■ダライ・ラマ14世とニコニコ動画の七尾功記者とのやりとり
七尾功記者: 被災地で多くの方を励ましていただきありがとうございました。質問ですが、チベット、中東だけはなく、欧米そして日本でも政府などに対する抗議活動・デモが世界的に激化しております。理由や規模はそれぞれですが、民衆が政府に強い不信感や怒りを感じていることは明らかです。こうした世界的な"うねり"は今後どうなっていくとお考えでしょうか。政府と民衆との対立を克服するために何が必要でしょうか。
ダライ・ラマ14世: やはり今の世の中は、道徳的な考え方が欠如している世の中になっています。そういったシステムに問題があるということです。あるいは道徳倫理の欠如・誤用があると思います。だからこそ、政治に関しても汚れた政治になってしまいがちです。確かに政治は、問題を解決する1つの方策であると考えます。しかし、政治を行う政治家の心が倫理を持たない、あるいは道徳心を持たない心で行なわれれば、どうしてもそこに現れる政治が汚れた政治になってしまいます。
これは宗教でも同じことが言えるわけで。例えば道徳的観点・倫理を持たない宗教家であれば、宗教も同じように汚れた宗教になってしまうということです。だからこそ、我々はすべての努力をかけて、全努力をして、倫理や道徳観を進めていかなければならない。これは単に宗教的な考え方を通してだけではなく、一般、皆さん自身が考えている良識を通して行うことができるのではないかと思います。良識や信頼を勝ち取ること、正直であること、そういったものが友情を育み、そして温かい雰囲気が人を幸せにするのであります。
例えば、人々がいくらお金持ちになり、良いものを着ていても、そこに良識がなかったり、あるいはまた努力する心がなかったりしたら、決してその人は幸せにはならないと思います。だからこそ、信頼ができる社会を作っていくことが大切だ。例えば、いくら億万長者になっても、自分だけが億万長者になっているようでは幸せにはなれないということです。特に最近においては、貧富の差が大きくなっています。この格差が大きくなってきているのを、何とか小さくしてほしいと私はアメリカでも話をしました。アメリカでは億万長者がさらに億万長者になり、そしてまた貧困層にいらっしゃる方は未だに貧しい生活をしている、格差が広がっている状況です。何とかこのギャップを小さくしてくださいという話をアメリカでしました。その同じことが、例えば南の国々、アフリカや南米やアジアの一部の国でも行なわれていると思います。先日、インドでガンジー派の方がある運動を行いました。確かにこれはそれほど大きなことではありませんでしたが、しかし国の腐敗を何とかしたい気持ちに皆さんはもっと目を向けるべきだと思います。また、中国でも政治的腐敗が見られます。ところが残念ながら中国では、一般の方々が声を上げることができない、表現ができない状況にあります。
・・・という風に話をしますと、皆さんはよその国のようにお考えになるでしょうが、実は皆さんにも責任があるわけです。皆さんも例外ではないということです。だからこそ、皆さんもそれぞれに責任をもって役割を果たしていただき、そしてよりクリーンな世の中を作ることに貢献していただきたいと思います。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] ダライ・ラマ14世とニコニコ動画記者(七尾功)とのやりとりから視聴- 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv69345575?po=news&ref=news#1:55:01
(山下真史)