プロスポーツも地域に根付いた球団経営が求められる時代、球団名はどうあるべきか。
プロ野球・横浜ベイスターズを保有するTBSホールディングスと、ゲームサイト運営会社「ディー・エヌ・エー(DeNA)」との売却交渉がまとまった。新球団名は「横浜DeNAベイスターズ」が予定されている。舌をかみそうだ。
当初、DeNAは球団名に自社が運営する携帯電話向けゲームサイト「Mobage(モバゲー)」を使用する意向だった。だが、巨人の渡辺恒雄球団会長が、商品名を球団名にすることは野球協約の内規に抵触することを挙げ、「売名にならないよう格好つけてもらわないと」と語ったため、断念した。
いくつか疑問が浮かぶ。なぜ企業名ならよくて商品名はいけないのか。「売名は許されない」としながらヤクルトや中日などのように企業名と商品名が同じ球団が存在する。ご都合主義との指摘にどう答えるか。そもそも球団名についての内規は存在するのか。明文化されたものがあるならば、透明性確保のためにも公表するか、野球協約を改正して盛り込むべきだろう。プロ野球ビジネスに関心と興味を持つ企業が今後、新規参入の判断をする手助けにもなる。
企業が球団名に自社名をつけるのは税務対策上、都合がいい。1954年の国税庁通達は、親会社が球団に支出した金銭を広告宣伝費として認めたうえで、赤字補填(ほてん)の支出は損金扱いとするとしている。親会社にすれば法人税を軽減できるメリットがあり、「超法規的措置」とも指摘されている。実際、「市民球団」を掲げているある球団のオーナーは以前、球団名を地域名に変える可能性を尋ねた同僚記者の取材に「会社の名前がなくなったら(お金を)出してもらえない」と答えている。
時代は変わりつつある。地域密着の重要性は広く浸透していてパ・リーグの場合、5球団が企業名の前に地域名をつけている。だが、中途半端な印象はぬぐえず、定着していない。もちろん球団名を地域名に変えたからといって経営が改善するわけではない。今回の横浜がいい例だ。だが、企業名をつけている限り、プロ野球チームは私企業の広告宣伝の道具としての位置から抜け出すことはできないことも事実だろう。
DeNAはプロ野球への参入目的の一つに「地域社会への貢献」を挙げている。地元自治体との連携を強め、すでに今いるファンに抵抗感なく応援してもらうためにも球団名は「横浜ベイスターズ」のままがいい。(論説委員・落合博)
毎日新聞 2011年11月7日 2時30分
ウェブサイトが15分で簡単作成、しかも無料で
「はやぶさプロジェクト」のサポートチームに参画