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[30323] 【習作】マブラヴオルタネイティヴ-ちーと戦記(Muv-Luv、オリ主)
Name: かのしし◆147cd227 ID:72338012
Date: 2011/11/07 17:59
はじめまして、かのししと申します。
本作品はちーたー氏の二次小説[8836] 【マブラヴ・ACFA・オリ主・ネタ】ちーとはじめました【チラ裏より移転】を読み、その影響を受けて書き始めたものです。
執筆に当たり、同作品の"チートシステム"を参考にさせていただきました。

クロス作品は、今のところゾイドシリーズだけです。
他の作品をクロスさせた場合(というよりさせる予定)は順次ここに書き足していきたいと思います。

<以下注意書き>

・オリ主
・ちーと
・独自設定&独自解釈
・ご都合主義万歳
・文章力? 何それおいしいの?

・独自設定
大事なことなので二回言いました。特にゾイド。というより大型ゾイド。
ゴジュラスが思ったよりも小さいことが判明……orz
いや、だって戦術機より少し大きいぐらいって……
という訳で出す場合は適当な理由をつけて、もしくは何の理由もなく大型化するかもしれません。
そこはイメージ重視ということで……(^ ^;)

これらが許せないという人はゴメンナサイ。
あなたにあった作品を見つけられることを祈っております。

最後に、関係する各作品の製作者様、チートシステム考案者のちーたー氏、そしてこのような作品を読んで下さる読者の皆様に感謝いたします。
この作品が読者の皆様の暇つぶしにでもなれば幸いです。

2011.10.30 プロローグと第一話投稿
2011.10.31 題名に【習作】を追加、誤字修正
2011.11.01 第二話投稿
2011.11.03 第三話投稿、文章修正
2011.11.07 一部修正(ルールの一部を変更。話の流れに変化はありません)



[30323] プロローグ
Name: かのしし◆147cd227 ID:72338012
Date: 2011/11/07 17:58
「あなたは異世界救援部隊の指揮官に選ばれました」

深夜。いつも通りにパソコンをいじっていた俺はスピーカーから流れる声を聞いた。

「ん? 変なサイトでも開いちまったか?」

ほんの一瞬だけスピーカーへと目をやりすぐさま画面へと視線を戻す。
だが、その画面は先ほどまで俺が見ていたものとはがらりと変わり、白い画面に流麗な飾り文字で
『あなたは異世界救援部隊の指揮官に選ばれました。』と書かれ、
そのすぐそばには『神』という判子まで描いてある。
さらに立ちの悪いことに、どんな操作をしようとも受け付けない。
電源ボタンの長押しにすら一切の反応がない。

「はぁ~~……ツいてないな……」

どうやら立ちの悪いいたずらに引っかかったようだ。
俺は中のデータの心配をしつつ、コンセントを抜こうとして気付いた。
パソコンデスク以外の部屋の配置ががらりと変わっているのだ。
さらに言えば、パソコンデスクの形も、パソコンの色までもが変わっている。
気がつけば俺は扉も窓もなくなった白一色の部屋の真ん中に座っていた。

「これは夢、白一色、これは夢、白一色、これは夢……」

あまりの出来事に茫然自失しながらそんなことを呟いてみる。
そのうちに白一色ってなんとなく麻雀の役にありそうだよななどと考え始める。

「……天地創世(ビギニングオブザコスモス)!!!!」

そして復活。ああ、麻雀やりてぇ……
と、そこで目の前に妙齢の女性が立っていることにようやく気付いた。

「適応能力の不足、いきなり奇声を発する、状況把握能力の欠如……マイナス30000ポイントね」

綺麗な声だと思う。とはいえ第一声がそれ。
こちらとしては現状が良く判らない。考えるともなく間抜けな声が出る。

「……はぁ……?」

「危機管理能力の不足。マイナス10000ポイント」

先ほどから、えらい勢いでポイントが引かれているが、一体何のことだろうか。
この唐突な状況のせいでいまいち頭が働いていない。

「さて、この部屋に見覚え……というよりは"読み覚え"はない?」

再び唐突な質問。俺は頭の引き出しを探し回り、ようやくひとつの答えにたどり着く。

「"ちーとはじめました"?」

「時間切れ。マイナス10000ポイント。まぁでもそれで合ってるわ。あなたにもマブラヴの世界の救援に行って貰う」

その一言に目の前が暗くなりそうだった。
これが"あの"チートシステムだとしたら、俺の持ち点はかなりひどいことになっている。
つまりそれは否応なく死に近づいているということに他ならないのだ。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、目の前の女性、恐らく神様は飄々とした口調で続けた。

「知ってるんなら話は早いわ。変更点も幾つかあるけどまぁおおむねはあんな感じよ。
どうしても、細かなところパソコンのヘルプファイルを見てもらえれば分かるわ。
あ、勿論見てる間も時間はどんどん減っていくからそこらへんは注意ね。
まぁど~~~してもって言うなら10000ポイントと引き換えに私の口から説明しても良いけど……」

「いえ、結構です」

冗談じゃない、これ以上ポイントを減らされたらマジで命に関わってくる。
というか、この神様は本当にあの世界を救う気があるのだろうか?

「そう? それじゃあ頑張って……
あ、言い忘れてたけど持ち点が普通の半分だから時間もそれに合わせて短くしておいたから。
バイバ~イ!」

それだけを言い残し、自称神様の姿は煙のように掻き消える。
パソコンの画面にはシミュレーションゲームのような画面が立ち上がり、
右上には割りと大き目の文字で『残り時間 11:42:18』と表示されていた。
さらにその上には今の俺の持ち点50000ポイントの表示。時間もなければポイントもない。
通常の半分、2次創作の主人公達のおよそ3分の1。これは致命的だ、本来の意味でも。

「とりあえず、ヘルプファイル……だったよな」

まず真っ先に行うべきはルールの確認。
少ないポイントをできる限り効率よく使うためにも、だ。

………

……



たっぷりと時間をかけて俺はルールブックとも言うべきヘルプファイルを読破した。
画面に向かい合って延々と文字を読み続けたせいで目がだいぶ疲れている。
とはいえ、目を通しておいて良かった。割と重要な変更点が結構あった。
自分で整理するためにも、俺はパソコンの前においてあったメモ帳に挙げていく。

・設定のやり直しでポイントを消費することはない。また、タイマーをとめることはできない。

・BETAの残骸と引き換えに手に入る"クレート"と同時に、そのBETAの種類に合わせたポイントが手に入る。

・神様印のクレートプラントの使用の有無が選べる。使用しない場合はBETAを"倒した時点で"ポイントのみが手に入る。
 この場合クレートは手に入らないがポイントのレートはクレートプラント使用時よりも優遇される。
 このとき、BETAを倒すのは自身か自身の呼び出した仲間でなければならない。自身の呼び出した無人機はこれに含む。
 自身の呼び出した兵器をMuv-Luvの世界の人間が操っている場合はカウントされない。

・最初に使用しないことを選んだ場合でも後からクレートプラントを設置(ポイントが必要)すればその時点で設定が変わる。
 逆に最初に使用するを選んだ場合には全てのクレートプラントを撤去すれば設定が変わる。
 ただしクレートプラントを撤去するためにはクレートプラントが自身の管理下に置かれている必要がある。

・クレートプラントなしの状態で倒したBETAの残骸をクレートプラントに運び込んでもクレートやポイントにはならない。

・この部屋での選択に限り、最低限の基地施設をタダでもらうことができる。また、もらった基地施設をさらにポイントで強化することも可能。
 ただし、初期のままでは人員や無人作業機械は付属せず、防衛用の兵器も自動では稼動しない。防衛用兵器の遠隔操作は可能。
 この場合もクレートプラントの有無を選択でき、基地施設はもらうがクレートプラントは無しという選択も可能。
 逆に基地施設は貰わないがクレートプラントは貰うという選択はできない。

・クレートプラントはポイント消費で増やすことが可能。

・開始時に基地を持たない場合、ポイント管理用の端末は携帯型になる。開始時に基地を持つ場合はポイント、クレート用の端末はパソコン型になる。
 これらの端末は自身の操作しか受け付けない。
 必要であればポイントを消費することで携帯型、パソコン型を問わず数を増やすことが可能。
 この場合、ポイントは一括で管理されるが、クレートは各集積所ごとに管理される。

・開始時点で当面の戦闘用の物資を貰う事ができる。
 また、物資は手に入れた過程に関わらず、基地がある場合には基地内の倉庫に、基地がない場合には端末内に保存される。
 端末内の物資は自身の任意の場所に任意の量ずつ呼び出すことができる。

・ポイントの消費による自身の強化と仲間を連れて行くというのを同時に行うことができる。
 ただし、衛士としての基本能力や知識は付与されず、必要であればポイントを消費して獲得しなければならない。
 また、初期機体も別途ポイントで購入する必要がある。

・自身の強化に必要なポイント数があらかじめ決まっている。

・超常の能力を得た場合、Muv-Luv世界での経歴を設定することはできない。
 また、Muv-Luv世界での経歴を設定した場合超常の能力を得ることはできない。

・Muv-Luv世界での経歴を設定する場合に絶大な権力を握る存在となることは可能。
 ただし、介入開始時点での世界情勢や、介入開始時点で本来行われているはずの政策や作戦は変化しない。
 例えば政威大将軍として介入を開始することもできるが、その場合の経歴にその立場を利用して彩峰萩閣を助けたなどと設定することはできない。
 また、政威大将軍であるにも関わらず各地を転戦しているなどあまりに突拍子もない設定を行うことはできない。

・各設定にはこの部屋でしか選べない項目が存在する。(見出しが青で表示される)
 
・人物、兵器は架空、実在を問わず編入可能。

・呼び出した人物の搭乗できる機体は個々人のスキルにより決定。ただし後からポイント消費で他の作品の機体に乗ることができる様に変更可能。
 また、Muv-Luvの世界の人間は機種転換訓練によりどんな機体にも乗ることができる。

・呼び出した人物が死亡した場合、同じ人物をもう一度呼び出すことはできない。
 ただし、その人物が原作においてクローンその他の理由で同一の人物が存在しうる可能性がある場合にはこの限りではない。
 その場合において、この世界での全ての記憶、経験及びポイント消費によって得たスキル等は全て無効となる。
 原作中の記憶に関しても抹消されるが、特殊な理由により原作内において死亡した人物と同一の記憶を引き継ぐことができる可能性がある場合についてはこの限りではない。

・技術開発に必要なポイント量が一律1000ポイントではなく、技術ごとにかなりの幅がある。

・この部屋を除き、兵器、物資はクレートを、人的資源、能力、基地設備等はポイントを消費することで手に入れる。

・1000ポイントに付きクレート500tと交換できるが クレートをポイントに交換することは不可能。
 ただし、この部屋でのみ、1ポイントが1t分のクレートの代わりになる。("交換できる"ではない)
 クレートプラントを使用しない場合はこの部屋を出た後でも1ポイントが1t分のクレートの代わりになる。

・最初に選べる機体は通常兵器とNCFS-Xのみ。そのほかの機体を生産するには機体ごとに必要な技術をそろえる必要がある。

というもの。得に最後の項目が鬼畜仕様である。NCFS-XとはF-4の試作機、いやむしろ実験機ともいえる機体。
レーザー蒸散塗膜なしの紙のような装甲に跳躍ユニットを持たない劣悪な機動性、17mmチェーンガンの頼りない火力という3拍子そろった兵器だ。
これに乗って戦場に突っ込むにはかなり勇気がいる。というか絶対にやりたくない。
ざっと見ただけでも変更点はかなり多い。本来のチートシステムよりもさらにゲームっぽくなった印象だ。
さらに言えば、制約が大分ゆるくなっている。最早別物じゃあないのかと突っ込みたい。

さて、どうしたものか。俺はタイマーの残り時間を気にしながらも、山ほど並べられた項目に目を通していく。

「……不老不死が50000ポイント、人類もしくはBETAの攻撃のみ無効は25000ポイント、一度だけ復活なら12500ポイント……」

全て青い見出しで書かれた項目だ。
表記が変わっただけで今の所持ポイントの割合で求められるということは変わっていないらしい。
気がつけばタイマーは残り時間が半分を切っていることを知らせていた。

「さて、どうしたもんか……」

俺はマウスをクリックする音だけが響く、静かな白い部屋の中で自分のこの先について考えをまとめていくのだった。




[30323] 第一話 初期設定
Name: かのしし◆147cd227 ID:72338012
Date: 2011/11/07 09:17
「……よし、決めた」

タイマーの残りが1時間を切ったところで俺はようやく考えをまとめ終えた。
いろいろと組み合わせを試してみての結果だ。俺は早速設定を始めていく。
まずは技術開発。俺は手早くプルダウンメニューを引っ張り出し、必要なものを片っ端からクリックしていく。

2脚歩行技術の研究(500ポイント):2脚での機動に関する技術。2脚歩行技術を開発。
4脚歩行技術の研究(500ポイント):4脚での機動に関する技術。4脚歩行技術を開発。
大型バッテリーの開発(500ポイント):大型兵器の動力源となるバッテリーの技術。低容量バッテリーを開発。
大型燃料電池の開発(500ポイント):大型兵器の主発電機となる燃料電池の技術。マグネシウム燃料電池を開発。
戦術機用管制ユニットの開発(500ポイント):戦術機の挙動を制御するコックピット周りの技術。戦術機用管制ユニットを開発。
戦術機用OSの開発(500ポイント):戦術機用を動かすためのOSの技術。初期型戦術機用OSを開発。
レーザー蒸散塗膜の開発(500ポイント):光線族種の攻撃を防ぐための対レーザー技術。初期型レーザー蒸散塗膜を開発。
跳躍ユニットの開発(500ポイント):戦術機に3次元の機動を付与する跳躍ユニットに関する技術。初期型跳躍ユニットを開発。
戦術機用初期装備(500ポイント):戦術機の武装に関する技術。火力はイマイチ。戦術機初期装備を開発。
防衛用AIの開発(500ポイント):拠点防衛用の"設置式"砲台を管理するAIのための技術。防衛用AIを開発。
作業用AIの開発(500ポイント):一般的な作業を無人で行ってくれるAI技術。作業用AIを開発。

『11個の技術を開発します。必要なポイントは5500ポイントですよろしいですか?』

俺は迷わず『はい』をクリックする。

『11個の技術を開発しました。残りポイントは44500ポイントです。』

その直後に幾つかの新しいポップアップが立ち上がる。

『NEW! 基地の防衛設備が自律稼動するようになりました!』

『NEW! 基地所属の作業用機械が自律稼動するようになりました!』

『NEW! 各種兵器にレーザー蒸散塗膜が施されます。これにより光線級の最大出力レーザー照射を1秒間だけ防ぐことができます。』

『NEW! 新しい兵器の生産が可能になりました!』

F-4:人類初の戦術機。開発から30年近くたった今でもマイナーチェンジを繰り返して各国で使われるほどの傑作機。
    ただし、この機体は文字通り最初期の機体であり戦力不足は否めない。
    要:2脚歩行技術・低容量バッテリー・マグネシウム燃料電池・戦術機用管制ユニット・初期型戦術機用OS・初期型レーザー蒸散塗膜・初期型跳躍ユニット

作業用自律ロボット:円筒形の本体に4脚を備えた、基地内外での整備作業を含む各種作業を自動で行ってくれる機械。工兵や整備兵の代わりに。要:4脚歩行技術・作業用AI

雑務用自律ロボット:円筒形の本体に4脚を備えた、基地内の炊事や掃除などの雑務を自動で行ってくれる機械。一家に一台欲しくなる性能。要:4脚歩行技術・作業用AI

固定式砲台コンテナ:自律AIを内蔵したコンテナ。設置すると展開し自動で敵を識別、攻撃を行う。サイズは戦術機用補給コンテナと同規格で武装は戦術機用の兵装と供用。
          いざとなれば取り外して戦術機が使うこともできる。戦術機用突撃砲2門をを平行につなげ、その間に敵を識別するためのセンサーが取り付けられた形状をしている。
          仰角70度、俯角30度で周囲360度までをカバーできる。要:戦術機用初期装備・防衛用AI

『NEW! 新しい武器の生産が可能になりました!』

戦術機用初期装備:最初期に開発された戦術機用装備。105mm滑腔砲、20mm機関砲、近接戦闘用長刀、近接戦闘用短刀、及びその各種弾薬が生産可能になる。
         要:戦術機用初期装備

『NEW! 新しい弾薬が生産可能になりました。』

『NEW! 新しい技術を開発できるようになりました!』

5500ポイントも消費して作れたモノがこれだけというのはなかなかに厳しいものがある。
しかも、自律で動いてくれるのは固定砲台と防衛施設のみ。戦術機を動かすには人を呼び出す必要がある。

とはいえ、それは今回は見送る。生憎とそこまでポイントを使える余裕はない。
モブ兵士が一人当たり200ポイント。洗脳済みではあるが、あくまで歩兵、それも新兵レベルだ。
整備兵にするならさらに一人当たり300ポイント。
通常兵器の適正を加えるなら一人一種類当たり500ポイント。
戦術機の適正を加えるなら一人当たり2000ポイント。
そして適正を加えても新兵なのは変わらない。もし1個中隊、自分を抜いて11機をこいつらで構成するとそれだけで24200ポイント。
それだけのポイントを払って新平を抱え込む余裕などありはしない。

「とりあえず自分の能力だけは上げておくけどな……」

そういいながら兵士一覧を呼び出し、『渡瀬 鳳志(わたらせ たかし)』という項目を選ぶ。
言わずもがな俺自身の名前だ。そしてそのまま『スキルの習得』というのを選ぶ。
現在の所持スキルはひとつだけ。

端末操作技能(特):チートシステムを操る技能。端末を操作し、ポイントやクレートの使用、生産ラインの管理などが可能。

総指揮官:部隊の総指揮官。どんな規模の部隊でも指揮できる。指揮能力の高さは別問題。

これだけでは流石にどうしようもないので、追加でスキルを選んでいく。

衛士(2000ポイント):戦術機を操る才能。戦術機に分類される機体に搭乗可能。
言語技能L4(5000ポイント):言語を操る能力。本来の使用言語に加えて地球上の全ての言語を使いこなせるようになる。

『渡瀬 鳳志に2つのスキルを付与します。必要なポイントは7000ポイントです。よろしいですか?』

少し迷った末に『はい』をクリック。あらかじめ決めていたとはいえやはり迷いを完全に振り切るまでには至らない。
言語技能はもっとレベルが低くても十分な気がするが、それでも言語を気にしなくてよくなるのは心強い。

『渡瀬 鳳志に2つのスキルを付与しました。残りポイントは37500ポイントです。』

さて、これで俺は晴れて戦術機に乗れるようになったのだが、生憎これは衛士として最低限の技術を身につけたに過ぎない。
いわば新兵と同じ状態。尤もこれは俺自身が戦術機どころか兵器にも乗ったことがないからこそで、
他のキャラクターを呼び出し、機種転換をさせた場合はもともとの乗っていた兵器と同程度の熟練度が保障されるらしい。
なんとも便利なシステムだが、自分に使えないのであれば意味はない。俺はその情報を頭の片隅に追いやり、別のタブを開いた。
そこには青い字で『事前研修の実施』と書かれていた。
要は神様印の教育プログラムを開始前に受けることができるというオプション。
1年当たり1000ポイントで受けることができ、実行中でも一切時間は経過しない。

「10年もやれば十分だろ」

ということで機動兵器操縦体験プログラムを10年分選択し10000ポイント。これで残りは27500ポイント。

「……次は兵器だな。」

そういいながら機動兵器のタブを選択するとそこにはNCAF-XとF-4(初期型)の2種類。
いずれはこの欄を埋め尽くしたいなどと考えながらF-4を選択し、予備機を含め3機を呼び出す。
クレートなら1機当たり35t。それがそのままポイント数になるため3機分で計105ポイント。
一度生産可能になってしまえば後は兵器重量の差でクレートの消費量が決まる。
そのおかげで大してポイントを消費しないのはありがたい。戦術機に関して言えば今後、世代が進み機体が軽くなるにつれ安価に製造できるのだ。

とりあえずは雑務用自律ロボットを数台購入。これで飯の心配はなくなった。
さらにBETAの残骸回収用にトラックやブルドーザー、ショベルカーなどを購入。
整備兵の代わりとして整備用自律ロボットを必要なだけ購入する。さらには地雷敷設用に地雷敷設車とヘリを導入し対人、対戦車地雷を大量に購入。
固定式砲台コンテナと補給用コンテナも相当数を購入し、敷設作業にはトラッククレーンを当てる。
地雷の敷設や防衛兵器の設置は"作業"に含まれるらしく自律AIで作業を行ってくれる。

ここまででさらに7375ポイントを消費し、戦術機と合わせて7480ポイント。残りは20020ポイント。
さらに残ったポイントで開始日時を選択する。開始日時は2001年 10月 22日。ここを基点に1年ずらすごとに5000ポイント。
やけに安い気もするが、もしかしたら初期ポイントに対する割合で決められているのかもしれない。
とりあえず、戦力を整えるための時間稼ぎにポイントを費やす。
開始日時が3年早くなり1998年となり、残りは5020ポイント。

開始場所はBETA支配域と人類の支配域が0ポイント。
そこから人類の支配区域にするならば安全度のほか、さまざまな要素に応じて最大で10000ポイントを消費する。
ここまで、残した5000ポイントを消費し、日本国内の新潟付近を開始地点に選ぶつもりだ。

BETAの上陸を帝国軍が迎撃するのを待ち、その後適当な理由をつけて死骸だけを回収させてもらう。
理由なんてものは適当でいい。研究用に大量のBETAの死骸が必要になったなどで十分だ。
まずそうならば、とりあえず軍機ということにしてしまえばいい。
無論時間がたてば気付かれるだろうが、少なくとも基地に運ぶまでの間、誤魔化せればいいのだから。
名付けて、『ハイエナ作戦』。非常に情けないがこればっかりは仕方がない。

だが、俺は肝心なことを忘れていた。
俺が開始地点を選ぼうとしたまさにそのとき、いきなり画面が暗転し、『Muv-Luvの世界へようこそ』という表示が現れる。
時間切れ。俺がそのことを認識するよりも早く、俺の意識は光の中へと消えていった。

………

……



つぎに目を開けたとき、俺は直立不動で整列していた。
一瞬何が起きたのか分からなかったが、すぐさま先ほどの設定を思い出す。体験教育プログラムが発動したらしい。

「口でクソたれる前と後にサーと言え!!」

「「「サー イエッサー!!!」」」

「ふざけるな! 大声出せ! タマ落としたかこの蛆虫共!!」

「「「サー!! イエッサー!!!!!」」」

「オイ貴様、一人だけ声も出さないとはいい度胸だな!? 」

この雰囲気はヤバイ。だがそんなことを考えている間にも軍曹殿は近づいてくる。
そして身構えるまもなくボディーブローをいただく。口から人のものとは思えぬような声が漏れる。
むしろ、一緒に腹の中のものまで漏れてしまいそうな一撃。

「黄色いサルが! じっくりかわいがってやる! 泣いたり笑ったり出来なくしてやる! さっさと立て!!」

その後も軍曹殿の怒涛の罵声は続いた。何度も何度も大声を出し喉が潰れそうになる。
そんな中、咳き込みながらも叫び続け、ようやく軍曹殿のお許しを得ることができたのだった。

………

……



軍曹殿に目をつけられながらも訓練兵としての1年間を過ごし、その後は晴れて実戦となる。
いや、そもそもが架空の体験なので実戦という言い方は適切ではないのかもしれないが。

<<昨日も大規模なBETAの襲撃がなかったか?>>

<<いつものことです>>

<<おとといにはハイヴの攻略戦をやらなかったか?>>

<<過去のことは忘れましょう>>

<<一昨昨日はクーデターで大規模な対人戦をやった記憶があるんだが?>>

<<だから忘れましょうって。ほら、もうすぐ師団規模のBETA群と接敵しますよ>>

<<はぁ~……どうせまた、兵士級や闘士級がいなくて、その分戦車級やら光線級がうじゃうじゃいるんだろ?>>

<<兵士級や闘士級に会いたいんなら歩兵用の体験プログラムにいかれたらどうですか? 厭というほど会えますよ?>>

<<いや、遠慮しておく。まだこっちのプログラムも5年残っているしな…… お、敵影視認! ホーク01、オープンコンバット!!>>

………

……



「やっと終わった……」

俺は、暗転した世界の中、ようやくの思いでプログラムを終了した。
これでようやく10年にも及ぶ長い戦いが幕を閉じたというわけだ。
世界が光に包まれ、視界が黒から白へと変わってゆく。これでようやくもとの世界に戻れ……何か忘れているような。
だが、その答えよりも早く、俺はようやくの思いでMuv-Luvの世界へと送り込まれたのだった。



[30323] 第二話 四面楚歌
Name: かのしし◆147cd227 ID:72338012
Date: 2011/11/07 10:30
目を覚ませばいつも通りの自分の部屋だったなどという奇跡が起こりうるわけもなく。
むしろ、今時分のおかれている状況自体が奇跡見たいなものだが。
窓の外を見ると綺麗な雪景色。延々とまっ平らな雪原が続いていた。
ここに来て俺はMuv-Luvの世界に送り込まれてたことをようやく思い出した。
そしてさらには、開始地点を決定し損ねたことも。

俺は慌てて端末を操作し現在の基地の場所を確認する。
場所はオネガ湖湖上。湖上ということは、この基地は湖面に張った氷の上に作られているらしい。
今が10月の終わりであることを考えれば、ずいぶん高緯度の場所なのだろう。
この世界ではBETAによる気候の変化があったはずだがそれを考えても日本ということはまずない。
俺は画面に映された地図を順に拡大していく。

「オワタ……」

茫然自失となりそうなところを、何とか踏みとどまり端末へと向かった。
ソ連領カレリア共和国、オネガ湖。
端末から呼び出した資料によれば、BETAによる気候変動により寒冷化が進んでいるものの夏になれば氷は解けてなくなってしまうらしい。
つまり、来年の夏を迎えれば、いやそこまで時間がかからずとも、夏が近付き、氷が薄くなれば基地ごと湖の底に沈む羽目になる。
さらに問題なのはその立地で、東に250kmほどの場所にはヴェリスクハイヴが、南西にはミンスクハイヴが、北西にはロヴァニエミハイヴが構えている。
誰がいるわけでもないのに、平静を装いつつ、震える手で、現在の基地の戦力を確認する。
装備は殆どが非武装の作業用重機で、戦力に数えられるものといえば防衛用に購入しておいた対戦車地雷と砲台コンテナくらい。
多少数があるとはいえ、その程度の装備でこんな敵陣の真っ只中に留まれるなら、この世界の人類も苦戦などしないだろう。

「終わった……生き延びれる未来が全く見えてこねぇ……」

と、そこで画面の端に点滅する封筒マークが目に入った。
嫌な事というのは続くものだ。俺は、十分に心の準備をしてから、そのボタンをクリックする。
だが、そこに書かれていたことは、俺の予想に反し、今の俺にとってはかなりありがたいものだった。
普通のパソコンとなんら変わりないメールブラウザが立ち上がり、一通のメールを表示する。
差出人は神様で、あて先は俺。
内容を要約すると、流石に時間カットはやりすぎたので、減らした時間1時間につき、5000ポイントを進呈するというものだった。
予想外のところで12時間×5000ポイントで60000ポイントが手に入ったわけだ。
とにかく、このポイントを使って何とか生き延びる方法を探さなければならない。しかもできる限り早急に、だ。

「とりあえず、湖の周りに3方向に分けて地雷と固定砲台を設置」

今でこそBETAの影すら見えないが、仮にもここはBETAの支配地域なのだ。
できることは早めにやっておかないと、BETAに侵攻されてからでは手遅れになりかねない。
窓ガラス越しに作業用の重機たちが一斉に動き出すのを確認してから、俺は再び端末へと向き直る。

「使いそびれたポイントも含めて65020ポイントか……とりあえず20000ポイントをクレートに変換っと」

技術を進めることも重要だが、そればかりに気をとられて肝心の兵器が生産できませんでした、では意味がない。
とりあえずこれで10000tのクレートを確保した訳だ。

「次は技術開発か……」

そう呟きながら、技術開発に並ぶ項目たちを流し読みしていく。
開始前に一度見たとはいえ、10年も(主観時間で)経つと忘れている項目も多々ある。
端末を前に、しばらく考える。

「物量に対抗するには物量。とはいえ今回はそれが望めないからな……戦闘用AIを開発して戦力を補うにしてもせめてもう一押しがあれば……」

ぶつぶつと呟きながら、画面をスクロールしていく。

「せめて奇襲でもかけられれば良いんだけどな……こんなにだだっ広い平原じゃそもそも隠れる場所もないからな……」

対BETA戦で鍵となるのはその物量と光線族種の存在だ。
光線属種によって長距離砲撃や航空機といったアウトレンジからの攻撃が防がれ、結果としてあの馬鹿みたいな物量と真正面からぶつかり合う羽目になる。
だがそれは裏を返せば光線属種さえ排除できれば一方的に勝ちを収めることも不可能ではないといえる。

「問題は如何にして光線属種を潰すか……だな。水中戦用の機体でも作って足元から奇襲でも仕掛けるか?」

自分で呟いておきながら、馬鹿馬鹿しいとはき捨てる。無駄に氷を割れば基地ごと湖に沈みかねない上、そもそも其処まで近付かれた時点で負け戦だ。
いくら航空戦力を導入しようと、基地までBETAがたどり着くのを防ぐことは難しいだろう。

「……いや、待てよ……足元に隠れるという発想は悪くないかもしれないぞ……」

俺はようやくポイントの使い道を決め、早速端末へと向き合う。
後はどれだけポイントがかかるかが問題だ。

多脚歩行技術の研究(1000ポイント):5脚以上の足を用いての機動に関する技術。多脚歩行技術を開発。要:4脚歩行技術
発展型車輪技術の研究(500ポイント):身近な移動システムである車輪の研究。頑丈な車輪を作れるようになる。発展型車輪技術を開発する。
金属生命体についての研究(1000ポイント):金属元素を基とした生命体についての研究を行う。金属生命体進化論を開発する。
昆虫型ゾイド制御法の研究(3000ポイント):昆虫型ゾイドを制御する方法について研究を行う。昆虫型ゾイド用OSを開発する。要:金属生命体進化論
レッゲル生成技術の研究(1500ポイント):ゾイドコアを生存させるために必要な物質である"レッゲル"の生成について研究を行う。レッゲル生成技術を開発する。要:金属生命体進化論
ゾイドコアの研究1(5000ポイント):戦闘用ゾイドの核となるゾイドコアの研究を行う。小型ゾイドコアを開発する。要:金属生命体進化論・レッゲル生成技術
戦闘用AIの開発(2000ポイント):戦闘を無人で行う為のAIを研究する。ただし、戦闘機動は単調。戦闘用AIを開発。要:防衛用AI・作業用AI
レーザー蒸散塗膜技術の向上1(1000ポイント):レーザー蒸散塗膜の性能を向上させる。低性能レーザー蒸散塗膜を開発する。要:初期型レーザー蒸散塗膜

これらを選択し、確定。次々と表れるポップアップを確認していく。

『NEW! 新しい基地施設を建造可能になりました!』

『NEW! 車両の積載重量が強化されます! 最大積載重量が1.5倍になります! ※現在基地内に無い車両については基地帰還後からの適用となります。』

『NEW! 各種兵器にAIが搭載されました! ※有人機が近くにいれば戦闘効率が向上します。』

『NEW! 新しい兵器が生産可能になりました!』

『NEW! 各種兵器のレーザー蒸散塗膜が強化されます。これにより光線級の最大出力レーザー照射を2秒間防ぐことができます。』

ガイサック:砂漠での奇襲戦闘を得意とする小型サソリ型ゾイド。8足歩行により高い走破性を持つ。要:多脚歩行技術・昆虫型ゾイド用OS・小型ゾイドコア

モルガ:分厚い装甲を持った芋虫型ゾイド。胴体内部には武器用の格納庫を備える。要:多脚歩行技術・発展型車輪技術・昆虫型ゾイド用OS・小型ゾイドコア

……



『注意! ビーム兵器・レーザー兵器が実用化されていません、新兵器には本来のものと同口径の実弾兵装が搭載されます。』

これは逆に好都合だ。早々にビーム兵器やレーザー兵器に対応されたら堪った物ではない。

そのまま基地施設の項目に移る。

とりあえずは基地のメガフロート化を選択。というより、こんな使いどころの限られる選択肢があることに驚く。
まぁ、おかげで俺は基地ごと湖の底に沈む心配をしなくてよくなったから良いのだが。

そしてゾイドを維持していくのに必要なレッグルの生産プラントを建造する。
生産プラントといっても、元となるのはクレートで、要はクレートで生産できるものが増えただけなのだが。
他にも、元からの設備で燃料生産プラント、食料生産プラント、医療品生産プラント、兵器の生産ラインが6条、
武器の生産ラインが6条、弾薬の生産ラインが10条が備わっている。
ちなみに生産ラインと生産プラントの違いは、生産ラインではポイントを消費してラインを切り替えなければ別の兵器が作れないのに対し、
生産プラントでは切り替えなくとも別のものを生産可能であるか、そもそも切り替える必要がない。
例えば、今は兵器の生産ラインは稼動していないが、仮に撃震を作り、そこから別の兵器を生産したくなった場合には生産ラインを切り替える必要があるわけだ。
つまり、今の時点で俺が新たに製造できる兵器は6種類となる。そのほかの兵器を作りたければ、生産ラインを増やすか、新しい生産ラインに切り替える必要がある。
逆に、燃料の製造プラントは、クレートさえつぎ込めばナフサから、ガソリン、重油にロケット燃料まで何でも作ってくれる。

とはいえ、この新たなシステムのせいで、前任者が気にしなくてもよかった補給の問題が出てきた訳だ。
いくらクレートがあったとしても、好きな兵器を好きなだけとはいかなくなっている。

「……これは難易度を上げすぎだろう……」

とにかく、これで計30000ポイントを消費し、残りは20ポイント。
端数が鬱陶しいので残りをクレートに変換し、10tのクレートを入手、これでポイントは0となった。

「よし、後はガイサックを量産して……攻撃ヘリ……後は自走砲と給弾車、戦車に撃震……」

とりあえず、生産ラインを稼動し、兵器の生産を開始、弾薬もそれにあわせて生産していく。
20mmケースレス砲弾、105mmキャニスター弾とHESH弾、PGU-14/B 焼夷徹甲弾、M789多目的榴弾、
2,75inロケット弾、155mm榴弾、120mm徹甲弾、12.7mm×99徹甲弾、M15対戦車地雷を。
さらに撃震用の装備として近接戦闘用の短刀と長刀、20mmチェーンガンと105mm滑腔砲を生産する。

当面の作業には買い支持に生産してあった作業用ロボットを当てることにする。

「後は、こいつらを順番に配置していくか……」

そう呟きながら順次指示を出していく。
この基地の設備でも、この基地の周辺の映像に限り、偵察衛星からの映像は傍受できるようだ。
それによると、この基地から最も近い、ヴェリスクハイヴにてBETAが悌団を形成しつつあるらしい。
その規模は、現在でおおよそ3000弱の連帯規模。此処からさらに数を増やすのか、それともすぐさま侵攻してくるのかは不明。
だが、他のハイヴで同じような動きが見られないのは幸運といえるだろう。
後はBETAが攻めてくるのが早いか、こちらの準備が整うのが早いかの勝負だ。
兵器が生産されるのを待つのが非常にじれったく感じる。
とはいえ、指示自体は前もって与えておくことができるのであっという間にやることがなくなってしまう。

「……じっとしてても気が滅入るだけだし、シミュレーターでもやってくるか……」

指示を出し終え手持ち無沙汰になった俺はそのまま基地の見学を兼ねてシミュレータールームへと向かったのだった。






[30323] 第三話 スリーパー・トラップ
Name: かのしし◆147cd227 ID:72338012
Date: 2011/11/04 20:05
1998年 10月 25日 オネガ湖湖上 異世界救援部隊前線基地(仮称)

「……いよいよ、か……」

早朝、高緯度であることと今の季節が相まって、未だ日も昇らぬ時間。
俺は端末が奏でるけたたましいアラームの音によってたたき起こされた。
アラームがなるのは、BETA群がこの基地へと侵攻を開始した時と、他の二つのハイヴで悌団の形成が確認されたときだけだ。
騒がしいアラームのおかげで、すっかり頭からは眠気が吹き飛んでいた。
俺は、そのまま端末へとかじりつき、状況を把握する。

「ヴェリスクハイヴのBETA軍が侵攻を開始……他のハイヴに動きはなし……か……」

ヴェリスクハイヴのBETA群はその後、着々とその数を増やし、今ではその規模は約16000の師団規模にまで膨れ上がっていた。
そのまま端末を操作し、こちらの配備状況を確認する。
といっても、BETAの侵攻が確認された時点である程度の準備はしておくようにあらかじめ指示を出していたので、もう戦線の構築は殆ど完了していた。

「戦車部隊、戦線構築のため移動中、自走砲部隊、基地周辺に展開完了、ヘリ及び戦術機部隊出撃準備完了、ガイサック部隊全機異常なし……」

地雷の敷設と砲台コンテナの設置は開始日に既に終わっている。
これで、こちらの戦闘の用意は既に完了したといって良いだろう。
俺は、そのまま端末で簡単な食事を作り、ハンガーへ運ぶように指示を出す。
この基地はほぼ無人で稼動しているが、唯一俺だけは例外だ。無論緊急時でも腹は空くし、緊急時だからこそ少しでも万全の状態で出撃したかった。
端末での操作を終えると、部屋に備え付けのロッカーの中から強化装備を引っ張り出し、着用する。
そして、いつもより少しだけ早い足取りでハンガーへと向かった。



……

………

管制ユニットに乗り込み、雑用ロボが持ってきたサンドイッチを頬張る。
相変わらず旨い。そのままもう片方の手に持ったオレンジジュースを一気飲みして、空になったパックは開きっぱなしのハッチから外へと投げ捨てた。
足場に落ちた空のパックを雑用ロボが拾い上げ、ついでに少し飛び散ったジュースを拭いて去ってゆく。

そのままハッチを閉じ着座調整を済ませる。
機体の前にある昇降用の足場はそのまま上へと上がり出撃の用意が整う。

滑走路までは主脚で移動し、そのままBETAの到来を待つ。
10年分の訓練の成果か、気持ちは完全に落ち着いている。
網膜にはカメラが捕らえた映像が映し出され、同様に多数の撃震が滑走路へと姿を現した。

「そろそろか……」

基地のレーダー施設が捉えたBETAの画像が、データリンクを通して網膜へと映し出される。
その地図上に示された赤いライン。BETAを現す光点があらかじめ設定されていたそのラインを超えると同時に俺は声を張り上げる。

「砲撃開始!!」

実際にはデータリンク越しに関節思考制御と視線の動きだけでも指示を出すことはできるのだが、声で指示したほうが気合が入るのだ。
そしてその声に反応して、基地周辺に展開した自走砲が次々と砲撃を開始する。
その弾道は光線属種の存在を考慮して低めに設定してあるが、それでも横列をなして向かってくる突撃級の遥か後方から伸びた閃光がその何割かを消滅させた。

「案の定……ってところだな……せめてAL弾頭があればよかったんだが……」

ないものねだりをしても仕方がないとすぐさま頭を切り替える。
AL弾頭はまだ開発がすんでいないため、自走砲の全てが最初から榴弾を撃ち続けている。
そのため幾ら撃ち込んだところで重金属雲によるレーザーの減衰など見込めるはずもなく、無駄弾の数もかなり多いが、それでも間断なく続く砲撃は確実に突撃級の数を減らしてゆく。
さらに追い討ちをかけるかのように突撃級の足元が次々に爆ぜ、その脚を吹き飛ばす。
これに主力戦車と砲台コンテナの一斉砲撃が加わり、なんとか侵攻を押しとどめる。

「最初だけは幸先良いんだよな……」

BETAは光線急を除いては飛び道具を用いないため、交戦開始からしばらくはこちらが不利になることはない。
ここから、小型種の接近を許したり弾切れが起きたりするとあっという間に瓦解してしまうのだが、
前者はその対策にガイサックの一部を戦車部隊に貼り付けているし、
後者は無人機が人には不可能なタイミングで上手く給弾を続けてくれるのでしばらくは安心だろう。

「後の問題といえば……」

そんなことを考えているうちに、BETA群に動きがあった。
まるで扉が開くかのごとく、BETA群が二つに割れて、その間をレーザーが飛んでくる。
光線属種。どうやら後衛が追いついてきたらしい。その数を大きく減らした突撃級に変わり、今度は一対の腕を備えた要撃級が姿を現す。
先ほどのレーザーで開いた穴は予備の戦車舞台に埋めさせ、自身は戦術機部隊を率いて要撃級退治に乗り出す。

と、その最中にアラームが鼓膜を振るわせた。反射的に回避機動を取りかけながらも批評者刑法ではないことに気付き情報をウィンドウに呼び出す。
開始してから1時間と少ししか経過していないがなぜ普通の指揮官が最前線に出てこないのか良く判る。
状況を見つつ、指示を出しつつ、戦闘もするなんていうのはかなり厳しいものがある。
どうせならその辺の能力もポイントで貰っておけばよかったと思いつつ目の前の要撃級に至近距離からキャニスターをぶち当てる。
少しだけ余裕ができたところで短くまとめられた情報を頭に入れる。

『ハイヴ付近にてBETA群が悌団を形成中』

まぁ最初からすんなり良くとは思っていなかったとはいえ、せめて数日の猶予は欲しかったなどと思いつつ足元に向けてキャニスターを撃ち込む。
近くまで迫っていた戦車級が肉塊へと変わりそれに混ざっていた闘士級や兵士級はひき肉へと変わる。

(俺が食ってる飯って、もともとはコレ、なんだよなぁ……)

想像したら一気に食欲が失せた。
これはしばらく飯が食えなくなるかもしれない、特に肉類は……
そんな馬鹿な想像をしている間にも戦況は進みBETAの先鋒は少しずつ基地へと近付いている。
対してこちらは突撃級などに対しては有利に事を運んでいるものの時折飛んでくるレーザーによって戦車部隊の損害が着実に広がっている。

「せめてもう少し持ちこたえないとな……」

レーダーで確認するが、光線級まではまだそれなりに距離がある。
せめて後5kmはこちらに来て欲しいところだ。

「っとぉッ、アブねぇ!」

周りばかり気にしていて危うく要撃級の一撃を食らうところだった。
とはいえ、開始前の10年分の経験は体に染み付いているようで、多少のことではそう簡単に落とされたりはしない。
機体を後ろへ跳躍させそれをかわしながら20mmチェーンガンを気持ち多めに叩き込み沈黙させる。
開始から1時間経たずに、基地へと帰投する機体が出始めるが、それを埋めるかのように基地から予備機が出撃してくる。
本来は予備機ではなく光線級吶喊のために温存しておくつもりだったのだが、全体の損耗を防ぐためには仕方がない。
その一方で、光線属種は時折射撃を挿みながら、じりじりと前進してきていた。

「増援がくると流石に厳しいかも知れんな……」

砲弾の備蓄は十分にあるが、前線で消耗した分を呼びの部隊から引き抜いて補充していた結果、予備部隊はもう殆ど残っていない。
例外はもともと予備を備えていない自走砲部隊と比較的損害の少ない戦術機部隊くらいのものだ。
だが、その戦術機部隊も全体の1/6、予備部隊のおよそ半分が撃墜され再起不能となり、さらに残りの予備機は殆どが中破または大破となり基地で修理中の有様だ。
増援を見越して多めに予備部隊に割り振ったのが裏目に出ているのかもしれない。
あるいは、最初から全てを前線に回して少しでも早く決着を着けたほうが損害は少なかったのではないだろうか。
尤も、今更そんなことを言っても始まらないし、そもそもどちらがよかったのかなど確認する方法もない。

そんなことを考えながらも要撃級を叩いていると、ようやく光線属種を含む群団が狙った場所まで進軍してきた。
実際にはもう少し早くたどり着いていたのだろうが、乱戦のあまり確認が疎かになっていたようだ。

「まだセーフだな……これをミスるとと流石にキツイからな!」

言いながら、視線をせわしなく動かし、データリンク経由で待機中の無人機に指示を出す。
突如光線属種の足元がモゾモゾと動き出し、その直後、大量の雪と土を巻き上げながら大量のサソリが現れる。
共和国ゾイド、ガイサック。地中に潜っての待ち伏せ作戦を得意とする鋼のサソリ。
地中から表れたガイサック部隊は、その鋏と顎で手当たり次第に光線級を屠っていく。
尻尾の先には針の代わりに機関砲。
本来ならば対ゾイド30mmビームライフルを装備しているのだが、今回のチートシステムの都合上そこについているのは同口径の機関砲。
GAU-8をガイサックにあわせてコンパクトにしたような武装で、銃身は4本、ドラム弾倉も銃身の真横に装備されている。
それでも小型種程度なら余裕で掃討できるし、大型種相手でも上手く弱点をつけば十分に有効打となる。

強いて欠点を挙げるとすればその防御力の低さ、そして何より……大量に運用したときの気持ち悪さくらいだろう。
1機や2機ならそれなりに格好いいのだが、何せ見た目がサソリなのだ。
八本脚をウゴウゴと動かす機械がうじゃうじゃ居ると、BETAの群れほどじゃないにせよそれなりに気持ち悪い。

いきなり地中から表れたガイサック部隊に戸惑っているのか、BETAの対処は遅く、BETAに対してかなり優位に戦局を進めている。
レーダーの赤い光点がガイサック部隊が現れた場所から順に消えていき、代わりに味方を表す青い光点が広がってゆく。

「よし、そろそろか……」

要撃級を捌きつつ、再び指示を出す。するとそれまで極力低い弾道での射撃を維持していた自走砲部隊の一部が一転して弾道を高いものに変えた。
だが、その砲弾をめがけて放たれる光線は、最初に比べるとずいぶんと少なくなっている。
それを元にレーザー級の位置を特定し戦術機部隊の一部を率いて光線級吶喊をかける。
あらかたガイサック部隊が片付けてくれているうえ、あちこちで乱戦となりBETAの注意をひきつけてくれているので、比較的スムーズに光線属種の掃討が終わる。
そしてそれを入念に確認した後、俺はここまで温存し続けていたヘリ部隊に出撃の指示を出した。

基地から飛び立ったアパッチロングボウの部隊が残ったBETAを一方的に掃討してゆく。
乱戦の中にも関わらず、無人機特有の正確な射撃で、BETAのみが狙い撃ちにされてゆく。
とはいえ、完璧とまではいかないようで、時折誤射も見られたが、その辺は仕方がないだろう。
最後に迫ってきていた要塞級数体を火砲とヘリの集中砲火で倒した後、俺は第二陣に備えるため最低限の部隊だけを残し基地での簡易整備と補給をを命じる。
同時に使用された地雷の敷設のし直しと砲台コンテナの武装の入れ替え、そしてできうる限りのBETAの残骸回収の指示を出し俺自身も帰投した。

だが、結局BETAの増援がくることはなく、こうして俺のこの世界での初陣は幕を閉じたのだった。


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