米同時テロ:日本人遺族、米文書判読できず苦闘10年

2011年9月10日 13時6分 更新:9月10日 13時26分

送られた英文の書類を手に「ひとりで翻訳して読むのは遺族には大変な負担になる」と話す住山一貞さん=東京都目黒区で、青島顕撮影
送られた英文の書類を手に「ひとりで翻訳して読むのは遺族には大変な負担になる」と話す住山一貞さん=東京都目黒区で、青島顕撮影

 米同時多発テロでは約3000人が死亡し、日本人も24人が犠牲になった。11日で10年たつが、この間、日本人遺族の負担になったものの一つが「言葉の壁」だ。膨大な英文書が読めず、米国の補償金を受け取れなかった遺族もいる。「海外で事件に巻き込まれる日本人は少なくない。日本政府は翻訳などの支援制度を」。遺族たちはそう訴える。

 「文書が届いても内容が分からない」。住山一貞さん(74)=東京都目黒区=は、自宅のテーブルに積まれた書類の山を見てため息をつく。

 ニューヨークの世界貿易センタービル(WTC)で、富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)の行員だった長男陽一さん(当時34歳)を失った。米国政府の遺族への対応、死亡通知、遺体の鑑定、経済的補償、遺品の状況……。多くの文書が送られてきたが、すべて英語だった。悲嘆の中で辞書と格闘した。今年7月にはニューヨーク市長から追悼式典の招待状が届いたが、最初はそうとすら気付かなかった。

 WTC内の外資系企業に勤めていた長男敦さん(当時36歳)を亡くした白鳥晴弘さん(71)=東京都品川区=も同じだ。「どっさり届いた文書の量にぼうぜんとした。内容が分からず、補償も受けられなかった」と憤る。

 日本人の遺族は北海道から九州までばらばらで、被害者の勤務先も異なり、遺族会は結成されなかった。「英語が分からないことで、支援から置き去りにされた遺族は他にもいるのではないか」と住山さんは心配する。

 外務省邦人テロ対策室は、事件直後は遺族に邦訳文を提供することもあった。だが、法的根拠はなく、あくまでも「サービス」だった。その後は予算も人手もなく先細りした。

 住山さんと白鳥さんは09年12月、海外で起きた事件の被害者・遺族に現地の公式情報を翻訳して提供することを、政府の犯罪被害者等基本計画に盛り込むよう要望した。だが、今年3月の計画改定には反映されていない。【川名壮志】

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