7回、デビス・ボスキエロ(右)を攻める粟生隆寛=東京・代々木第二体育館で
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◇WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
試合後の会見。2度目の防衛を果たした粟生は、まるで王座を失った直後のように歯切れが悪く、表情が硬かった。
「うーん。なんすかねえ。うーん。なんだろ。…。動けてなかったですね。自分のボクシングができなかった。研究されてましたね。自分のリズムが作れないままズルズルいってしまった」
戦前、攻防一体のボクシングの完成を目指す粟生の充実ぶりが伝えられた。下馬評も粟生の有利。本人も「圧倒的に勝つ」と自信満々だった。しかし、ふたを開けると、勝手が違った。
ボスキエロはガードをガッチリと固める守りのボクシング。しかし、守り一辺倒かといえばそうでもなく、突然荒々しいパンチを振ってくる。しかも、クリンチの際は頭を押さえ込んでくるいやらしさ。イケメンのイタリアンの風ぼうとは裏腹の、泥くさいボクシングに粟生のコンピューターが狂わされた。8回を終わった時点で3人のジャッジが粟生有利の採点だったが、後半失速。終わってみれば2−1のヒヤヒヤの判定勝利だった。
「せっかのメーンだったのに、申し訳ないし、情けない。唯一の収穫は勝てたこと。今後こんなことがないように練習するしかない」と前を向いた王者。大苦戦の防衛は、今後の肥やしにするしかない。 (竹下陽二)
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