神戸市長田区の兵庫県立湊川高校(定時制)で26年間、朝鮮語を教えてきた常勤講師の在日韓国人2世、方政雄(パンジョンウン)さん(60)が9日、兵庫県教委から優秀教員として表彰される。教諭になれない外国人講師の表彰は同県では初めて。方さんは「日本の教育界が多様性を認める一歩になれば」と期待する。
同校の周辺には在日コリアンが多く住んでいるため、差別をなくすことを目的に1973年から朝鮮語が必修科目となっており、方さんは85年、半年ごとに契約を更新する講師として教壇に立った。
同校には、戦後の混乱で読み書きが不自由な高齢者や不登校経験者ら多様な国籍、年齢の生徒が通う。会話がない荒れた家庭で暮らす生徒も多かった。
方さんは、差別され、貧困にあえいだ半生を思い返し、「見捨てたらあかん」と自分に言い聞かせ、「親の気持ちを子どもに届ける」との一心で保護者と話し合う日々を過ごしてきた。
91年の日韓覚書で国籍条項が撤廃され、方さんは翌年の教員採用試験に合格。契約更新はなくなったが、管理職になれない講師の扱いは変わらなかった。熱心な指導が認められ、生徒指導部長(主任)になったものの、1年で降格となった。
それでも「正しく言葉を学ぶことで隣国への差別、偏見はなくなる」との信念を貫き、県内外での講演は140回を超えた。来春に定年退職を迎えるのを前に、同校校長が全国で二百数十人とされる外国籍の後輩教員や教員志望者の励みになればと優秀教員に推薦。県教委も功績を評価した。
方さんは「少子高齢化で外国人労働者が増えるなど、外国人教員の役割が今後さらに大きくなっていくはず。しっかりと身分を保障してもらいたい」と話している。【村上正】
毎日新聞 2011年11月8日 大阪夕刊
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