今のままでは困る。何とかしないと―。
そんなふうに考える人が、いかに多いかが察せられる。
道路上での自転車の乗り方である。自転車は車道の左側を走るのが本来のルールだ。例外措置だったはずの歩道走行が今は常態化している。
歩行者の安全を守るため、警察庁が車道走行を徹底させる対策を先日発表してから、読者の声が本紙にも幾つか寄せられた。
凍結路や暗い道を車と自転車で共用すると危ない―。安曇野市の男性は投書を寄せてくれた。
〈迷い道 どの道を行けばいいの?―自転車〉 「やまびこ」欄に載った上水内郡の「リーチ」さんの作品である。
「自転車は車道に」はいいけれど、安心して走れる環境になっていないのではないか―。そんなふうに受け止める人が多い。もっともな見方である。
この問題についての私たちの考えは、昨年11月28日付の社説「自転車 信州を“王国”にしよう」で書いた段階と変わっていない。自転車を歩行者、自動車と並ぶ道路上の「第3の存在」と位置付け、道路環境とマナーの両面から安全対策を強化する―。
警察庁の発表を受け、ここであらためて2点指摘しておきたい。
第一は3者の関係である。強弱からいえば自転車は歩行者と車の間に位置する。歩行者に対しては強者、車には弱者となる。実際、自転車の事故の8割は車との間で起きている。自転車の安全確保もまた急務だ。
自転車に車道を走ってもらうなら対策をしっかり講じる必要がある。自転車レーンの整備にこれまでの何倍ものお金とエネルギーを注ぎたい。レーンが駐停車の車でふさがれないよう、ドライバーの啓発も欠かせない。ハード、ソフト両面からの取り組みだ。
第二は自転車のマナーである。歩道をわが物顔に走る実情を見ていると、歩行者に対し強者であることへの自覚が乏しいと考えざるを得ない。危険な走り方には罰則適用を考えてもいい。
中学生、高校生については学校での安全教育に期待したい。危ない乗り方で歩行者を死傷させた自転車に、何千万円という巨額の賠償を命ずる判決が出ていることも知っておきたい。
交通の安全は規則だけでは保てない。道路上の3者がそれぞれ相手を思いやることが基礎になる。想像力を働かせ、自転車が安心して走れる街にしていこう。信州は格段に住みやすくなるはずだ。