原発事故の状況について話す小出助教=上田市の長野大 |
東京電力福島第1原発事故直後から被害の深刻さを指摘してきた京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)の助教、小出裕章さん(62)が6日、上田市下之郷の長野大で講演した。国内の電力供給について「火力発電所がすべて稼働すれば夏の最大需要も賄える」とし、汚染物質を出し続ける原発は全廃すべきだと強調。福島県などの第1次産業を守るには、一定の放射線量以下の食品は大人が食べるようにしていくしかないと訴えた。
小出さんが原発事故後、県内で一般向けに講演したのは初めて。放射線による表土などの汚染については、東北や関東での拡散状況を示す地図を使い「(福島第1原発から20キロ圏の警戒区域以外にも)広大な土地が、本来法律で立ち入りが制限される『放射線管理区域』にしなければいけないほどだ」と指摘。「残念だが、私たちは放射能で汚れた世界を生きる以外にない」と話した。
福島第1原発の今後については「人類が経験したことのないことが進行している。溶けてしまった燃料を取り出して別の場所に移すのが理想だが、地下にめり込んでいる可能性もあり、おそらく難しいと思う」と説明。「チェルノブイリのような『石棺』を造って、現在の場所に封じ込めることになるのではないか」との見方を示した。
講演会は、上田市民有志の政策提言組織「うえだ百勇士会」(鈴木永(ひさし)会長)と、同市などの有志でつくる実行委員会が主催。インターネットの動画投稿サイト「ニコニコ動画」でも同時放送され、小出さんは600人が集まった会場と、ネットからの質問にも答えた。前日には、信学会上田予備学校(上田市中央1)でも講演した。