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地方
遠鉄百貨店、あす新館オープン 浜松駅周辺 顧客取り戻せ
百貨店として県内最大の売上高を誇る遠鉄百貨店の新館が9日、本館に隣接する形でJR浜松駅前にオープンする。浜松駅周辺は、松菱百貨店が倒産して以降、中心市街地活性化のための有効な手立てが講じられないまま10年が過ぎ、衰退の一途をたどる。市の担当者が「市街地活性化策は遠鉄新館をみてから」と注目する新館オープンは、周辺商業施設も含め、活性化の起爆剤としての期待を一身に背負っている。(飯田耕司)
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遠鉄百貨店は、売り場面積を新館オープンにより一気に1・5倍に増やす野心的な取り組みで、開店後1年間の売上高を400億円(平成22年度は推定324億円)まで高める計画をぶち上げている。
新館コンセプトは「今までになかった新しさの提案」。百貨店ならではの欧米高級ブランドの店舗が目立つ構成ながら、昨今の消費不況やカジュアル志向も意識し、県内になかった「シーバイクロエ」「マークBYマークジェイコブス」といった高級ブランドのセカンドライン(普及版)を数多く取りそろえた。担当者は「名古屋など県外に出かけていたファッション好きの20~40代の女性買い物客を取り戻せる」と自信を深めている。
◆相乗効果見込めず
新館オープンによる波及効果を近隣の商業施設や市が期待する一方で、「過度な期待は酷」(県内百貨店関係者)との声も挙がる。
浜松駅周辺は、6年に丸井、9年に西武百貨店が相次ぎ撤退、13年には松菱百貨店が倒産した。進出予定だった大丸百貨店やパルコも計画を取りやめるなど、現在は遠鉄百貨店を除けば駅周辺はもはや“もぬけの殻”。周辺施設の客が遠鉄百貨店に訪れるという相乗効果がまったく見込めないからだ。
しかも、「新館オープンは、元々は大丸進出の対抗策として位置づけられたプロジェクト」(関係者)で、いわば引くに引けない背水の陣。円高などで地域経済が疲弊する状況下で、長年売り上げを維持できるか不透明感も漂っている。
◆郊外店とも競争
郊外大規模ショッピングモールとの競争も課題だ。
近隣には、16年にイオンモール浜松志都呂(浜松市西区)、21年には、浜松市の隣の磐田市にららぽーと磐田が開業。先月上旬には、イオン浜松市野ショッピングセンター(浜松市東区)が改装オープンした。
これら商業施設は、無料駐車場を完備するほか、低価格のブランドを中心に150以上のテナントが企業努力によって誘致されている。気軽に食事や買い物を家族で丸一日楽しめるとあって、休日は郊外で過ごすという生活スタイルが近隣住民に完全に定着した。
こうした客を駅周辺に取り戻すのは至難の業で、一部からは、「駅周辺に人を集めるには、もはや駐車場の無料化しかない」との声すら挙がる。遠鉄百貨店の新館オープン目当てに集まった消費者をいつまで引きつけられるか、残された時間は少ない。
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