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ソ連時代のフィギュア王国復活へ! ロシアのソチ五輪金メダルへの道。

Number Web 11月7日(月)11時43分配信

 フィギュアスケートのグランプリシリーズがアメリカ大会で開幕し、2戦目のスケートカナダも10月30日に終了した。

 この2つの大会で、強い印象を残したのが、スケートカナダの女子で優勝したロシアのエリザベータ・トゥクタミシェワである。

 今年12月に15歳を迎えるトゥクタミシェワは、昨シーズン、ジュニアの舞台で戦っていた。ジュニアグランプリシリーズに2度出場してどちらも優勝、ジュニアグランプリファイナル、世界ジュニア選手権はともに銀メダルの実績をあげている。

 今シーズン、シニアへと舞台を移すと、グランプリのデビュー戦となったカナダで、ショートプログラムでもフリーでも、冒頭でトリプルルッツ―トリプルトウループを成功させたのをはじめ、ミスをしなさそうな安定したジャンプを中心とする滑りを見せる。結果、堂々、優勝を遂げたのである。

■トゥクタミシェワの優勝はフィギュア大国復活の号砲か。

 そしてトゥクタミシェワの優勝が強いインパクトをもたらしたのは、14歳そしてグランプリ初出場での初優勝という事実にばかりあるのではない。フィギュアスケート大国ロシアの復活を予感させるものであったことだ。

 ロシアには、やはり今シーズンからシニアデビューを飾る、アデリナ ・ソトニコワという選手がいる。昨シーズン、ジュニアグランプリシリーズに2度出場して2勝、ジュニアグランプリファイナル、世界ジュニア選手権ともに金メダルと、トゥクタミシェワを上回る成績を残している。

 昨シーズン、ジュニアを席巻した2人には、シーズン開幕前から注目が集まっていたが、まず最初に登場したトゥクタミシェワの好成績は、彼女たちの実力を示したものだと言える。

 復活のきざしは、女子にかぎったことではない。男子でも、アルトゥール・ガチンスキーという選手が出てきた。今年4月の世界選手権では17歳で銅メダルを獲得している。

 こうした若手の台頭の背景には、3年後がある。そう、ロシアのソチで開催されるオリンピックである。

■ソ連崩壊とともに強化育成の予算が断たれていた。

 ロシアのフィギュアスケートは、2006年のトリノ五輪を最後に、不振に苦しんできた。2007年、東京での世界選手権のときには、男女ともに10位以内に一人も入れず、ペア、アイスダンスを含めてもメダルなしに終わったのは象徴的だ。

 2010年のバンクーバー五輪も同様だ。

 エフゲニー・プルシェンコの銀メダルとアイスダンスのオクサナ・ドムニナ&マキシム・シャバリンの銅メダルこそ獲得したが、金メダルはなし。12大会連続で金メダルだったペアでメダルを逃したのは、驚くべきことだった。

 ロシアのお家芸とも言われたフィギュアスケートで、ここまで低迷した理由は、ソ連が崩壊し、ロシアへと変わったことにある。国家が豊富に強化育成のために資金を投下し、そのもとで築かれていた強化体制が崩れたのである。

■プーチンの号令一下、ソチに向けた強化策が進行中。

 ロシアスケート連盟の会長だったピセーエフ氏が、「ロシアの力の源泉はコーチの能力の高さにありました」と語るほどだった優秀なコーチは続々と海外へと出て行った。バンクーバー五輪に取材に行ったときに海外の記者からは、「ロシアのコーチは、いまや海外に広く渡っている。北米だけで3桁のロシア人コーチがいる」ことを教えられた。

 コーチの流出とともに、強化資金に苦しんだ時期があったとその記者は語っていた。スポンサーを獲得しようにも、選手の育成のような地道な部分より競技大会やショーのような目立つ部分にスポンサーはつきやすい。ジュニアを育てるスクールの閉鎖も続いたという。育成に穴が開き、ロシアは低迷していった。

 だが、次のオリンピックはソチでの開催である。自国開催での失敗は許されない。だからロシアは、ソチ五輪を見据えたうえで、バンクーバー五輪でも、2006年のトリノを大幅に上回る強化資金を投じていた。額はトリノの4倍とも5倍ともいわれている。バンクーバーでは成果は出なかったが、その効果として、ソチに向けての強化が進みつつあると感じさせるのが、フィギュアスケートの若手の台頭である。

 ましてやロシアの政治的指導者は、あのプーチンである。バンクーバー五輪後、「オリンピックに出場するのは勝つためにほかならない」と代表選手やコーチたちを一喝したが、強力なリーダーシップでもって、さらに強化を進めることは容易に予測される。

■女子フィギュアの再興でロシアは五輪の盟主に返り咲く。

 とくに女子の個人では、あれだけのフィギュアスケート大国でありながら、これまで一度も金メダルを獲得していないだけに、ソチでこそ金メダルを、という思いは強いだろう。

 むろん、トゥクタミシェワにしても、ソトニコワにしても、10代半ばであり、身体も成長していくだろう。成長に伴って、ジャンプをはじめどう変化していくかはわからない。

 ともかく、近年のオリンピックは、北京五輪の中国のメダル数の大幅な増加、バンクーバー五輪でカナダが同国史上最多の金メダル獲得と、開催国の活躍が目立つ。来年のロンドン五輪へ向けて、イギリスもまた着実に各種大会で結果を残してきた。

 ソチでも、ロシアがウインタースポーツの大国であることを知らしめるのか。

 ロシアにとって、フィギュアスケートの女子は、その中心となる。

(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)

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最終更新:11月7日(月)11時43分

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