涼しい季節になった。自転車をこいで心地よい汗を流す人も多いだろう。一方で、歩道上でスピードを出したり、車の間をすり抜ける自転車に驚かされることもある。
全国的な自転車事故の増加を受け、警察庁は、車道を走る原則の徹底や道路交通法の取り締まり強化を軸にした総合対策をまとめた。
悪質で危険な運転については交通切符を切る対象とするよう、都道府県警に指示した。取り締まりに本腰を入れねばならないほど、死傷事故が後を絶たず、ルール違反の乗り方が横行しているのだ。
自転車は「軽車両」に分類される。車道の左側を走らねばならず、歩道を走れるのは標識で認められた場所だけだ。
健康づくりに適し、地球環境に優しい乗り物として、県内でも自転車を通勤・通学に使う人が増えているが、自転車専用通行帯などの整備は遅れている。
警察庁の通達は、走行を認めていた歩道の幅を2メートルから3メートルに制約する方向だ。実際の運用は各県警に任されるが、社会全体で自転車の走行ルールを行き渡らせ、安全を確保する交通教育を深めたい。
県内の道路で幅3メートルの歩道を伴う道路がどれだけあるだろうか。灰じんに帰した沖縄戦の後、計画的な道路整備はままならなかった。歩道さえない道路を路線バスが走る地域もあり、自転車が走るスペースをふさぐ駐車車両も目立つ。
2010年の自転車絡みの事故は全国で15万1626件で交通事故全体の2割を占める。乗車中の死者は500人弱で推移している。
県内は445件発生し、対自動車の事故は425件(95%)あり、全国の84%を11ポイント上回る。
今年4月には、那覇市内でトラックが横断歩道を自転車で渡っていた専門学校生をはね、死亡させる事故も起きた。自転車専用レーンなどの整備が遅れている分、車と接触する割合が高いのではないか。
取り締まり強化はやむを得ないが、自転車と歩行者をしっかり分け、自転車が安心して車道を走れる環境整備を並行して進めることが欠かせない。警察だけでなく、国や県、市町村も努力してほしい。
自転車の保険加入も必要だ。人をはねて死傷させた自転車利用者に5千万円以上の賠償命令が出た民事訴訟も複数ある。免許の要らない自転車の手軽さが安全軽視につながらないよう手を尽くしたい。
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