落下事故 見えてきた意外な原因

3月の巨大地震とその余震の際、東北地方のショッピングセンターでエスカレーターが相次いで落下した事故について、製造元の一つの三菱電機は、施工ミスが原因の一つとみられることを明らかにしました。
これを受けて、三菱電機は、全国のおよそ3万台すべてについて、自主的に点検することを決めました。

落下原因を調査 自主点検へ

3月の巨大地震とその余震によるエスカレーターの落下事故は、宮城県仙台市と福島県のショッピングセンターで3件起きていたことが、NHKのこれまでの取材で明らかになっています。

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このうち、福島県で落下したエスカレーターについて、製造元の三菱電機が詳しく調べたところ、施工ミスが原因の一つとみられることが分かりました。
三菱電機によりますと、福島のエスカレーターは、建物の鉄骨の上に直方体の金属の箱を置き、そこにエスカレーターの両端にある金属製の板を掛けて落下を防ぐ仕組みになっていました。
しかし、鉄骨の位置が、設計図よりも2センチ程度横にずれ、エスカレーターの金属製の板が箱の上に載る「かかり代(しろ)」と呼ばれる部分の長さが短くなったとみられるということです。

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さらに、直方体の箱の縦と横を間違って設置したため、かかり代となる部分はさらに短くなり、本来15センチのところが数センチしかない状態だったということです。
このエスカレーターが設置されたあとに設けられた業界の耐震基準を基に計算すると、落下防止に必要なかかり代の長さは7.5センチ以上ですが、これより短くなった可能性があり、落下事故の原因の一つになったとみられるということです。
調査結果を受けて、三菱電機は、全国に設置したおよそ3万台すべてについて、かかり代の長さや状態に問題がないかなど、自主的に点検を行うことを決めました。
三菱電機は「事故を重く受け止め、利用者の安全を確保するために、点検に踏み切ることにした」と話しています。

設計図と異なる設置方法 明らかに

エスカレーターの状況を詳しく見てみます。
エスカレーターは、両端にある金属製の板を、建物の鉄骨に掛けるようにして設置します。
多くの場合、一方を溶接などで固定しますが、もう一方は、固定しません。
金属の板が鉄骨に掛かる部分が、かかり代と呼ばれ、落下を防ぐ役割がありますが、施工ミスは、固定されていないほうで見つかりました。
これは、NHKが入手した福島のエスカレーターの設計図です。

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鉄骨の表面には、ボルトの頭が出ていたため、金属製の箱を置き、その上にエスカレーターを掛けるようになっていました。
その断面図です。

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箱は鉄骨よりもせり出し、かかり代の長さをかせぐように設計されていました。

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一方、こちらは、エスカレーターが落ちたあとメーカーがその部分を調べた図です。
箱の向きが違っていました。
さらに、鉄骨自体も設計図より2センチ右にずれていたとみられます。
このため、かかり代は、数センチしかなかったということです。
元の設計で、かかり代は15センチありました。
しかし、実際には、数センチのずれで落下してしまうおそれがあったということです。

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専門家 “ほかのメーカーも確認を”

耐震設計など建物の設計が専門の東京理科大学理工学部の北村春幸教授は、エスカレーターのかかり代は、通常の点検では見えない部分にあるため、どのような状態なのか改めて確認することが重要だと指摘しています。

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北村教授は「部品の縦横を誤って置いたことは、施工業者がかかり代の重要性を理解していなかったとしか思えない。ほかのメーカーも、かかり代の長さがどの程度あるのか、実際の施工状況を踏まえて確認することが重要だ」と話しています。

(11月2日 20:50更新)

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