ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第一話 デブラス、上陸
2015年、巨大隕石と思われる物体が房総半島の沖合に墜落した。
日本国政府は調査艇を派遣、しかし隕石は海底をえぐるようにめり込み調査は難航する。
その週の終わりに大型台風が関東地方を直撃し、台風が去った後、旧東京地区の湾岸に巨大なタマゴが打ち上げられた。
ネルフの赤木博士は調査団を編成、新たな使徒かと思われたがパターン青は検出されず。
赤木博士のチームは撤収し古代生物学者である山根博士に担当が引き継がれ研究が行われる事になった。
日本国政府はこのタマゴを孵化ふかさせる方針を打ち出し、第三新東京市にある地熱発電所の横に孵化施設を造り、大型トレーラーにより輸送する事となった。
しかし、時を同じくして先日海に墜落した隕石が海面へと浮上し中から怪獣が出現した!
その怪獣の姿を最初に見た少年が「デブラス」と名付けてしまったので、その怪獣は「デブラス」と言う名称で呼ばれる事になってしまった。
デブラスの進路は旧東京地区の湾岸。
多分古代生物のタマゴが狙いなのではないかと推測した日本国政府は防衛のため、戦略自衛隊に出動を要請するのだった。
やはり戦車や戦闘機だけで怪獣を止められるはずもなく戦略自衛隊はエヴァンゲリオンを持つネルフに応援を求めて来たがネルフ司令碇ゲンドウは協力を拒否する。

「我々は使徒と戦うために存在する組織です、デブラスなどと戦う理由はありません」
「だが碇君、持ちつ持たれつと言うではないか。君達の保有するエヴァンゲリオンならばデブラスとも対等に渡り合えるのではないか?」

断られた戦略自衛隊の幹部も発令所まで出向いて頭を下げて直接ゲンドウに頼み込んだ。

「ですが、デブラスには通常兵器が通用するのでは?」

ディスプレイにはデブラスに対して砲撃をする巡洋艦の姿が映し出されている。
巡洋艦の砲撃を受けて、デブラスは痛がっている様子だった。
そしてデブラスも赤い光線のようなものを出して反撃するが巡洋艦は沈まなかった。

「損傷度60%、まだ航行可能です!」

戦略自衛隊の女性オペレーター、河本軍曹が報告をする声も通信を介して入って来た。

「装甲の厚い巡洋艦は攻撃に耐えられたようだが、たった一撃攻撃を受けただけでボロボロだ。さらなる戦闘には耐えられんだろう。そして戦闘機に至っては大変な被害が出ている」

戦闘機は高速でデブラスに接近し、ミサイルを命中させる事に成功させるのだが、離脱する前にデブラスの光線で撃ち落とされてしまった。
ついに上陸したデブラスに戦車部隊が地上から砲撃を開始するが、デブラスは角から青白く光る稲妻で反撃し列を作って足止めしていた戦車部隊は全滅した。

「砲撃を重ねる事でデブラスの動きを鈍らせる事は出来るのだが、やつの体力は底知らずですぐに回復してしまうのだ。使徒侵略の際に我々の戦力は損失を被っており、火力を集中させる事は出来ないのだ」

戦略自衛隊の幹部は苦悩の表情を浮かべてそう告げた。

「お茶の間のみなさん、レポーターの本梨です! たった今、デブラスが旧東京沿岸に上陸しました! それにしてもでかい、まるで本当に特撮の世界に迷い込んだようです。これから危険を顧みず果敢に追跡取材をして行きたいと思います、恐縮です!」

デブラスが上陸した事はテレビ局によって報道されてしまい、政府の避難命令が出る前に近隣の住民達はパニックになって逃げ出していた。
これでは統率のとれた迅速な避難は難しくなってしまった。

「政府の避難命令が遅れたせいでN2爆雷を使う事もできない」
「碇、ネルフは普段から戦略自衛隊の協力を受けているのは事実だ。使徒も出現していない事だし、ここで少し恩を返すのはどうだ?」
「……好きにしろ」

副司令の冬月にも説得されて、ゲンドウはエヴァ弐号機を出撃させる事を渋々ながら承認した。
戦略自衛隊の地上部隊の多大な犠牲による足止めのおかげで巨大なタマゴを乗せたトレーラーは湾岸地区を越えて都心部へと入った。

「まったく怪獣相手に戦うなんて思ってもみなかったわ」
「通常兵器が効くみたいだから、使徒よりは倒しやすいと思うわよ」

弐号機のエントリープラグ内でウンザリした様子でため息をつくアスカにミサトは声を掛けた。
電力供給の問題で、フル充電した弐号機がネルフから自力走行してデブラスを止めに行く作戦となった。

「デブラスはかなり強いみたいだけど、アスカだけで大丈夫かな」
「ふん、あの相田に名前を付けられるような間抜けな怪獣、アタシの弐号機だけで充分よ、シンジはファーストと一緒に発令所でアタシが華麗に倒す所を見てなさい!」

シンジの言葉に自信たっぷりにそう答えたアスカは、地上に射出された後に弐号機を旧東京へ向けて走らせた。
そして侵攻を続けるデブラスが進路にあった《新109ビル》を破壊したとの報告が入ると、アスカは烈火のごとく怒り出す!

「今度の休みにヒカリと洋服を買いに行く予定だったのに! デブラスのやつ、許せないわ!」

私怨に燃えたアスカはデブラスに向かって正面からキックを食らわした。
不意をつかれたデブラスの体は後ろに吹っ飛んで倒れた。

「ふふん、まあざっとこんなものよ! プログナイフを使うまでもなかったわね」

ネルフの通信カメラに向かってVサインをする弐号機の姿が発令所のディスプレイに映し出された。

「まだです、デブラスが起き上がります!」

戦略自衛隊の河本軍曹の報告の通りデブラスは起き上がって弐号機をにらみつけた。

「しぶといやつね、あれだけのキックを食らわせたのに平気で起き上がるなんて」
「アスカ、油断してはダメよ!」
「ミサト、分かってるって」

デブラスは戦車隊を全滅させた青い稲妻で反撃するが、弐号機はATフィールドを展開させて防ぐ。

「ふふん、ATフィールドがあるんだから無駄よ」

アスカはそう言ってデブラスに対してさらなる攻撃を叩き込んだ。
キックに加えてプログナイフで切りつけるとデブラスは流血し、動きが少し鈍って来たように見えた。

「行ける!」

アスカがデブラスに止めを刺そうとした時、弐号機のエントリープラグに警告音が鳴り響いた。
戦っているうちにエヴァの活動限界が迫って来てしまったのだ。

「アスカ、一旦撤退しなさい」
「嫌よ、もう少しで倒せそうなのに!」

アスカはミサトの撤退命令に不服を唱えた。

「それ以上時間を掛けたら、エヴァは自力でネルフに戻る事が出来なくなるわ。そうすると再充電するのに時間がかかる事になる」
「傷ついたデブラスはしばらく移動は出来ないだろう、今のうちに再出撃の準備を整えるのだ!」
「ちっ、次こそ仕留めてやるんだから!」

ミサト以外に副司令の冬月にまで言われたアスカはネルフに引き上げた。
弐号機がデブラスと戦っている間に巨大タマゴを乗せたトレーラーはかなりの距離を稼ぐ事が出来た。
だがデブラスは予想以上に早く行動を再開した。

「府中の司令本部から連絡がありました! デブラスは進路を変更し、その通過予測地点にはドーム球場があるそうです」

河本軍曹から報告が入ると発令所は騒然となった。
ドーム球場では今日も野球の試合が行われていて多数の市民が観戦している。
しかも試合は仲日ドラポンズと新東京ガンアンツの優勝を掛けた一戦で、選手や観客も避難しようとする者は誰も居なかった。

「頑張れ、ドラポンズ!」
「ファイト、ガンアンツ!」

観客席に居る山根博士と赤木博士がTVカメラに映し出されると、オペレータ席に居た伊吹マヤが悲鳴を上げる。

「赤木センパイ!?」
「発令所に姿を見せないと思っていたらこんな所に居たの……」

ミサトはあきれたようにため息をついた。

「赤木博士は熱心なガンアンツファンですからね」
「そう言う問題ではない」

しみじみと言ったオペレータの日向マコトに冬月がツッコミを入れた。

「とにかく、東京ドームに居る山根博士やリツコ達が逃げ終えるまでデブラスを食い止めないといけません、司令、初号機に出撃命令を!」
「……早くしろ」

ミサトの進言にゲンドウは態度を崩さずに命令を下した。
シンジの乗る初号機がドーム球場へと向かう!
戦略自衛隊の戦車や戦闘機、戦闘ヘリも必死にデブラスに攻撃を加えて足止めをしていた。

「こんのおおお!」

デブラスと遭遇した初号機はすぐに正面からのつかみ合いになった。
ATフィールドで攻撃を無効化出来るがデブラスの筋力は凄まじい。
シンジも必死に力を入れて押し返す。

「センパイ、早く逃げて下さい!」
「ちょっと待って、今9回の裏なのよ」

発令所のマヤが呼びかけると、リツコはそんな返事をした。

「リツコってばこんな時に何を考えているのよ……」

ミサトは思わず頭を抱えてしまった。

「山根博士、脱出をお願いします!」
「むむ、延長戦になってしまった……」

河本軍曹も山根博士に呼びかけるが、避難する様子は無い。

「ミサトさん、いつまで食い止めればいいんですか!」

デブラスとの力比べに限界を感じた初号機のシンジが悲鳴に近い声を上げた。
それから数十秒後に試合に決着が付き、シンジは渾身の力でデブラスを投げ飛ばしてからネルフへと帰還した。

「碇、日本政府でD-501が承認されたぞ」

D-501とはミサトが『ヤシマ作戦』を実行した時に政府から発令されたコードネームである。
聞いたミサトが驚いて冬月に尋ねる。

「副司令、もしかして大出力ポジトロンライフルの発射許可が下りたのですか!?」
「うむ、総理大臣の山神首相は次回の選挙のために、何としてでもデブラスを倒したいそうだ。避難命令が遅れてしまった事もあってか、向こうの方から持ちかけて来たよ」

ミサトの質問に冬月は少し皮肉めいた口調で答えた。

「レイ、ポジトロンライフルへのエネルギー充填が終わるまでデブラスの足止めをお願い。シンジ君はあの使徒を倒した時のように射手をお願いするわ」
「了解」
「分かりました」

急いで双子山にポジトロンライフルが配備され、シンジとレイはミサトの命令にそう答えて配置へと着いた。
活躍の場が無いアスカは面白くなさそうな顔でふくれていた。

「まあ、アスカにとっては残念かもしれないけど、これで決着が付きそうね」
「ふん、アタシは怪獣なんか倒す事に興味無いもん」

接近戦があまり得意でないレイはパレットガンを使ってデブラスの足止めを行っていた。

『停電があります!』

停電を告げるヘリのアナウンスが響き渡り、ヤシマ2作戦の開始の合図が下った。
途中でタマゴを乗せたトレーラーのタイヤがパンクしてしまうアクシデントが発生し、発令所に緊張が走る。

「ポジトロンライフルの発射準備は?」
「まだしばらくかかりそうです!」

ミサトの質問にマヤが悲痛な叫びで応じた。
機転を利かせたレイが零号機で体当たりをしてデブラスを突き飛ばし、何とか危機は回避された。

「エネルギー充填、完了しました!」
「シンジ君、早く!」
「はい!」

使徒ラミエルのATフィールドを打ち破ったポジトロンライフルが発射され、レーザーがデブラスに直撃する!
これを食らっては体力自慢のデブラスもひとたまりもない。
レーザーの光が収まった時、地面に横たわって動かなくなるデブラスの姿があった。

「やった!」

ディスプレイに映し出されたデブラスの姿を見て、ミサトは指を鳴らした。

「みなさん、ついにやりました! あのデブラスが倒されたのです! しかし、そう簡単に倒されてしまっては盛り上がりに欠けてしまいます。これからどうなるのでしょうか!?
 1番 復活する
 2番 このまま動かない
 3番 とんでもない事が起こる」

停電から復旧し、デブラスの取材をしていたTV局の本梨リポーターはそんなジョークを交えたリポートをした。

「2番であってほしいわね」

ミサトは冷汗を流しながらそう言ってディスプレイを見つめた。

「1番に決まってんじゃない、アタシの弐号機が止めを刺すのよ!」
「そんな、どうやって倒すのさ」

アスカの発言を聞いて、シンジは目をむいて反論した。
発令所に居た他のネルフのスタッフ達も1番、2番、3番とそれぞれの意見を言った。

「それでは、答えを見てみましょう」

本梨リポーターの言葉に、発令所のミサト達は息を飲んでディスプレイを見つめた。
ポイント評価は受け付けておりません
ついったーで読了宣言!
ついったー
感想及びレビューは受け付けておりません


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。