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くりやま もとむ Profile
大学在学中に競馬通信社入社。退社後、フリーライターとなり『競馬王』他で連載を抱える。緻密な血統分析に定評があり、とくに2・3歳戦ではその分析をもとにした予想で、無類の強さを発揮している。現在、週末予想と回顧コラムを「web競馬王」で公開中。渡邊隆オーナーの血統哲学を愛し、オーナーが所有したエルコンドルパサーの熱狂的ファンでもある。
栗山求 Official Website
http://www.miesque.com/

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2010年12月20日 (月)

朝日杯フューチュリティSはグランプリボス

レースが終わり、勝ち馬が引き揚げてくるのを待っている間、検量室前にいた矢作芳人調教師は笑顔ひとつなく神妙な表情。グランプリボスとミルコ・デムーロ騎手が脱鞍所に戻ってくると、「あそこは(外に)出さないとしゃあない」と、4コーナーでアドマイヤサガスを外に弾き飛ばした騎乗をかばうように日本語で語りかけました。別の関係者がデムーロ騎手に「危なくない?」と声を掛けると、彼は馬から鞍を外しながら「危ない危ない。ホント危ない」。その関係者は失格の危険性について尋ねたようですが、デムーロ騎手は4コーナーでアドマイヤサガスと接触したシーンの物理的な危険性として受け取ったようでした。
http://www.youtube.com/watch?v=SCO_GYA1UAA

結局、入線順位のとおりに確定。初G1制覇の矢作調教師は大勢の関係者と握手、抱擁。目にはうっすらと涙が浮かんでいました。

勝った△グランプリボス(5番人気)は京王杯2歳S(G2)に続く重賞連覇。2歳牡馬チャンピオンの座を確定させました。父サクラバクシンオーにとってはショウナンカンプ(02年高松宮記念)以来2頭目のG1ウィナーです。“母の父がサンデーサイレンスではないサクラバクシンオー産駒”は芝1600mで連対率14.0%。一方、「サクラバクシンオー×サンデーサイレンス」は21.8%。この組み合わせは距離の融通性があります。ただ、専門分野の芝1200mでもなかなかG1を獲れない種牡馬ですし、グランプリボス自身も、G1を勝つほどの底力に恵まれた配合とは思えなかったので、高い評価はできませんでした。馬が予想以上に強かったですね。
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103388/

2着◎リアルインパクト(4番人気)はフランシス・ベリー騎手が最高に上手く乗りました。あの騎乗で負けたのなら力が足りなかったということです。『ブラッドバイアス・血統馬券プロジェクト』に提供した予想は△◎で馬連4990円、△◎△で3連複8830円的中。『ウマニティ』に提供した予想は馬単11750円、3連単67910円的中。予想を転載します。

「◎リアルインパクトは『ディープインパクト×メドウレイク』という組み合わせ。半兄アイルラヴァゲインはオーシャンS(G3)の勝ち馬で、中山コースを得意としている。母トキオリアリティー(準OP)も小回りコースで強かった。1、2戦目はいずれも東京コースで走ったが、中山で変わり身を見せる可能性が大きいと思われる。
 基本的にディープインパクトはアメリカ血脈と相性がよく、本馬はサンデー系とニックスの関係にあるヘリオポリスが入るほか、ノーサードチャンス≒ブルームーン5×4・5などを持つ。なかなかの好配合馬。ダービー向きの本格派ではないものの、ハイペースで展開するマイル前後のレースでは強いだろう。
 前走の出遅れはタイミングのズレが原因。初戦では好スタートからすんなり好位につけたように、ディープインパクト産駒にありがちなテンに行けないタイプではない。今回は好枠を活かして好位で立ち回るはず。早めスパートで先頭に立ってしまえばしぶといだろう。」
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103244/

パドックを見て思ったのですが、500キロを超す大柄な馬体でありながら、なんとなくまだ幼いというか、成長の余地を残しているように見えました。もちろん、2歳のこの時期から成長がなければ困るわけですが、この馬はとくにそんな気がしましたね。

3着△リベルタス(2番人気)は位置取りが下がらないようにうまく好位で競馬を進めていました。血統的にはこの距離向きではないですし、トビが大きいのでラチ沿いで窮屈な競馬を強いられると苦しいのでは、と思っていたのですが、ここまで頑張るのですから能力が高いということでしょう。距離が延びて楽しみです。

4着○サダムパテック(1番人気)は能力の高さは認めても、出遅れ癖や馬の適性から、中山芝1600mではどうしても本命を打ちたくありませんでした。出遅れて外を回して直線で伸びあぐねるという、このコースにおける典型的な失敗パターンでした。それでも坂の途中で一瞬突き抜けるかという勢いがあったので、やはり強い馬であるのは間違いありません。次走、人気が落ちるようなら狙い目でしょう。

4コーナーの出来事に関する裁定については、ツイッターで蛯名正義騎手が不満の声を挙げていました。私はリアルタイムで見たときは完全にアウトだと思いました。ただ、公開されたパトロールフィルムを何度か見直しているうちに、ギリギリセーフという判定もありかな、と思い直しました。外に出したいグランプリボスと、内に押し込めたいアドマイヤサガスの、互いに譲れないポイントでのバトルであり、結果としてグランプリボスの力が勝ってアドマイヤサガスを弾き飛ばしましたが、もし逆にアドマイヤサガスの力が勝っていたら、グランプリボスの勢いからして正面のブラウンワイルドに乗り上げていたかもしれません。デムーロ騎手の騎乗は、衝突を回避するために仕方がなかった側面もあり、それが冒頭で発した彼の「危ない危ない。ホント危ない」という発言の真意だったのではないかと想像します。そのあたりの情状酌量によって降着だけは免れたということではないでしょうか。
http://www.jra.go.jp/JRADB/asx/2010/06/201005060611p.asx

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コメント

私もリアルインパクト◎でしたが、アイルラヴァゲインの下で500キロあるのに、ぜんぜんパワー型に見えないんですよね~
朝日杯を勝つようなマイラーなら、もうちょっとマッチョに出て欲しいなあ~と思いながらパドックを見てました
そこが良くも悪くもディープ産駒かなと

おお、同じ狙いだったとは……! 中山マイルでこの枠だと、まぁリアルインパクトに行っちゃいますよね。「良くも悪くもディープ産駒」という感想はまったく同感。強みでもあり弱みでもあるんでしょう。もしこれからグワッと肉が付いたら「現実衝撃」とかいう馬名で来年の香港マイル勝ちそうですな(笑)。

こんにちは。
朝日杯2着のリアルインパクトの少し胴が長めの体型は、祖母の父インリアリティの影響ではないでしょうか。
インテント~インリアリティの系統は、アメリカのパワー血統の割には胴の長さにゆとりがあると思います。
マイルでの爆発力にはやや欠けるかもしれませんが、2000くらいまでは余裕でこなせるのではないでしょうか。
インリアリティの血は、リアルシャダイやフジキセキを見るかぎり、へイルトゥリーズン系との相性も良さそうです。
個人的には、BCクラシックを連覇したティズナウのような馬体に成長してくれれば理想なのですが(リファールの血もありますし)。

In Reality
http://image07.webshots.com/7/0/50/24/90705024WKCrkM_ph.jpg

Intentionally
http://www.circledhorses.com/intentionally%20bw.jpg

Intent
http://www.circledhorses.com/Intent_tb_72.jpg

Tiznow
http://horseiran.com/wp-content/uploads/2009/10/tiznow-th.jpg

Meadowlake
http://www.trinitythoroughbreds.com/meadowlake_ped.JPG

こんにちは。貴重な画像ありがとうございます。過去の名馬の血統表は簡単に調べられるのですが、肖像写真はネットで探してもあまり出てきません。メジャーどころはともかく、マイナーなところは手持ちの文献のなかから探すしかありません。個人で最も持っていらっしゃる方は早野仁さんだと思います。

リアルインパクトは2000mぐらいまででしょうかね。それ以上になるとどうかなという気が個人的にはしています。

In Reality はフロリダ産のマイラー血統です。この血と明確にニックスといえる関係にあった血は、同じ年に同じフロリダで生まれた Dr.Fager です。このあたりについては、よろしければ「栗山求 Official Website」の「Works」にある「甦るオールド・グローリー」をご覧くださいませ。
http://www.miesque.com/

デムーロの馬が前の馬に乗り上げそうだったのは、確かにその通りだったのでしょうが、それならそれで、「外に出す」だけでなく「控える」べきでした。
パトロールビデオを見る限り、勝つための進路を確保するために外に斜行しており、事故を防ぐために外に逃げたようには見えません。そこに情状酌量の余地があるとは言いにくいと思います。
JCのスミヨンがアウトなら今回のデムーロもアウト、今回のデムーロがセーフならJCのスミヨンもセーフであるべきでしょう。
裁決基準をもっと分かりやすいものにして、裁決の理由を詳細に説明することが求められます。

審議の対象となるレース中の事象は、明確な判定を出しにくいデリケートなものが多いですから、見る者の主観によって白あるいは黒という意見が出るのは当然だと思います。「裁決基準をもっと分かりやすいものにして、裁決の理由を詳細に説明する」というご意見には同意します。

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