よろしくね」

「あんたと同じ1年の会計、萩村スズリだ」

勝手に私が同意したこと前提で自己紹介を始める人たち。
まだ私OKするなんて一言も言ってないんだけど。

「そして君には私が元いた副会長の席をやろう。
 私の右手として頑張ってくれ」

「右腕では?」

「おやおや右手じゃある意味恋人じゃないか。
 いったい彼女に何をさせる気だい?」

「1年なのに副会長なの!?
 ていうかもう決まっちゃったの!?」

そのままずるずると放課後も連行されて生徒会室に連れていかれてしまった。
次の日、学園の掲示板には朝一番に私の生徒会入りが張り出されてた。



こうして、私津田タカコは生徒会に強制的に入ることになったのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
人物まとめ

天草シノ
・桜才学園生徒会長
・文武両道
・外見は理想的な凛とした日本男児
・だが会長は思春期
・耳が苦手(エロい意味で)
・PCが苦手
・高いところが苦手


津田タカコ
・桜才学園生徒会副会長
・ツッコミ役
・まわりの人々に振り回される日々
・生徒会の主に先輩によるセクハラに頭を悩ませている
・弟がぶっとんでいる
・ライトM体質


七条アリマ
・桜才学園生徒会書記
・いいとこのお坊ちゃま
・茶道、華道、書道、日本舞踊など様々な習い事をしている
・リアル執事がいる
・秀才
・見た目は白馬に乗ってる王子様的なキャラ
・でも中身は生徒会一の変態
・天然


萩村スズリ
・桜才学園生徒会会計
・IQ180の帰国子女
・5か国語ぺらぺら
・見下ろせるような高いところが好き
・怖いの嫌い
・見た目は子供
・中身も子供
・父親がぶっ飛んでいる
・よく見キレる



[30410] #2
Name: 真田蟲◆324c5c3d ID:fc160ac0
Date: 2011/11/12 00:38


私立桜才学園。
元は伝統ある男子校だったが、近年の少子化の影響で今年から共学化。
その数男子524人、女子28人。
その学園に今年新しく入学してきた津田タカコ。
この物語は、彼女と生徒会の役員達を中心に繰り広げるラブコメ……なのかもしれない。










#2











生徒会入りしてから三日後の放課後。
私は生徒会室に向かって廊下を走っていた。
あまり褒められた行為じゃないけど、背に腹は代えられないわよね。
ただでさえ会議に無断で欠席するとどんなセクハラを受けるかわからないし。
道に迷ったせいで、会議の始まる時間に遅れてしまっている。
そもそも生徒会室なんて、入学して今まで一番縁の無かった場所の一つだし。
まだ行くようになってから日も浅いし、道順がうろ覚えなのよね。

「すみません! 遅れました!!」

生徒会室の前にたどり着くと、慌てて扉をあけた。

「遅い! 今日は大事な会議だと言っただろうが!!」

他のメンバーはみんなすでに集まっていて、会長が腕を組んで怒っていた。
彼からすれば注意している程度の怒り方なんだろうけど、結構怖い。
会長の眉毛って細いけどきりっとしてるから意志の強い印象を受けるからね。
だから睨まれると威圧感が強いのよ。
まぁ……それ以上に怒らせたらどんなことされるかわからないから怖いって方が理由としては強いかもだけど。
私はとりあえず、困ったような表情をしつつ言い訳してみる。

「いや、道に迷っちゃって……」

暗に早く来るつもりではあったんですよー、と訴えてみる。
たぶん上手く誤魔化せないんだろうな、と考えてたんだけど、今日はなんだか上手くいったみたい。
別に誤魔化すって言ったって嘘じゃないからかしら。

「そうか、津田は入学してまだ日が浅いか……よし!!」

何か思案顔をするものの、私への怒りは納めてくれたらしい。
ちょっとほっとする。
だけど、そのすぐ後に何かいいことを思いついたとでもいうかのようにいい顔をする会長。
私としては、この二日間で彼がこういう顔をするときは精神的に疲れる可能性が高いことを覚えてた。
だからちょっと不安になる。

「今日はこの私が桜才学園を案内してやろう!」

「……大事な会議は?」

確か重要な会議って、会長自身が言っていたはずじゃ……
でも私の戸惑いも、会長は堂々と切って見せる。

「そんなものいつでもできるだろう!!」

「……」

その通りではあるんだけど、案内なんてもっといつでもできることだと思うのよね。
むしろ優先順位的には会議の方が上なんじゃ?
私の疑問をよそに、意気揚々と部屋を出ていく会長と七条先輩。
萩村はなんだか諦めを感じらせる溜息をつくと先輩たちのあとを追った。

「えっと……」

一人生徒会室に取り残された私。
机には今日議論されるはずだった議題に関するプリントが並んでいる。
しかしもはやそこに着席している人間は誰もいない。
一瞬逡巡したものの、この場にいてもどうしようもないので私も彼等の跡を追った。
なんだか楽しげに笑いながら先頭を歩く会長と七条先輩。
その跡を萩村が歩いて、私もその数歩後ろを歩いた。


授業は終わったものの、そんなに時間が経過していないからまだまだ校舎内も生徒が多い。
これから部活動に励む生徒。
帰宅して自由気ままに遊んだりする計画を立てている生徒。
色々な生徒がいる。
そんな人がいる廊下を歩く私達は、結構な注目の的だったみたい。
じろじろと通りすがる人の視線を感じるのよ。

「よし、最初はここだ!」

「保健室……ですか」

最初に案内されたのは保健室だった。
まぁ、確かに学年や性別問わずお世話になる可能性の高い場所よね。
位置的には職員室や多目的室なんかの集まっている中央校舎の二階にあたる。

「怪我や病気の時は、遠慮なく利用するがいい」

「校医の山口先生は優しいと評判だからね。
 本人も女子高生は大好きだと言っていたから、安心していいと思うよ?」

「……ちなみにその山口先生は?」

「ふむ、今は所用で席を外されているみたいだな。
 こう口髭の生えた熊のようだがおおらかな人だぞ?」

会長がジェスチャーで口髭や体型を教えてくれた。
その動作に、熊のような人が「女子高生大好きー」と言っている構図を想像してしまった。
……全然安心できないんだけど。

「なるべく怪我や病気にならないようにします」

「賢明な判断だな」

「そうだね、健康が一番だからね」

「勿論だ。生徒会役員たるもの、自身の健康管理もしっかりとしないとな」

「……」

萩村以外の男子二人は、私の決意を違った方向に解釈したみたいだった。


次に案内されたのは、なぜか男子更衣室だった。
……なんで?

「ここが男子更衣室だ」

「体育の前後で僕たちが着替えをするところだね」

「ふふ、毎日男たちの汗にまみれた裸体が列をなす場所だな」

「女の子たちからしたら、どう見えるんだろうね」

「さぞや興味深いのだろうな」

「僕たちも女の子の体には興味深々だもんね」

「「……」」

先輩二人は更衣室の前で盛り上がっていた。


その次が、なぜか他の教科に関する部屋でも何でもない、ただの教室だった。
中の見た目は私達の使っている教室と変わらないと思う。
ただ、どうも使用されている形跡はなかった。

「ここは今は使われていない無人の教室だ」

「少子化で共学化になったけど、それでも昔よりは生徒数が少ないからね」

「クラス数が減って、このように特に使われない教室があるわけですね」

「そうだ。だからここはいろいろなことに使える教室というわけだ」

「机を並べれば簡易ベッドだね」

「教室でおにゃんにゃんという学生にとって夢のシチュエーションも可能だな」

「少なくとも私にはそんな夢は無い」



そして次に案内されたのは、体育倉庫だった。
なんで? ねぇなんで?
体育館飛ばしてなんで体育倉庫?

「汗臭いマットに跳び箱、ハードルなどいろいろなな道具があるぞ!」

「プレイな幅が広がるね!」

楽しそうに盛り上がる先輩たち。
だけど、私があまる嬉しそうにしていないことにようやく気がついたみたい。
まぁ私に案内するとかいって、一つもためになりそうな場所案内してないものね。
呆れて当然というか……保健室は必要な場所だけど。

「女子が聞いてドキッとするだろう場所を優先して紹介してるんだが、不満か?」

「うん。会長はもう少し女の子のことを勉強したほうがいいです」

それでドキッとする女子は一部の特殊な女子です。
もっと普通の場所を案内してください。
むしろ、校内案内にまで下ネタを入れられてはドン引きするわよね普通。

「そうか、もっと女子のことを勉強か……」

「僕ももっと女体の研究をつづけるよ」

「そっちの意味じゃない!!」

何故か頬を染めて私の体を凝視する会長と七条先輩に、本気でひく私だった。
その後、とりあえず普通の場所ということで私がそれぞれの学年の階の案内をお願いした。
このままだと余計下ネタ発言が続きそうだったし……
本当、この人達のセクハラはわざとなのか天然なのか。
おそらく後者であると予想できるから手に負えない。

「ここが僕とシノ君が在籍しているクラスだよ」

「そうなんですか」

私達は今、二年生の教室の集まる階に来ていた。
桜才学園は三つの校舎が渡り廊下でつながっていて、中央をはさんで北と南の校舎がある。
私達生徒の在籍する教室があるのは、この南校舎。
生徒会室もこの校舎で、一年生から順に一階から三階まである。
今は二階の2-Bの教室の前。
先ほどの七条先輩の発言の通り、ここには会長と先輩が在籍しているみたい。
共学化は今年からだから、まだこの階には女子はいない。
そのせいか、余計に私の姿が物珍しいのか、無遠慮なほどのじろじろと見られていて気恥ずかしい。
生徒会室は同じ階とはいっても、階段をはさんでる上にフロアの端っこだからあまり気にならないんだけど。

「何か困ったことがあったら気軽に訪ねてくるといいよ」

「はい」

優しく紳士的な微笑を浮かべて、私にそう言ってくれる七条先輩。
この姿だけならなぁ、本当に漫画に出てくる優しい王子様みたいなんだけど。
まぁ、実際先輩は優しい人ではあるんだけど。

「でもこうして考えると少子化が悪いということもないね」

「へ?」

王子様みたいなんだけど、時折こうやって意味不明な話題を振ってくることがある。
時折……じゃないや、けっこう頻繁かな。
そしてこういう意味不明にいきなりふってくる話題の大半は下ネタなのよね。

「3年生になってP組まであったら大変なことになるからね」

「イメージカラーはピンクだな!!」

この二人、これがなければ美男子なのになぁ。
口を開かなければいい男って言葉がここまでしっくり来る人間も珍しいわよね。
先輩たちを見て、私同様溜息をつく隣の萩村。
最初のこいつの印象は最悪だったんだけど、今じゃ生徒会の中じゃ一番一緒にいてて疲れないわね。
見た目お子様だし、妙にプライドが高いんだけど常識があるからかしら。
少なくとも、こいつは自分から下ネタ言ったりしてこないし。
セクハラも初対面時のスカートめくりだけだったからね。
まぁ、萩村も変といえば変なんだけど、先輩二人の変人度が高すぎてまともに見えるわ。


「ここは男子専用トイレだ」

ぼーっとして先輩たちの話を聞き流していたら、いつのまにか二階の男子トイレの前に来ていた。
……なぜ男子トイレを女子である私に紹介するのだろうか?

「まだ二階には女子トイレがないから、完成するまでは女子は一階の新しい女子トイレか、
 もしくは教職員用トイレを使うようにな」

「ああ、そういえば入学したときも先生からそういう説明はありましたね」

なんでも、共学化に踏み切ったはいいけど、まだまだそれに関する施設が完全には整っていないとか。
更衣室に関しては、今は使われていない教室をあてがえばいいだけだけど、トイレとなるとそうもいかない。
水道から排水管まで、新しく新設しなければいけないせいで手間取っているらしい。
今現在、新入生である女子生徒のためのトイレは未だ一階にしかないのよね。
今後、他の階のトイレに関しては夏休みや冬休みなんかの長期休暇の間に設置するって言ってたわ。

「男子トイレは個室が少ないからな。女子が使用するのはあまりお勧めしない。
 女子はナ○キンを装着したりするだろう?
 個室がないと不便だろうが、安心しろ。教職員用には女子トイレもあるからな」

個室の数もしっかりあるはずだ、とどうでもいいアドバイスをくれる会長。
そんないい笑顔で言われてもどう反応していいやら。
そもそも、何故男子トイレを女子である私が使うかもしれないこと前提で話しているの?

「そもそも津田は女子だから男子トイレは使わないはずです」

「そうだよシノ君」

おお、ここで萩村が会長にツッコミを入れてくれた。
七条先輩もさすがに今の話は違和感を感じたのか、萩村に同意してくれている。

「君はナプ○ン前提で話を進めているけど、津田さんがタンポ○派だったらどうするんだい?」

「すまない。私の嗜好を基準に考えてしまった」

……同意してくれているように見えた七条先輩は、わけのわからないことを言っていた。
私がナプキ○かタン○ンかどっちを使っていても関係ねえだろ
どっちにしたって男子トイレは使わねえよ。
会長もそんなにすまなそうな顔して真面目に謝らないでくださいよ。
むしろ、男の人に生理用品に関する嗜好があることがなんか嫌よね。

「毎日続くの、この感じ」

「俺はもう慣れたぞ」

「慣れても駄目だと思うけど」

「……」




最後に屋上を案内してくれると聞いて、内心ちょっと楽しみ。
なんていうか、屋上って学園ドラマなんかによく出てくる場所よね。
これぞ青春の一コマって感じにさせる気がしない?
今まで通り、会長を先頭にして階段に向かう。
その途中、すれ違った男子生徒が頭をさげて会長に挨拶してきた。

「あ、会長お疲れ様です」

「うむ」

凄く自然な感じであいさつされているのを見て、やっぱり変な人でも立派に会長なんだとちょっと感心しちゃった。
なんていうか、凄く一般生徒たちに慕われている感じがする。
お飾りじゃなくて、ちゃんと皆に認められて生徒会にいる人なんだなぁと。
いや、さっきまでの言動からは全くそう見えないけど。

「挨拶されるなんてさすが会長ですね」

「まぁ、慕われなければ人の上に立つことなどできんからな。
 君も副会長として人に尊敬されるように頑張れ」

「いやぁ、私はそういうの苦手で……」

正直、自分が立派な人間だとは思ってないしね。
基本面倒くさがりでぐーたらな人間だし、私。
無理やりとはいえ、こうやった生徒会にいるだけでも驚きなのに、尊敬されるような人間になるなんて……
ちょっと想像できない。

「蔑まれたほうがいいのか?」

「Mなんだね!」

「二人とも発想が極端すぎます。
 あと妙に嬉しそうな顔はしないでください」

特に七条先輩。
出会ってから今までで、なんで一番輝かしい笑顔なんですか?
先輩二人の妙に嬉しそうな視線を感じつつ、屋上に到着。
この学園は生徒にも屋上を開放しているのか、鍵はかかっていなかった。

「ここが屋上だ」

「わぁ!!」

さすが私立の高校なだけはある、って感じかしら。
普通屋上って、あまり綺麗にされているイメージはないんだけど、ここはとてもきれいにされていた。
足元は人工芝がしかれていて、掃除も行き届いているのか汚らしい感じはしない。
広々としていて、周囲には転落防止の背の高いフェンスが囲っている。
どの方角にも、視界をさえぎるような建物がないため学園の周りを一望できた。
もう夕方でそろそろ日も沈みかけているのか、きれいな夕日が見えた。
思わず感嘆の声をあげる私。
私の思い描いていた屋上よりも、そこはずっと素敵な場所だった。
今日はさんざん変なところ案内されて、セクハラ発言ばかりだったけど、もうどうでもよかった。
そう思えるくらい。それくらい、気持ちのいい場所。
フェンスに近寄って下を見れば、グラウンドで野球部が整地をしていた。
がしゃり、と音がして隣を見る。

「俺、高いところが好きなんだ」

「へぇ」

いつのまにか私の隣に来ていたのは萩村だった。
フェンスに指を絡ませて、グラウンドの野球部を眺めている。
そうよねぇ。中途半端に高いところだとちょっと怖いけど。
こういう建物の屋上見たいにものすごく高いところだと、むしろ楽しいもんね。

「人を見下ろせるから」

「……」

「笑えばいいだろ」

「いや……」

何といえばいいか言葉につまって視界を横に移動させた。
だって、何言ったってタブーに触れる感じじゃないの。
移動させた視線の先では、七条先輩が背中に花いっぱいといった感じのいい笑顔を浮かべていた。
ただし、股間をフェンスに食い込ませて、弱冠ハァハァしながら。

「……」

全力で見ないことにした。
反対の方向に視線を移動させたところで、あることに気付く。
屋上に会長の姿がいない。
ここまで案内してくれていた時は、確かにいたのにどこ行ったんだろう?
不思議に思って、屋上をぐるりと見渡す。
すると会長は、何故か未だに扉の内側にいてこちらにこようともしていなかった。

「あれ、会長はこないんですか?」

「いや、私はいい」

「……ひょっとし高いところ苦手ですか?」

「なっ、そんなワケないだろう!?」

「でも足が震えていますけど」

そう、会長は屋上に出ないで扉の内側から、足を震わせてこっちを見ていた。
恐いのかと聞いても、否定はするんだけどその声も少し震えている感じがする。
情けないと思いつつも、完璧超人みたいな会長にもこういうなんてことはない弱点もあるんだなぁと思った。
ちょっと彼に親近感を覚える。

「こ、これはっ!!
 ただ単に漏れそうになるのを我慢しているだけさ!!」

「我慢しないでください」

「なっ!? 君の前で漏らしてみせろというのか!?」

「おやおやシノ君に津田さん、放尿プレイかい?」

「いいから、早くトイレ行けよ」





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