脅威のパフォーマンスを持つThunderboltの今、そして将来展望
Thunderboltは、USB、そしてeSATAを凌駕するか密かにコンピュータ周辺機器インターフェイスの世界に新たな標準戦争が起ころうとしている。AppleとIntelに後押しされ、Thunderboltは最終的にUSB 3.0とeSATAの両方を超えることになるだろうか。
J・ヴォーン・ニコルス(J. Vaughan-Nichols)/ ITWorld
私がコンピュータの世界に入ったころは、2つの主要な周辺装置インターフェイスの選択肢があった。当時、この2つのインターフェイスはRS-232シリアルポートとCentronicsパラレルポートと呼ばれていた。RS-232は一般的にペアの形態で利用されており、初期の段階で20Kbit/秒(Kbps)を超えるほどであった。しかし、これは過去の話で今は様変わりしている。
今日では、USB3.0は625Mbit/秒(Mbps)に達している。また、eSATAでは最大300Mbpsを処理できる。さらに、Intelの研究所から始まり、Appleによって実装されたAppleの秘蔵っ子とも言うべき最新のインターフェイス・テクノロジーであるThunderboltは10Gbit/秒(Gbps)で電光石火のごとくデータを転送する。
ThunderboltをサポートするPCおよびOS、そして周辺機器を手にできるならば、まさに、「これは素晴らしいニュース!」と言えるであろう。しかし、現時点ではThunderboltはそれほど多くのデバイスに搭載されていない。AppleとIntelはこの現状をできるだけ早期に変えたいと考えている。
事実として、USB3.0の普及がなぜこれほど遅れているかの理由の1つに、IntelがUSB3.0のサポートをマザーボードに依然として組み込んでいないことが挙げられる。しかしながら、Thunderboltはいくつかのハードウェアで既に利用できるようになってきている。また、2012年にリリース予定のIntelのIvy Bridgeマザーボード・アーキテクチャではこの新しいテクノロジーがUSB3.0とともにサポートされる予定である。また、その間にも、AppleはMacBook Air、MacBook Pro、iMacおよびMac miniの最新モデルにThunderboltのサポートを既に組み込んでいる。
では、Thunderboltは何をもたらすのであろうか? Appleは、「ThunderboltはUSB3.0の置き換えではなく、USB3.0を補完するものである」と語るが、Appleが何を思ってこのような発言をしているのか私にはその真意は全く分からない。しかし私が思うに、これはUSBハードウェアを使い続けたいと考えるUSBユーザーを気遣っての発言の何物でもないのではなかろうか。またキーボードやマウスをわざわざThunderboltで接続する必要もない。
ではThunderboltとは何か?
Thunderboltは、当初Light Peakという名前で世に送り込まれた。Intelは、純粋な光テクノロジーという意味を想定しこのように命名した。2009年まで、IntelはUSBのようにインターフェイスを強化する周辺機器が、ユーザーに望まれていると考えていた。そこで、Intelは銅線ベースのシステムのサポートを追加した。これによって、ワイヤーベースのThunderboltは最大10ワットの電力を送電できるようした(USB2.0および3.0は最大5ワットまでサポートしている)。
Thunderboltトランシーバーを注意深く分解してみると、2つの小さな垂直共振器面発光レーザー(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)と2つの小さい受光素子(Photo Detector)を見つけることができる。このレーザーは人間の毛2本分ほどのスペースに並べて配置される。125ミクロンの光ファイバー・ケーブルを使って2チャネルのそれぞれで光転送を行う。受光素子は他の終端からの光を受信し、Thunderboltインターフェイス内の回路が有線電気信号に変換する。
この2つのVCSELと付属回路によって、Thunderboltは同時に最大10Gbpsで送受信を行うことができる。
この高速信号がトランシーバーで受信されると、コントローラがこの生データを2つのサポートされるデータ転送プロトコルであるDisplayPortまたはPCI Expressに変換する。このため、ハイエンド・モニターや外部ハードデバイスなどのデバイスの周辺機器メーカーは、Thunderboltの互換性を追加するのにそれほど時間を要することはないだろう。加えて、この両方のデータ・プロトコルは1本のThunderboltケーブル上で実装できるため、1つのケーブル・タイプとポートで、このインターフェイスを使うほとんどのデバイスをサポートできる。
Thunderbolt互換デバイスの新世代がまだ世に出る前にもかかわらず、Thunderboltを搭載する旧世代のDisplayPort装置を使用することが可能である。このケーブルとポートが共に、DisplayPort互換であるためだ。もちろん、それほど高速ではないが、アップデートなしに旧世代のハードウェアを使うことができる。
ここ数年使用してきた周辺機器のポートと異なり、Thunderboltは1つのポートから最大7台のThunderbolt搭載デバイスをデイジー・チェーンで接続できる。理論的には、1つのチェーンで接続されたすべてのデバイスからフルスピードのデータ転送を可能にする。
デイジー・チェーンで接続できることは素晴らしいだろうか?少なくとも私は素晴らしいと感じる。ただし、数十年前を思い出して欲しい。SCSI(Small Computer System Interface)も同じように利用できなかっただろうか?SCSIチェーンでは1回で4台が機能する。Thunderboltデイジー・チェーンでは、異なるベンダーの複数のデバイスで機能するはずである。
デイジー・チェーンでも、Thunderboltは極めて低いレイテンシーで機能するように設計されている。Intelによれば、Thunderboltはプロフェッショナル向けの音声および動画アプリケーションで良好に機能する。特に、IntelのQuick Sync Videoテクノロジーで有効である。
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