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オリンパス:損失隠し 監査役、自ら関与 日本企業に不信感

オリンパスの本社事務所が入るビル=東京都新宿区で8日、久保玲撮影
オリンパスの本社事務所が入るビル=東京都新宿区で8日、久保玲撮影

 オリンパスの長年に及ぶ損失隠しが発覚し、日本企業の法令順守(コンプライアンス)にはいっそう厳しい目が向けられそうだ。株式会社には取締役を監査する監査役が置かれるが、監査役自らが損失隠しに関与したとして辞任の意向を示すお粗末な事態で、財務諸表を四半期ごとにチェックしている監査法人も不正経理を見抜けなかった。海外メディアや投資家からも厳しい指摘が相次ぎ、日本は自浄能力を試されている。【久田宏、浜中慎哉】

 オリンパスが問題の企業買収を実施した06~08年は、あずさ監査法人が監査を担当した。10年3月期からは新日本監査法人に変更されたが、いずれも財務諸表を「適正」と認めている。新日本監査法人は「個別の監査については話せない」と述べた。企業統治に詳しい弁護士は「これまでの企業の不祥事では、企業と監査法人のなれ合い体質が問題視されてきた」と指摘する。

 社内で経営をチェックするはずの監査役も役割を果たせなかった。損失隠しに関わったとして辞任を申し出た山田秀雄常勤監査役は、オリンパス副社長を経て、今年6月から監査役を務めていた。現行法では監査役を3人以上置く必要があり、チェックを厳格化するため、半数以上は社外監査役(過去に当該会社の取締役などを経験していない者)と規定されている。オリンパスは監査役4人のうち2人が社外監査役だが、機能しなかった。

 企業法務の専門家からは、コンプライアンス体制の強化のために社外監査役の増員を求める声がかねてあったが、企業の自主性を守るとの理由から経団連などが反対してきた。しかし、カネボウやライブドアなど過去の粉飾事件に続き、オリンパスの損失隠しが発覚したことで、経済界は方針の見直しを迫られそうだ。

 オリンパスの疑惑をめぐる海外メディアの関心は高く、ウッドフォード元社長の解任後、「説明責任を回避する日本企業」といった報道が相次いだ。8日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は「日本企業の歴史で過去最大で過去最長の損失隠しの一つ」と深刻さを強調。破綻した山一証券のケースも引用して「90年代のバブル崩壊後の日本企業にみられた『飛ばし』を想起させる」と指摘した。大王製紙の前会長による巨額借り入れ事件も発覚し、オリンパス1社にとどまらず、日本企業のガバナンス(企業統治)全体に疑念の目が向けられている。

 危機感を抱く東京証券取引所は10月26日、全上場会社に対して、法令順守体制の徹底を求める異例の要請をした。藤村修官房長官も8日午後の記者会見で「市場の公正性、透明性を確保するために、各上場企業で企業統治が発揮され、適切な情報開示が欠かせない」と述べ、企業にコンプライアンスの徹底を求めた。しかし、ウッドフォード元社長の指摘がなければオリンパスの不正経理も発覚しなかったとみられ、日本企業の信頼回復には抜本的な改革も求められそうだ。

毎日新聞 2011年11月9日 東京朝刊

 

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