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'11/11/9

大田哲哉さん

「地方の私鉄が大胆なことを」といぶかる向きもあったようだ。広島電鉄が2年前に踏み切った契約社員の正社員化。非正規という働き方の危うさを「年越し派遣村」が明るみに出した直後とあって、労使合意は全国から注目された▲「契約社員の将来への不安が解消できる」と社長だった大田哲哉さん。15年前の就任時には「場合によっては公共性よりも企業性を優先させる」と非情な一面を隠さなかった。ここは中長期をにらんだ経営判断でもあったのだろう▲07年から務めた広島商工会議所会頭としてはもちろん、公共性を前面に出した。ぎくしゃくしがちな広島市との関係を修復するため、トップ同士の対話を重ねる。気さくで話し好きな人柄も手伝って、双方の実務者らが次第に打ち解けてきた▲旧市民球場跡地での全国菓子博覧会の誘致は、政経連携の成果といえるかもしれない。街のシンボル、路面電車を走らせる企業としても、にぎわい創出は願ったりかなったりのはずだ▲JR広島駅周辺の路線再編や宮島線の高速化といった電車の魅力をより高める構想は、まだ実現していない。続投を望まれながら1期での会頭引退。享年70歳は若すぎる。




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