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政治
【櫻井よしこ 野田首相に申す】日本の方向性を語れ
激しい論争が続く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加問題に、今日、野田佳彦首相が決断を下すとのことだ。
首相は鳩山、菅両政権の轍(てつ)を踏まないために、慎重の上に慎重を期し、マスコミの取材にもほとんど応じてこなかった。加えて2度の所信表明演説ではいずれの課題にも深入りせず、隔靴掻痒(かっかそうよう)だった。
批判を恐れるゆえの安全運転は、安全を通り越して、言語明瞭意図不明瞭の首相像を作り上げつつある。結果、今日まで、首相がTPP参加に込めているであろう戦略や思いは伝わってきていない。
言いたいことも言わずに、内外の反対意見の鎮まりを待って、時至れば豹変(ひょうへん)する。それが最後の場面での決断だという見方もある。確かに物言わぬことによって首相は期待値を高めてきた。しかし、TPP、普天間飛行場の移転、復興財源の手当など、緊急課題が山積する一方で、日本周辺の国際情勢は地殻変動を起こしているのだ。
尋常ならざる激動の中でこそ、首相は明確なメッセージを発し、日本の方向性を明示しなければならない。言葉を尽くし、主張し、論破し、説得して道を切り拓(ひら)くのが政治の役割であり責任だ。
明確な主張を展開できなければ、政権を待ち受けるのは敗北である。熾烈(しれつ)な国益の戦いが展開される外交では、国家の敗北である。
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