自転車は手軽で便利な乗り物だが、一つ間違えば「走る凶器」にもなる。警察庁はルールやマナーを無視して歩道を走る自転車が後を絶たず事故も多発しているとして、自転車総合対策をまとめた。
柱は自転車の車道通行の原則徹底や取り締まりの強化、自転車専用道の拡充などである。自転車の走りやすい街は、人も暮らしやすいはずだ。事故やトラブルの防止につながるよう成果を期待したい。
健康や環境への配慮から自転車の利用者は増えている。それとともに特に歩行者との事故が増加している。背景の一つに自転車に関するルールの分かりにくさがあるといわれる。道交法では「軽車両」として位置付けられ、車道走行が原則になっている。ただ、歩道を走れる例外がいくつかある。
広い歩道では自転車走行が認められているケースがある。70歳以上の高齢者や13歳未満の子どもなど車道を走るのが危険な人や、車道や交通の状況から安全確保のためやむを得ない場合も例外になっている。
こういうルールを熟知している人は少ないのではないか。一方で車道を走っていたら、トラックに巻き込まれそうになるなど「車道を走るのは怖い」という自転車利用者の声は多い。
ルール違反が目立つのは、ルールの周知不足や自転車の走行環境が整備されていない問題も影響しているだろう。
これまで自転車の軽微な違反は見過ごされることもあったが、警察庁は今後、指導・警告や摘発を強化する。
現場での対応に加え、学校や地域などでルールやマナーの啓発強化も欠かせまい。自転車専用道の早急な拡充は物理的に難しい面もあるが、可能な所から重点的に進める必要がある。