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[30480] 【習作】幻想郷フハフハン録 
Name: アイン◆0e9995b0 ID:7ecd3aa9
Date: 2011/11/12 02:38
萃めて萃めて萃めて 疎(はな)す


青天の頃、淡い木漏れ日、絶好の散策日和
そして二本角のかわいい私

今日はどこに行こうか
巫女は昨日おちょくった、白黒も右に同じ
隙間の狸は気がおけないし、冥界は遠い
総じて行く気が起きない
ぶっちゃけてしまうならメンドクサイ

このまま酒でもかっくらっているかと思っていたところで
里の中で妙な物を見つけた

その少女はそれを嬉しそうに片手で持ち
太陽に掲げて反射を楽しんでいた。

ありゃ鉱石じゃないか。
地下でも見たことはあるがあんなに綺麗な形の物は初めて見た。
綺麗な楕円系の緑色の宝石,ああゆうのを玉というのだろう。
あれ一つ売るだけで一財産稼げるんじゃなかろうか。

何でそんなものをあんな年端もいかない少女が持っているのだろう。
家から持ち出してきてしまったのだろうか。
人間の女は光物が好きだというがまさかあんな小さな少女の頃からそうだとは・・・
私は目の前の少女の末恐ろしさに戦慄していた。

まぁ自分ももし酒代に金かかるのならと考えると恐ろしくて堪らないのは置いておく。

少女は石に顔を近付けるとおもむろに―――

「ちょぉぉぉぉおおおおおおい!!!」

危なかった、体を実体に戻し鉱石を口に入れそうになる手を掴んで止めた。
少女にとっては突然私が現れたように見えただろう。
ビクッと体を震わせこっちを見ていた。

「お譲ちゃん、こんなもの食べちゃいけないよ」

手を離し、目尻に微かに滲んでいた少女の涙を拭う
未だ何を言われているのか分かっていないのだろう、少女は首をかしげながら頭にいくつもの疑問符を浮かべていた。
私は嘆息しながらもう一度忠告することにした。

「お譲ちゃん、鉱石は食べ物じゃない」

依然黙ったままの少女、これは鉱石の説明からしなければいけないのか?
段々面倒くさくなって来た私に少女は口を開いた。

「これ、ド、ロップ」

あまり喋るのが得意ではないのだろう、結構人見知りする子どもだと見た。
そしてドロップ?ドロップとはなんぞや?
今までに聞いたことのない単語。

「ドロップ?」

思わず口にしてしまった私に、コクコクと頷くと少女はその石を私に差し出してきた。
思わず受け取ってしまう、手のひらに乗ったそれはキラキラと輝いていて―――

「甘い?」

微かに甘い匂いが鼻をついた餡子や団子のような匂いではない。
もっと爽やかな・・・

「なんかメロンみたいな匂いだね?」

そう果物のような香りである。
少女はまた頷くとカラカラと金属のぶつかる音をさせながら小さな缶を取り出した。
その缶を見せてくる少女、なんか可愛い。

「メロ、ン、あじ。」

缶を受け取ると教えてくれた。
その缶には上に封がされていて、振るとカラカラと音がする。

「メロン味ぃ?」

訝しみ缶を観察してみる。
”サ〇マドロップス”その缶は大きな文字でそう書かれてあった。
恐らくはこの商品の名前なのであろう。
よく見るとそこにメロンだのリンゴだのパイナップルだの書かれている。

外来の珍しいモノがこんなところでお目にかかれるとは。
しかしなんだメロン味って
これがメロンでないことは誰がどう見ても明らかである。
ならば・・・・・

今度は私が首を傾げる番だった。

すると少女がそれを察したのか、缶を貸してという風に両手をこちらに差し出してきた
いちいち動作が可愛いなぁ、こんちくせう。

「あぁ、ごめんね、ほら返すよ。」

缶を渡すと私に見えるようにして缶の封を開ける。
中から手にあるのと同じような物をだした。
あれもドロップなのだろうか?

「パ、インあ、じ。」

そう私に言うと少女はそれを口に入れた。
今度は制止する暇もなかった。
体に変化はなさそうである。
というか顔が緩んで嬉しそうである。

「お、いしい。」

みると口の中で転がしている様子
そりゃそうだ、あれを丸呑みしていたら喉が詰まって当たり前だもの
納得納得。

「私の勘違いだったみたいだね。」

いつまでも持っていては少女が食べられない。
この緑色も返そうとすると手で遮られた。

「たべて」

お前も食べてみろということらしい。

「いいのかい、お譲ちゃんのドロップが一個減っちゃうよ?」

コクリと頷く少女、思わずいいこいいこしてしまいそうになる。
もう一度手の上にあるドロップを見る。

「じゃあ」

その瞬間私の脳裏にある思いが駆け抜けた。

相手から渡され相手は他のを食べて毒が入っていないことをみせる。
       ↓
私にも食べてみろと言ってくる
       ↓
何も考えず食べる私←今ここ

なんか前にもあったなぁこんなの・・・
前の時の事を踏襲してない辺り実に私達らしいと思う。

「お、うまい」

まぁ心配するまでもないとは思っていたけど口の中にはきちんとメロン味が広がった。
私の感想に顔を綻ばせる少女。

少し体を弾ませながら機嫌良さそうに缶をカラカラ鳴らしている。

「ありがとう、お譲ちゃん。」

少女の頭をなでる。

「さ、やか」

地面に漢字を書いて自分を指さす。“彩香”
へぇ、漢字を書けるのか
そういや半妖のが寺子屋を開いていたっけ、クソ真面目と聞いたから会ったことはあまりないけど・・・

「彩香か、私は伊吹萃香だ、伊吹萃香」

私も地面に字を書く。
多分・・・これであっていたと思う。

「一字お揃いだな。」

目線をあわせようとしなくともあっているのが悔しいやら悲しいやら。

「よし、彩香お礼をしよう。なんでもいいよ、いってみな。」

別に特に理由はない。
もらったものは返そうという話し。
こんな小さい子にとってこの缶の一粒一粒は私が勘違いしたように本当に鉱石の一粒一粒のようなものなのだろうから。
これはほんのお礼。

「・・・なんでも、い、いの?」

おずおずと言ってくる

「あぁ、鬼は嘘をつかない。」
「・・・お、に?」

そういえば、私が何者なのかを教えるのを忘れていたか。
まぁ、突然現れた時点でまともな奴とは思われていなかっただろう。

「そう、私は人を喰う恐い化物さ。」

試すように言う、何と返ってくるか興味はあった。

「すこ、し、こ、こわい。」

体を見ると少し震えている。

「いい娘だね、正直ものは好きさ。」

ならば、それを知った上で彼女は何を願うのだろう。
私に消えてくれと願うのだろうか。
それとも・・・

「ともだちになって」

そこだけは、その言葉だけは一切の澱みなく発せられた。

目の前の化物に友達になれと言ったのか?
恐いと言いながら、体を震わせながら。

「お譲ちゃん、私は鬼だ。人を攫うし、喰いもする。やろうと思えば人里だって襲える。あんたの小さな体なんか一握りで潰せる。そんな化物と、あんたは友達になろうってのかい?」

自分で口調が変わったことを自覚した。
素直にドロップが欲しいと言えばよかったのだ。
それなら私は喜んで萃めただろうに、変なことを言うから私のなにかに触れることになる。

鬼とは畏れられるものである。
私は鬼であることを誇りに思っている。
人が大好きだった。
そんな私達を騙したのは誰だ?
他ならぬ人じゃないか、ならば・・・

「ともだちになって。」

・・・・・

「なんだって?」
「とも、だ、ちにな、りた、い。」

奇跡も此処で終了なのだろう、元の舌っ足らずに戻った。
まったく、大事な所を抜くなというのだ、そこを伝えるべきではないのか。
なんか今まであった自分の中のなにかが白けていくのを感じる。
呆れて声もでねぇ。

なんであったばかりの私にそんなことが言えるんだよ?

「わた、し、と、もだ、ち、いない、か、ら。」

ん?

「わ、たし、うま、くしゃ、べ、れない、から。」

あぁ、それのせいで虐められたんだろうな、子どもはその辺敏感だものなぁ。

「あんなに、しゃべっ、て、もらった、の、はじ、めてだ、から。」

途切れ途切れながらも喋る。
なんか、泣きそうになってないか?

「ともだちに、なって、くだ、さい。」

遂に決壊する涙腺。
あ~ぁ、泣いた泣いた、っていうか泣かせた泣かせた。
何をやっているんだ私は。
恩返ししようといったのは私なのに泣かせてからに、実にけしからん。

「ああぁ!泣くなお譲ちゃん。」

慌ててあやそうとする私。
人里の中なので誰が見てるか分かったもんじゃないのに・・・

考える。呆れながらも、恐怖を抑えて、私に立ち向かった少女を考える。

元来、鬼退治ってものは力比べに勝って成り立つもんだが、勇気を持ち己の力で認めさせる。
なんやかんや言ったがいいだろう、というか根本の自分が認めちゃってるし。
なにより、そうなりたいと思ってしまった私もいる。

化物を恐れるのは仕方ないが、少しづつ慣らしてやろう。
まぁ、本当に危ないような所は避けるとして、勇儀なんぞはあぁみえて結構面倒見いいし、面白いことになりそうだ。
この小さな友達を連れて何処に行こうか。

まぁ、何処でも行けるさ、時間はある。
いろいろな場所に行こう
いろいろな人と出会い、いろいろな事を学ぼう。
とても素敵な話をしよう。

とりあえず―――

「こちらこそ、友達になってください。」

まずはその第一歩。


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