2011年11月5日(土) 東奥日報 社説



■ 規制内容の周知しっかり/自転車交通対策

 警察庁は、自転車の通行が認められている歩道の見直しや取り締まり強化などを柱とした自転車交通の総合対策をまとめ、各都道府県警に通達した。

 自転車利用者のルール・マナー違反が目立つことから、歩道は歩行者が優先であり、自転車は車道通行が原則であることを徹底し、悪質な危険運転については、交通切符(赤切符)の対象とする。通達により、自転車の車道走行を促し、歩行者との事故を減らすのが目的だ。

 ただ、基本ルールや見直しの内容は、自転車利用者が理解しただけでは効果が限られる。車道を走る自転車が増えて邪魔者扱いされたり、危険にさらされることがあってはならない。ドライバーや歩行者にも周知し、社会全体に浸透させることが不可欠だ。

 自転車は手軽で便利な乗り物だ。特に公共交通機関の少ない本県では、積雪期を除き、通勤、通学には欠かせない。健康づくりや趣味で楽しむ人たちも増えている。

 一方で、ルール・マナー違反の利用者が後を絶たない。歩行者がいる歩道を猛スピードで走る。夜間、無灯火で歩道を並走する。携帯電話を使用しながら走行する。雨の日に傘を差しながら走行する。これらは全て指導の対象になる。

 警察庁によると、2010年の自転車絡みの事故は15万1626件発生、交通事故全体の20.9%を占める。県内では昨年、自転車が関わった人身事故は836件。このうち、自転車が加害者となった重傷事故が10件あった。死亡事故はなく、人身事故、重傷事故ともに減少傾向だが、引き続き安全対策には力を入れなければならない。

 本来、自転車は道路交通法では軽車両にあたり、車道の通行が原則だ。歩道の通行は(1)自転車通行可の標識、標示がある(2)70歳以上の高齢者や13歳未満の子ども−などの場合に例外的に認められている。

 通達では、道幅3メートル未満の歩道は原則的に自転車の走行を認めない方向で検討を指示し、走行を許可していた歩道も見直しを進める。今後は、自転車通行ができる歩道を減らす方針だ。

 県内の対応について、県警交通部交通企画課の小田桐勝行次長は「自転車の規制も含め、さまざまな課題がある。今後、道路管理者を交えて協議する。基本的には、年明け以降に方針を示す」と説明する。

 県内には幅3メートル以上の歩道は限られている。道幅の狭い車道も多い。自転車通行が可能な歩道の見直しでは、地域の実情に応じた判断が必要だ。方針決定後は速やかな情報提供を求めたい。歩行者、自転車、自動車が安全に通行するために、今度こそルールを市民の間に定着させたい。

 さらに、県内は冬期間、積雪のため歩道が狭くなり、歩行者と車が危険な状態で行き交うことになる。今回の通達が自転車の走行を見直すだけでなく、安全な道路利用の在り方を具体的に考えるきっかけになることを期待したい。


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