【釜山・塩塚未】「対馬旅行のお目当ては、出発前の免税店お買い物」-。高速船で韓国釜山市から長崎県対馬市を訪れる人たちの間で、こんな旅行が人気だ。対馬-釜山航路は10月に2社が参入後、激しい値引き合戦に突入。船会社が旅行会社とタイアップして、格安で海外に行けて免税品も買える日帰り激安ツアー商品を相次ぎ売り出し、対馬への「免税店観光」を促しているからだ。
今月初め、釜山市の釜山港国際旅客ターミナルの待合室。出国審査を終えた女性たちが、ブランドバッグなどの免税品を受け取っていた。家族と日帰り旅行に向かう郭善雅(クァクソンア)さん(28)は「欲しかった化粧品を免税店で買った。旅費も安くて免税品も買えるのが魅力」と顔をほころばせた。
韓国では海外旅行の際、出国前に国内の免税店で買い物するのが一般的。対馬への旅行者もチケットを購入後、釜山市内の百貨店やホテルの免税店で商品を買い、出国当日にターミナルで受け取る仕組みとなっている。
対馬-釜山間の高速船はこれまで韓国・浦項の大亜高速海運の1社態勢だったが、10月にJR九州高速船(福岡市)が比田勝港に、未来高速(釜山市)が厳原港に相次いで就航。便数は約4倍に増え、供給過剰気味だ。
こうした中、客を少しでも増やしたい船会社が、平日日帰りを中心に大幅割引を実施。航路利用者の95%以上が韓国人観光客のため、釜山を舞台に顧客争奪戦を繰り広げている。船代は往復15万-17万ウォン(約1万830-1万2270円)が正規料金だが、日帰り往復3万9千ウォン(約2810円)の激安商品も登場。
ただ、主力の1泊2日と違い、日帰りだと対馬滞在時間は2-4時間ほど。食事と買い物、簡単な散策しかできない。そこで「格安の旅費で免税品が買える」ことを強調。中には3万ウォン分の免税店クーポン付きで往復6万ウォン(約4330円)というプランも現れた。
船会社によると、格安の日帰りツアーは若い女性を中心に全体の2-3割とみられるという。大手旅行会社「旅行博士」釜山支店の趙在根(チョジェグン)・第2本部長は「買い物の免税分で旅費を払ってもお釣りがくると考える人が多いようだ」と話す。
「利益はほとんど出ない」という日帰りの安売りが続く各船会社だが、JR九州高速船の陳栄洙(チンヨンス)・釜山支店長は「最初は免税店目当てでも、日帰りで対馬散策などを体験すれば、リピーターになる可能性も高い」と市場拡大に期待している。
=2011/11/08付 西日本新聞朝刊=