放射線を大量に浴びると身体に重い障害があらわれます。被ばく直後には全身の脱力と吐き気、嘔吐が見られます。その後いったん症状は軽快し、約3週から2ヶ月後に脱毛と口内炎が発症し、さらに白血球や赤血球、血小板など血液細胞を作れなくなったり(造血障害)、胃や腸などの消化管の粘膜が傷んだり、脳の機能が障害されてけいれんを起こしたりします。こうした急性障害の症状が落ち着いてしばらく経って、がんをはじめとする晩発性障害が5ヶ月以上たった後で出現します。
放射線は体を構成する細胞に損傷を与えます。細胞の中では、遺伝子DNAからメッセンジャーRNAが転写されて、タンパク質が作られています。放射線の標的はDNAです。放射線はDNA二重らせんを切断します。
私たちは、自然放射線から被ばくを受けるとともに、病院のエックス線検査からも被ばくしています。この表は被ばくによって生じるDNAの傷の数を示します。
被ばく線量(ミリシーベルト) | 1細胞当りのDNA二重鎖切断数 | |
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胸部X線 | 0.02 | 0.0008 |
マンモグラフィー | 0.4 | 0.016 |
頭部CT | 2 | 0.08 |
自然放射線による年間線量 | 2.4 | 0.1 |
腹部CT | 7 | 0.28 |
冠動脈造影 | 22 | 0.88 |
宇宙旅行(60日間) | 50 | 2 |
広島・長崎原爆被ばく | 5~4000 | 0.2~160 |
Molecular Cell 40, October 22, 2010 ©2010 Elsevier Inc.