大人っぽさ見せたい　織田信成

　次々と新星が現れる男子フィギュア界で安定した成績を残し続け、残すは世界トップの座。今季にかける思いを聞きました。

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　宇賀　いよいよ織田さんのグランプリ（ＧＰ）シリーズ初戦の中国杯（４〜６日）が迫りました。このオフは左ひざのケガで練習ができない時期があったと聞きました。

　織田　２カ月半は休むことになりました。１４歳から約１０年間、ほぼ毎日スケートをしてきましたから、不安で仕方がありませんでした。でも、休んでいる間に、自分の演技や他の選手の演技をじっくり見ることができて勉強になりました。自分の演技の映像を見ることなんて、今まであまりしたことがなかったんです。

　宇賀　試合後に演技を見たりはしなかったんですか？

　織田　自分の演技があまり好きじゃないんですよ。両手を思いっきり広げているつもりでも、広げてないように見えたり、ダメなところだけが見えて落ち込むタイプだったんです。じっくり見直して、反省点を見つけることができた。ケガが治ってからの練習に生かすことができています。

　宇賀　家族の支えも大きかったんじゃないですか？　中学時代の同級生だった奥さんや、昨年１０月に生まれた信太朗（しんたろう）くんの存在はどうですか？

　織田　落ち込んでいても奥さんが明るく振る舞ってくれて助かりました。普段ならカナダに行って練習する時期を、日本で一緒に過ごせた。結婚して子どものいる選手はほとんどいないので、その部分では特殊ですよね。気持ちで負けそうになっても、ますます頑張っていこうと思えるようになりました。

　宇賀　休みの日は、どのように過ごしているんですか？　家での役割分担は？

　織田　３人でどこかに行くことが多いです。日曜はお昼頃まで寝て、ブランチを食べにショッピングモールに行ったりしています。僕はもっぱら信太朗をお風呂に入れる係。スケート以外の楽しみは、やっぱり息子と過ごすことですね。

　宇賀　結婚式も今年されたそうですね？

　織田　試合と同じくらい緊張するもんですよ。パッと式場の扉が開く瞬間がたまりませんでした。お世話になった人たちの顔が見えて、緊張しました。でも、すごく楽しかったです。奥さんは保育園の先生をしていたんですけど、その教え子のみんながお祝いの歌を歌ってくれて、それで僕がボロボロ泣いてしまって。

　宇賀　中国杯に向けて気持ちの方はどうですか？

　織田　若手がたくさんいるんで、負けたくない気持ちでいっぱいです。羽生結弦選手（宮城・東北高、２０１０年世界ジュニア王者）やガチンスキー選手（ロシア、１１年世界選手権銅メダル）といった１０代に負けたくない気持ちが、練習のモチベーションになっていますね。自分の良さを前面に出してアピールしたい。精神的に充実してるので、今は楽しみの方が大きいです。

　宇賀　今季のプログラムの見どころを教えて下さい。

　織田　ショートプログラムは「ソウルシチュー」という明るい曲で、コミカルというか、ポップな感じで演じたいと思っています。フリーは映画「シェルブールの雨傘」のテーマ曲のジャズバージョンです。コーチや振付師の先生からは、フランスの花売りの男性が運命の人と出会っていくようなストーリーを演じて欲しいと言われています。自分は大人っぽく見られないですけど、大人っぽく、りりしく表現をしたいと思っています。

　宇賀　昨季はＧＰシリーズで２戦とも２位。ＧＰファイナルも２位。世界の頂点に立つために必要なことは何だと思いますか？

　織田　昨季は拠点をもともと習っていたカナダに戻して、スケートを楽しむことをもう一度取り戻すことができたと思います。昨季は昨季で楽しめましたが、やはり僕が思うには、最後の詰めが甘いんだろうと考えています。どこか不安があって、ミスしてはいけないところでミスをしてしまう。今季は詰めの甘さが出ないように、なるべくプログラムを練習で何度も繰り返して試合に臨みたいです。

　宇賀　頂点に立ちたい気持ちは強いですか？

　織田　ＧＰシリーズで一つでも多く１位を取って、（ファイナルで）優勝を狙いたいです。もっといい演技をして、サポートしてくれる家族やファンのためにも、優勝しか狙っていません。

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笑顔の源は秋スイーツ

　おしゃべりで気さくな織田選手。どんな質問にも、笑顔で答えてくれました。体調管理のため甘いものを制限していますが、休日だけは解禁。特に今は、栗やカボチャなどの秋スイーツに夢中で、いろいろなお店のものを食べ比べしているそうです。（テレビ朝日アナウンサー）

■インタビューは「報道ステーション」でも放送する予定です。

　おだ・のぶなり　１９８７年３月２５日、織田信長の子孫として大阪府に生まれる。０５年世界ジュニア王者。ＧＰシリーズ通算５勝。１０年バンクーバー五輪７位。関大大学院所属。