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オリンパス疑惑の中心人物、所在不明に


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【ボカラトン(米フロリダ州)】オリンパスの企業買収をめぐる疑惑の中心人物として注目されている米投資助言会社の社長、佐川肇氏。同氏はブルーグラス・バンドで演奏し、所有する大型ヨットで世界中を航海する趣味人でもある。先週夫人と離婚手続きを行った際に申告した家族の資産は1140万ドル(約8億8500万円)だった。

 企業買収に関するオリンパスへの助言で、同社から異例に高額の報酬を受けたとされる2社の1つ、アクシーズ・アメリカを設立した佐川氏については、その実像が徐々に明らかになる一方で、不明な点も多い。

 ウォール街の元バンカーの同氏がどのようにしてオリンパスと深く関わるようになったのか、2社(同氏はもう1社のアクザム・インベストメンツのディレクターも務めていた)に支払われたという6億8700万ドルをどう処理したのかもまだはっきりと分かっていない。さらに、同氏が現在、どこにいるかも不明である。

 オリンパスが2008年に英医療機器メーカー「ジャイラス」を2150億円で買収した際に上記2社に支払った報酬については、その規模が異常だったために批判が巻き起こった。関係筋によると、米連邦調査局(FBI)も強い関心を示してきた。

 関係筋によると、佐川氏はニューヨークでFBI捜査員とこの件で接触したという。ただ、同氏は犯罪の告発は受けていない。

 一方、佐川氏の夫人のエレンさんは6日にインタービューに応じ、同氏がボカラトンの自宅に戻っていないことを明らかにし、現在どこにいるか分からないと語った。二人は先週、フロリダ州パームビーチ郡で離婚を申請した。

 佐川氏の携帯電話から応答はなかった。

 結婚が破局したにもかかわらず、エレンさんは夫を強く擁護した。同氏について「素晴らしい人」と語り、「私の知る限り、人生において不正行為を行ったことなど一度もない」と夫の無実を主張した。

 エレンさんが「ルネッサンスマン」と呼ぶ佐川氏は、64歳で、慶応大卒で金融業界を渡り歩く一方、ブルーグラス・バンドでハワイアン・ギターを演奏する横顔を持つ。さらに船の愛好家で、これまで所有した船舶は6艇。02年には所有していた全長48フィートの大型ヨットで大西洋横断レースに参加したこともあるという。

 二人が出会ったのは1978年の東京。当時、エレンさんは英語の教師をしていて、佐川氏は野村総合研究所に勤務していた。同氏のバンドのコンサートを観に行ったのがきっかけで二人の交際が始まり、1年後に結婚したという。

 佐川夫妻は結婚直後に渡米し、佐川氏の米証券界でのキャリアが始まる。1980年初めの4年間、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルに勤務し、その後、1990年代にはペイン・ウェバーに約6年間在籍した。

 そして、佐川氏は1997年にアクシーズ・アメリカを設立。ただ、同社の大型案件はオリンパスの企業買収だけだったようだ。米証券取引員会(SEC)への申告によると、同社は02年から05年の間、年間収入が44万5000ドルを超えたことは一度もなく、1年を除き全て純損を計上した。

 同社の業績が大きく変化したのは、オリンパスと最初の契約を獲得した06年のことだ。助言手数料は320万ドルに急増し、280万ドルが同社の持ち分権者に還元された。同社の収入はその後も大幅に伸び、07年に779万ドル、また08年には2420万ドルに達した。申告によると、この3年間の収入は実質的に全てオリンパスからの手数料だった。

 佐川氏は07年にアクシーズ・アメリカを100%取得した。そして、同社は同年12月、240万ドルを名前の公表されていない「元メンバー」に配給した。

 オリンパスがジャイラスを買収した08年2月1日から5週間後、アクシーズ・アメリカは米証券規制当局への登録を取り消し、さらに同年12月には正式に解散した。一方、アクザム・インベストメンツも10年に英ケイマン諸島での登録を抹消された。

 エレンさんによると、同氏はオリンパス騒動が巻き起こる前までは優雅な引退生活を楽しんでいたという。夫妻は5年前にコネティカット州からフロリダ州ボカラトンの地中海風豪邸に引っ越してきた。佐川氏はゴルフ三昧の日々を過ごし、時にはコンペに参加することもあった。

 オリンパス騒動で渦中の人となってしまった現在、佐川氏がボカラトンに戻ってくるかは分からないと語るエレンさんは、「夫と2度と会えなかったとしても、彼への敬意を失うことはないだろう」と語った。

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