来日中のチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が2011年11月7日、東京で開かれた自由報道協会主催の記者会見に出席。会見の模様はニコニコ生放送で中継された。ダライ・ラマ14世は、メディアに向けて、「誠実で、バイアスのかからない目で報道していただくことが大切だ」と語った。
ダライ・ラマ14世は1935年にチベットで生まれた。1959年のチベット動乱の際、インドに亡命。1960年にはインドのダラムサラに移住した。1989年にはノーベル平和賞を受賞している。今回の来日では、和歌山県にある真言宗の総本山・高野山のほか、仙台、福島など東日本大震災の被災地を訪問している。会見で、ダライ・ラマ14世は慈悲や愛情といった"人間としての価値"を強調。また、民主主義社会におけるメディアの役割について「現実を伝える大きな仕事を持っている」と語った上で、
「ゾウのような鼻を持って、現実に対して前からも後ろからもニオイを嗅いでください。私も含めてそうだが、現実が一体どういうものなのかを自分自身でしっかりと認識して、それを一般の方々に伝えることが大切だ。現在、社会や我々の中にある腐敗や偽善などをできるだけ排除、軽減していくことに皆さんが貢献されるべきではないか。当然そのためには、皆さんが誠実で、バイアスのかからない目で報道していただくことが大切だ」
と述べ、日本のメディアに向けてメッセージを贈った。
ダライ・ラマ14世はまた、集まった記者たちの質問に時おり大きな笑いやジェスターを交えながら答えた。ニコニコ動画の七尾功記者が「チベット、中東だけではなく、欧米や日本でも政府などに対する抗議活動・デモ起こり、世界的に激化している。民衆が政府に強い不信感や怒りを持っていることは明らかだ。こうした世界的なうねりは今後どうなっていくとお考えか。政府と民衆との対立を克服するために何が必要か」と質問を投げかけた。
これにダライ・ラマ14世は、
「我々はすべての努力をかけて、倫理や道徳観を進めていかなければならない。これは単に宗教的な考え方を通してだけではなく、一般に、皆さん自身が考えている良識を通して行うことができると思う。良識や、信頼を勝ち取ること、正直であることが友情を育み、そして温かい雰囲気が人を幸せにする」
と力強く語った。