政治【櫻井よしこ 野田首相に申す】日本の方向性を語れ+(2/3ページ)(2011.11.10 02:58

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【櫻井よしこ 野田首相に申す】
日本の方向性を語れ

2011.11.10 02:58 (2/3ページ)野田首相

 首相は10月12日、中曽根康弘元首相を訪れ、助言を受けた。中曽根氏はかつて自身の外交を「円と禅の外交だ」と語った。強い経済を一方の支柱に、もう一方の支柱に文化文明の力を据え、深い歴史の国の代表として誇り高く自信に満ちた態度で外交に臨むというものだ。

 中曽根元首相を訪ねた翌週の10月18日、野田首相は韓国を訪れた。長い歴史を共有する日韓は長い歴史ゆえに親しく、また、深い感情のもつれへの懊悩(おうのう)もある。それだけに節目節目で親しさを生かすための礼節と良識が必要だ。

 日韓間の首脳訪問は2009年10月の鳩山由紀夫元首相の訪韓が最後で、今回は韓国側が訪日すべき番だった。

 だが、首相はあえて自ら訪問し、先に民主党政権が返還を約束した朝鮮王朝儀軌の内5冊を、12月の返還時期を早めて持参した。李明博大統領に国賓としての訪日も招請した。いずれも日本の誠意の表現である。

 大統領はしかし、「韓日間の懸案があることが事実であり、難しい点がある」と述べ、事実上招請に応じなかった。また野田首相の訪韓直後に、韓国側は竹島の東島に現場管理事務所の建設予算を確保し、新たな建設を決定した。

 竹島の韓国支配に強い問題意識をもち、鬱陵島の「独島記念館」の視察に出かけて入国を拒否された自民党衆議院議員の新藤義孝氏は、野田佳彦首相が李明博大統領に竹島問題について一言も述べなかったこと、野田首相訪韓直後に竹島の新たな施設建設が決まったことなどを指摘し、首脳会談は何のためだったのかと憤る。

 大統領の言及した日韓間の懸案とはなにか。その第一は韓国側が持ち出した歴史問題であろう。8月30日、韓国の憲法裁判所は「韓国政府が日本政府に元慰安婦の賠償請求のための外交交渉をしないことは憲法違反だ」とする判決を下した。1965年の日韓基本条約で解決済みの問題を再燃させるというのだ。韓国外交通商部は判決に従い、9月15日、在韓日本大使館の兼原信克総括公使を呼び、同問題に関する二国間協議を公式に提案した。

 放置すれば、同問題が極めて深刻な問題となるのは言うまでもない。韓国側が際限なく繰り返す不条理な日本糾弾には、その度に、冷静かつ明確にクギを刺すことが相互のために必要である。首脳会談で李大統領側がこの問題を持ち出さなかったことに野田政権が安堵(あんど)するのは見当違いなのだ。

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