'11/10/27
自転車の走行ルール まず周知、マナーも大切
秋風に吹かれて自転車をこぐのは心地よい。もちろん安全のためルールとマナーを守って。
警察庁が道交法違反の取り締まり強化を盛り込んだ自転車総合対策を打ち出した。
自転車は軽車両だから、車道を走るのが原則である。それがほとんど忘れられていないか。
歩道を走るのは、(1)自転車走行可の標識がある(2)高齢者や子どもが運転する(3)交通状況により車道を走るのが危険―といった場合に例外として認められている。
それなのに、人の間を縫うような走行が後を絶たず、歩行者との事故も増加傾向が続く。
警察がルールを守るよう指導・警告を強め、悪質な走行は交通切符で摘発するという厳しい方針を決めた。やむを得まい。
走行を認める歩道の幅も、これまでの2メートルから3メートルにと対象を絞る方向だ。
実際の運用は各県警に任される。まずは変更点を含めてルールを周知徹底してもらいたい。
道路標識をもっと分かりやすくし、パトロールなどあらゆる機会に自転車の利用者に呼び掛けてはどうか。その上で指導や警告を強める場合も、地域の交通事情を十分に考慮することが欠かせない。
マナーも大切だ。とりわけ歩行者に決して迷惑を掛けてはならない。自分も周囲も危ないと思ったら自転車から降り、押して歩く。これが安全確保の大前提である。
一方で自転車の車道走行を徹底すれば、かえって危険ではとの懸念も出ている。
実際、昨年1年間に全国で起きた自転車事故のうち8割余りは相手が自動車だった。
自転車と歩行者、自動車にそれぞれ別の道を用意すれば最も安全なのは言うまでもない。
警察庁と国土交通省は共同で自転車専用道の整備、車道の左端への専用レーン設置などを促すため、モデル地区を指定してきた。今回の総合対策でもインフラ整備の必要性を強調している。
しかし目標にはまだ届いていない。街路樹を管理する自治体や、駐停車場を必要とする道路周辺の事業所との調整に手間取るケースが少なくなさそうだ。
専用道の建設が難しいなら、取り付けやすい箇所から専用レーンを広げるべきである。交差点の停止線や信号機を自転車と自動車で区分けするといった具体策の実行が急がれる。
周囲の交通状況をみながら、時間帯により自転車を一方通行にするなど、関係者がもっと知恵を絞る必要があろう。
地球環境に優しく、運転免許が要らない自転車。健康増進や企業でのコスト削減にもつながるとあって普及している。東日本大震災が起きてからは自転車通勤がいっそう注目されるようになった。
日本は普及率でオランダ、ドイツ、北欧諸国に次ぐ自転車大国である。利用者のマナーもハード面の整備もそれにふさわしいレベルと胸を張れるようになりたい。