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2011年11月13日(日)付

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政治を鍛える 政党・国会―候補者は予備選で決めよう

 選挙制度が変わり、形の上では2大政党が誕生している。

 だが、民主、自民両党とも政策的にはばらばらだ。

 いまも環太平洋経済連携協定(TPP)や、消費増税をめぐって賛否両論が渦巻く。「小沢VS.反小沢」なんて対立もある。

 同じ政党に所属するとは思えないほどの隔たりに、有権者は驚き、あきれている。

 私たちは、衆院に小選挙区比例代表並立制を導入した90年代の政治改革に続く、「次なる政治改革」を求める。その第一歩として、政党のあり方、とりわけ2大政党の改革を訴える。

 政党の混迷が象徴する政治のていたらくを打破するには、選挙制度の改善も欠かせない。だが、その問題は次回に論ずるので、今回の提言は基本的に現行制度を前提にしている。

 政党は国政選挙で、政策を示し、候補者を立て、首相候補たる党首とパッケージで有権者の判断を仰ぐ。だから、この3点を改革の起点にする。

■比例候補は男女半々

 まず政策では、マニフェストのつくり方を抜本的に改める。民主党のように選挙前に票めあての甘言を並べてもだめだ。

 党員らが公開討論を半年、1年と重ねて、最後は党大会で決めるのだ。丁寧な手順も踏まずに、有権者に痛みを伴う選択を迫れるはずがない。

 つぎに候補者選びである。私たちは予備選を実施すべきだと考える。世襲や関連団体だけでなく、広く人材を募るためだ。

 自民党はいま、衆院300小選挙区のうち82を候補者公募の対象にしている。現職が不在の選挙区で、選考は党の地方幹部がする例が多い。予備選でもっと党員、党友の意見を聞いたらどうか。

 予備選は再選をめざす現職にも義務づけ、時間はかけても金はかけない党営選挙に徹する。

 思い切って、一般有権者に投票権を与えてもいい。そうすれば、各党ひとりの候補者で争う小選挙区で、党は選べても人を選べない現状への不満も少しは和らげられる。手間はかかるが、政治に届きにくい声をすくいあげ、政党が地域に根を張る効果があるはずだ。

 落選者の処遇も大事だ。党費で生活を支援し、再起を期せる仕組みをしっかりつくれば、落選を恐れて有権者におもねる政治家も減っていくだろう。

 比例区の候補者選びも大胆に変えよう。男女半々とか、世代や職業別に一定数を割り当てる制度を試すべきだ。それが民意に近い国会をつくる道だ。衆院の重複立候補制をなくすことでもある。

■党首の任期を見直す

 政策づくりも候補者選びも、支援者、有権者を巻き込み、じっくり時間をかける。こうした作業が党内民主主義を熟成、深化させ、政策の軸がぶれない政党をつくっていく。

 この大前提として、ひとたび総選挙で民意が示されれば、基本的には4年の任期を全うする慣行の確立が求められる。

 3点めの党首選びでは、半年くらいかけて、識見、政策を多角的に検証することだ。国会議員を中心に約2週間で決めるような拙速は、もうやめよう。

 来秋には、2大政党ともトップの任期が切れる。両党が来春から同時に新党首選びの政策論争を始めたら、新しい政治の光景が広がるに違いない。

 党首の任期と総選挙のサイクルを一致させることも大切だ。小泉元首相のように、総選挙に圧勝しながら党総裁の任期切れで退陣したのでは、政権選択選挙の意義が損なわれる。

 政権に就いたら、党首の任期は凍結し、次の総選挙の直前に選び直すことにすべきだ。

 

■衆院「尊重」の慣行を

 こうした改革案は法律で義務づけるのではなく、政党がみずからの判断で導入するものだ。有権者の支持を求めて、政党が改革を競い合うのが理想的だ。

 政治の機能を回復させる即効薬もある。「衆参ねじれ」の壁を低くするのだ。

 具体的には「強すぎる参院」の権能を抑えるため、与野党で衆院の優越を拡大する紳士協定を結べばよい。

 憲法が定める首相指名、予算と条約の承認に加えて、たとえば、予算関連法案と国会同意人事も衆院の議決を尊重するだけで大きな前進だ。赤字国債発行法案や日銀総裁人事を人質にとった政権攻撃はできなくなる。

 もうひとつは、衆参の議決が異なったときに調整する両院協議会を、成案をつくれる組織に衣替えすることだ。

 現在は衆参各10人で、出席者の3分の2以上の賛成で調整案をつくるが、衆院は全員与党、参院は全員野党なので、意見が折り合わない。それを両院とも各会派の勢力に応じて委員を出し、過半数で決めるようにすれば、合意を得やすくなる。

 その気になれば、すぐにできることだ。

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