少女たちの聖戦 第8話 【海風薫る悲しみの挽歌】
みなさま、お久しぶり?ですー。
えー、他ごとに意識を持っていかれたので、
少々いつもより更新の間が空いてしまいました。
今回はゲストが出演します。
巫女つながりということで、
ツイッターで仲良くさせていただいている方々の持ちキャラを・・・。
まずは彗嵐様の鈴華美影・猫乃姉妹。
憑き神退治や遺跡探索で活躍中!
そしてMizuha様の土御門湖刀美・村井陽子ペア。
学校の仲間たちと妖怪退治に奔走しています。
今回は登場シーンと前置き部分が中心。
あ、初っ端からエロイシーンがあるので要注意!
それではどうぞー!
真夏の到来。照りつける太陽、どこまでも青い空。少女たちの心は、その青空と同じように開放的になっていく。学園は夏休みに入り、学生たちは帰省したりバカンスに旅立ったり、学園で部活動に励むものと様々。陰に日向に街を守り続けてきた少女たちもまた、夏の長期休暇に心躍らせていた。
そして動き出す、『紅の亡霊』。闇に潜み、人知れず蠢く妖怪の群れ。日向に生きるものたちをも取り込みながら、全てを喰い尽くさんとその行軍は進む。
祓う者と惑わす者、その相容れない戦いの中で少女が見たものは・・・。
コードダークⅡ ~少女たちの聖戦~
第8話 【海風薫る悲しみの挽歌】
◆◆◆
「ふああっ・・・ひああ・・・イイよぉ・・・♪」
「あはあぁ・・・んふぅ・・・もっとぉ・・・♪」
薄暗い洞窟の中、響く少女の喘ぎが二つ。その声は歓喜に濡れ、淫らに弾んでいる。その姿を照らすのは、ロウソクに灯る青白い鬼火の炎。
「くくく・・・。どうだ?人を捨てた感想は・・・?」
男はその動きを止めることなく、目の前で揺れ動く二人の女に問いかける。
「あふぅ・・・とってもステキですぅ・・・。もっとぉ、早く、こうしていればよかったぁ・・・♪」
「あはぁん・・・人だったことが、馬鹿らしく、思えますぅ・・・。これからは、ずぅっと、気持ちイイまま・・・♪」
二人は恍惚とした声で答える。ためらい無く、人を捨てた喜びを訴える。
「ふふ・・・。歓迎しよう、我らが同胞よ。さあ、存分に楽しむがいい!」
男の動きは激しさを増し、それに合わせるように女たちの動きも激しくなっていく。
「あふぅうう♪激しいのぉ・・・玄奘様ぁ、もっとぉぉ!!」
「あひぁあああ!玄奘様ぁぁ、イッちゃう・・・イッちゃうのおおお♪」
女の声は甲高く、艶を増しながら叫ぶように響く。人間だった頃をかなぐり捨てるかのように。
「さあ、昇りつめるがいい!メス妖魔ども!!」
男が腰を突き上げる。
「「イ、イックぅぅぅうううう!!!」」
女たちの背中が弓なりに反り、痙攣したように震えている。その表情は、歓喜に満ち溢れていた。
「ふふふ・・・これで駒は揃った。あとは・・・。」
男・玄奘の呟きを、そこに現れた二匹の女妖魔が引き継ぐ。
「最後の鍵、我が娘・・・雫のみ。ですね?玄奘様・・・」
「すでに白翁様以下、全ての妖怪たちの準備は出来ております・・・。」
凶禍と琥珀は、淫蕩な笑みを浮かべながら跪く。
「そうか・・・。お前たちにも働いてもらうぞ・・・。崩朧(ほたる)、幽濡(ゆず)!」
玄奘が呼ぶと、女妖魔二匹がゆらりと起き上がる。
「もちろんです、玄奘様・・・。」
「あはぁ・・・。存分に働いて見せますわぁ♪」
崩朧、幽濡もまた、玄奘の前で跪く。
「では今宵、百鬼夜行の行軍を始めるとしよう・・・。ふふふ、はははははは!!!」
薄暗い洞窟の中、玄奘の笑いが響き渡っていた。
えー、他ごとに意識を持っていかれたので、
少々いつもより更新の間が空いてしまいました。
今回はゲストが出演します。
巫女つながりということで、
ツイッターで仲良くさせていただいている方々の持ちキャラを・・・。
まずは彗嵐様の鈴華美影・猫乃姉妹。
憑き神退治や遺跡探索で活躍中!
そしてMizuha様の土御門湖刀美・村井陽子ペア。
学校の仲間たちと妖怪退治に奔走しています。
今回は登場シーンと前置き部分が中心。
あ、初っ端からエロイシーンがあるので要注意!
それではどうぞー!
真夏の到来。照りつける太陽、どこまでも青い空。少女たちの心は、その青空と同じように開放的になっていく。学園は夏休みに入り、学生たちは帰省したりバカンスに旅立ったり、学園で部活動に励むものと様々。陰に日向に街を守り続けてきた少女たちもまた、夏の長期休暇に心躍らせていた。
そして動き出す、『紅の亡霊』。闇に潜み、人知れず蠢く妖怪の群れ。日向に生きるものたちをも取り込みながら、全てを喰い尽くさんとその行軍は進む。
祓う者と惑わす者、その相容れない戦いの中で少女が見たものは・・・。
コードダークⅡ ~少女たちの聖戦~
第8話 【海風薫る悲しみの挽歌】
◆◆◆
「ふああっ・・・ひああ・・・イイよぉ・・・♪」
「あはあぁ・・・んふぅ・・・もっとぉ・・・♪」
薄暗い洞窟の中、響く少女の喘ぎが二つ。その声は歓喜に濡れ、淫らに弾んでいる。その姿を照らすのは、ロウソクに灯る青白い鬼火の炎。
「くくく・・・。どうだ?人を捨てた感想は・・・?」
男はその動きを止めることなく、目の前で揺れ動く二人の女に問いかける。
「あふぅ・・・とってもステキですぅ・・・。もっとぉ、早く、こうしていればよかったぁ・・・♪」
「あはぁん・・・人だったことが、馬鹿らしく、思えますぅ・・・。これからは、ずぅっと、気持ちイイまま・・・♪」
二人は恍惚とした声で答える。ためらい無く、人を捨てた喜びを訴える。
「ふふ・・・。歓迎しよう、我らが同胞よ。さあ、存分に楽しむがいい!」
男の動きは激しさを増し、それに合わせるように女たちの動きも激しくなっていく。
「あふぅうう♪激しいのぉ・・・玄奘様ぁ、もっとぉぉ!!」
「あひぁあああ!玄奘様ぁぁ、イッちゃう・・・イッちゃうのおおお♪」
女の声は甲高く、艶を増しながら叫ぶように響く。人間だった頃をかなぐり捨てるかのように。
「さあ、昇りつめるがいい!メス妖魔ども!!」
男が腰を突き上げる。
「「イ、イックぅぅぅうううう!!!」」
女たちの背中が弓なりに反り、痙攣したように震えている。その表情は、歓喜に満ち溢れていた。
「ふふふ・・・これで駒は揃った。あとは・・・。」
男・玄奘の呟きを、そこに現れた二匹の女妖魔が引き継ぐ。
「最後の鍵、我が娘・・・雫のみ。ですね?玄奘様・・・」
「すでに白翁様以下、全ての妖怪たちの準備は出来ております・・・。」
凶禍と琥珀は、淫蕩な笑みを浮かべながら跪く。
「そうか・・・。お前たちにも働いてもらうぞ・・・。崩朧(ほたる)、幽濡(ゆず)!」
玄奘が呼ぶと、女妖魔二匹がゆらりと起き上がる。
「もちろんです、玄奘様・・・。」
「あはぁ・・・。存分に働いて見せますわぁ♪」
崩朧、幽濡もまた、玄奘の前で跪く。
「では今宵、百鬼夜行の行軍を始めるとしよう・・・。ふふふ、はははははは!!!」
薄暗い洞窟の中、玄奘の笑いが響き渡っていた。
◇◇◇
「この辺やと思うんやけどなぁ・・・。」
二人の少女が、海沿いの道をてくてくと歩いている。その手には、一枚の小さな紙が。
「ねぇさまぁ・・・。まだ着かないんですかぁ?」
「ちょ・・・待ってや。・・・あぁぁぁ!こんなんで分かるかぁ!?」
その紙に書かれた地図は、適当すぎる上に昔の記憶を元にしたようなものだった。
「もぉ、ねぇさまが大丈夫って言うから・・・。」
「それはそうやけど・・・。霊力を感知できれば大丈夫やと思ったんよ・・・。」
そう言うと少女は、意識を集中するように目を閉じる。しかしすぐに首を振ってため息をつく。
「あかん・・・。霊気やら妖気やら魔力やら、雑じりすぎとってよう分からんわ・・・。」
「大神さんがパスした理由はこれだったんですね・・・。おかげでねぇさまと二人きりで旅行・・・うふふ♪」
笑顔を見せる少女の耳がぴくぴくと動く。その耳は猫のそれだったが、この街の中では目立たなかった。
「何言ってるん、猫乃・・・。一応お母はんのお使いやし・・・協会から依頼された仕事や。」
「それでも!二人きりの旅行なんですっ!」
ずずいっと顔を近づけて強調する猫乃。一方、姉である少女は目を背けながら苦笑いを浮かべる。
「はぁ・・・。とりあえず歩こか・・・。たぶん、もうすぐじゃろ。この鈴華美影の勘がそう言うとるし・・・。」
その横を一台のバスが通り抜け、少し先にあるバス停で止まる。
『十六夜神社前~。お降りの方は、足元にお気をつけください~』
それを聞いた瞬間、美影と猫乃はがっくりと肩を落とす。
「バス・・・あったんやな・・・。」
そのバスから降りた二人の少女。
「うわ~、綺麗な所だねっ!ね、陽子!!」
ポニーテールの少女が眼下に広がる海を見ながら隣の少女に語りかける。
「ホント!でも、ごめんね湖刀美ちゃん。こんなトコまで一緒に来てもらって・・・。」
三つ編みの少女が申し訳なさそうに呟く。
「もう。陽子ってば、そればっかり。せっかくの旅行なんだし、楽しもうよ。」
湖刀美は苦笑いを浮かべながら、陽子のほうに向き直る。
「それに、他の神社とか興味あるし、ね?」
ちらりと神社があるであろう山のほうを見ながら囁く。
「ん。それにここの神社はね、古くからあるはずなのに記述が少ないの。だからきっと民俗学的にも重要だと思うんだ!なにか隠された秘密があって、知られちゃいけない理由があるんだよ!だからね・・・」
「あはは・・・。その話は来るまでに何度も聞いたよ・・・。」
熱く語りだした陽子に、うんざりしたような表情を見せる湖刀美。それもそのはず、ここに着くまでに10回は同じ話を聞かされていた。
「えへへ・・・でも楽しみだなぁ。どんな秘密が隠されてるんだろ・・・。」
「ホント、陽子って民俗学とか好きだよねぇ・・・。朱礼君でも知らないこと知ってたりするし・・・。」
そう呟きながら、湖刀美はふっと海のほうを見つめる。
「そんなことないよ~。・・・でも、朱礼君も一緒だったら良かったのにね!そうすると私、お邪魔虫かもしれないけどね?」
笑いを堪えながら、陽子は茶化すように囁く。
「も、もう!陽子ったら・・・」
「じゃ、とりあえず行ってみよう?」
そう言って、二人は神社のほうへと歩き出す。
「雫さん、このまま真っすぐ行けばいいの?」
「はい。もうすぐ右手に鳥居が見えてきますよ。」
数人の少女たちが海沿いの道を歩いていく。その横を、一台のバスが通り過ぎていく。
「それにしても、良かったんです?うちの神社、何も見るようなもの無いですよ?」
私は申し訳なさそうに他の少女たちを見る。
「そーだぞー、ひかり~!見に来たって何も無いんだから、海で遊んでこいよー。」
雫の周りをうろちょろしながら、月華は頬を膨らませながら抗議の眼差しをひかりに向けている。
「まあまあ、ちょっと興味があるだけだから。そ・れ・と・も~、何か見られたくないものでもあるのかな~?」
「そっ?!そんなものない!!」
顔を紅潮させながら、月華はぷいっとそっぽを向いてしまう。
「ひかり・・・いじめちゃダメですよ?」
「ひどいなー、レティ。いじめてないよ~。ね?つっきー?」
レティの戒めを受け流しながら、ひかりは月華に笑いかける。
「知らない!・・・あれ?しずくー、お客さんみたいだよ?」
ぷいっと顔を背けた月華が、鳥居の前にいる少女たちに気が付く。その出会いが、世界の運命を変えるものだとは知る由も無く・・・。
◇◇◇
「じゃあ雫さんは、ここで巫女やってるんだー。」
自己紹介もそこそこに、私たちは十六夜神社へと続く長い階段を登っていく。私は湖刀美さんと美影さんの質問に答えながら、一段一段階段を登る。
「はい。普段は父と地元の人が管理してくれているんですけど、夏休みくらいは手伝わないと・・・。」
私は先頭に立ち、すいすいと階段を登っていく。他の子たちも問題なく付いてきているようだ。
「にしても、ここはちと特殊な神社じゃな・・・。」
美影さんがふと、あたりを見回しながら呟く。
「どういうこと?」
誰よりも早く反応したのは、陽子さん。
「ん・・・結界の張り方が独特なんよ。中に入れんようにするんが普通なんやけど、ここは外に出さんようにしてるんか・・・。」
私は驚く。美影さんの言うとおり、ここは封印結界を多重に張っている。奥に封じられているものを、外に出さないためだと教えられた。何が封じられているかは教えてもらえなかった。
「・・・さすがに奥の本殿はお見せできませんよ?」
目がきらきらと輝き始めた陽子さんに釘を刺す。
「ぐっ・・・。わかってます・・・でも、それ以外は見てもいいですよね?!」
それでも食いついてくる陽子さんに微笑で返すと、ようやく階段を登りきった。
「ようこそ、十六夜神社へ!」
「確かに何もないね・・・。」
ひかりさんが思わず呟いた。仕方がない、神社としての最低限の設備しかないのだから。親子で住める程度の家と、社殿があるだけの質素な造り。レティさんが慌てるように取り繕う。
「そ、そんなこと・・・。あ、美影ちゃん戻ってきた。陽子さんも。」
二人の表情は対照的だ。お母さんのお使いで来た美影さんは晴れ晴れとした笑顔で、陽子さんは何だか渋い表情で戻ってくる。
「陽子・・・どうしたの?」
湖刀美さんが不安そうに聞く。しかし返ってきた答えは。
「うう、何も見れなかったよ・・・。きっとこの神社には民俗学的に重要な意味があるはずなのに!調べれば色々出てくるはずなのに!・・・ああ!湖刀美ちゃん!図書館行って調べよう!今すぐ行こう!」
まくし立てる陽子さんを手で制しながら、呆れたように首を振る湖刀美さん。
「もう、陽子ってば・・・。とりあえず一旦戻ろ?ね?」
涙すら流して懇願する陽子さんも、しぶしぶ頷いて歩き出す。
「猫乃ー!そろそろ行くでー!」
美影さんはそのまま階段のほうへ歩きながら、境内のほうにいる猫乃ちゃんを呼ぶ。
「あ、はぁーい。じゃ、またねー月華ちゃん。」
「うん!またねー猫乃ちゃーん!」
月華が猫乃ちゃんにぶんぶんと手を振っている。それに手を振り返しながら、美影さん達と一緒に帰っていく猫乃ちゃん。
「じゃ、また明日。お昼前には行きますね。」
私は階段を降りていく彼女たちに声をかけ、姿が見えなくなるまで見送った。
◇◇◇
「ええんか?!一緒に泊まらせてもろて?」
「お邪魔じゃない?友達と一緒なんでしょ?」
美影さんと陽子さんの言葉に頷く。
「大丈夫!部屋はあるし、食事も余裕もって準備してもらってあるから!」
ひかりは胸を張る。
「もう。参加予定の人が数人来れなくなっただけでしょ。」
レティの突っ込みに、苦笑いを浮かべる。
「じゃ、お言葉に甘えよっか。いいよねっ、陽子。」
「そうね。よろしくね、ひかりさん。」
湖刀美さんの言葉に陽子さんが頷く。
「おっけー!まかしといて!それと、私のことはひかりでいいよ。」
「じゃ、私たちのことも呼び捨てでいいよっ。ね、ひかり。」
笑顔が溢れる。
「せやったらうちらも世話になろか。ええよな、猫乃。」
「ねぇさまがそう言うなら・・・。」
美影さんと猫乃ちゃんも、一緒に泊まることに同意する。
「やー、助かったわー。行き先神社やし、泊まらせてもらえる思て宿取ってなかったし・・・。」
一瞬の沈黙。
「ねぇさま・・・。笑い事じゃないですよ・・・。」
遅れてやってきた少女たちと合流し、食事を済ませて海へと向かう。顔を合わせたときの緊張感はどこへやら、少女たちはすっかり打ち解けていた。
「ほぅ・・・これはなかなかですわね。」
リズがサブリナを伴って砂浜へと降りてくる。そして早々にすぐそばにある海の家に入っていく。少し狭いのと地元の人間しか知らないせいか、人影はまばらで海の家も開店休業に近い。ほとんど貸切のプライベートビーチと言ってもいい。
「ひかりー!こっちこっちー!」
波打ち際で呼んでいるのは、フィーとアーニャ。二人とも本来の姿、マーメイドとスキュラの姿で波と戯れている。
「わーお。結構広いねー。こんな近くにいいトコあったんだー。」
「ホント・・・。キレイなところですね・・・。」
慧と昴は早々に水着に着替え、フィーたちのところに駆け出していく。
「なんか、いいのかなぁ・・・。こんな簡単に参加しちゃって・・・。」
「陽子、何言ってるの。ちゃんと水着用意してきたクセにっ。」
「湖刀美ちゃんこそ・・・。ちゃっかり新しい水着じゃない。」
湖刀美さんと陽子さんも、楽しそうに波打ち際へと走っていく。
「・・・猫乃。また、大きくなったんとちゃうやろな・・・?」
「え・・・?そ、そんなことないですよ、ねぇさま・・・?」
「いいや!また数ミリ大きゅうなっとる!?何で・・・何で猫乃ばっかり!?」
「ねぇさま、目が怖いです・・・」
海の家から響くのは、美影さんと猫乃ちゃんの会話。その会話に思わず視線を下に向け、自分の胸を確認してしまう。
「確かに、猫乃さん大きかったですからね・・・。」
レティの言葉に反応したのは、背後にいた少女。
「悪かったわね、小さくて。」
「星・・・。そこで突っかかると余計惨めだぞ・・・・。」
小さく非難の声を上げる星を、たしなめるエイル。
「アンタはナイスバディだからいいかもしれないけどね・・・。」
星の言葉をさえぎったのは、すでに遊び始めている少女たちだった。
「ほーらー!ひかりたちも早くおいでー!」
波打ち際には、色とりどりの水着と少女たちの笑顔が弾けている。
「レティ、みんな、行こっ!よーし、遊ぶぞー!」
みんなのところへ走り出す。明日も一日海で遊ぶつもりだが、まずは今日楽しもう。明日には雫さんと月華ちゃんもやってくる。そうすれば、もっと楽しいだろう。
◆◆◆
少女たちが波と戯れている頃、その様子を遠くから見ている者たちがいた。コードダーク実働部隊の面々だ。
「楽しそうね・・・。」
「そうですね・・・。」
狭い室内、閉じられた窓。冷房は付いてはいるが、人口密度が高すぎて効果が無い。つまりは、とてつもなく暑い。
「あの娘たちの情報は無いの?イレギュラーは少ないほうがいいんだけど。」
そんな暑さの中、モニターを睨みつけている女が呟く。
「ヒバリさん・・・。そんなにカリカリしなくても・・・。」
そういった女にヒバリが噛み付く。
「そうは言ってもねえ、こんな大所帯で監視する必要なんて無いでしょう。大体ルシル様やショウコたちがこの時点で来る必要ないじゃない。そう思わない?ツバメ・・・。」
そう詰め寄られ、ツバメは苦笑い。ルシルをはじめとした主力メンバーは下の砂浜で海水浴と洒落込んでいる。現状仕事が無いとはいえ、うらやましいとは思う。
「ま、まあまあ・・・。これは私たちの仕事ですし・・・。」
ヒバリを中心とした諜報活動メインのチーム。それが今ここにいる彼女たちの正体。
「それはそうだけど・・・。そうだ!チーム名でも決めましょうか!」
「いいですね!じゃあ・・・『ヒバリと愉快な仲間たち』とかどうですか?」
隊員たちは思いついた名称を口々に言い合う。真夏の室内、異様なテンションで意味の無い会議が続く。そしてそれは、ルシルたちが戻り日が暮れるまで続いたのだった。
◇◇◇
夜。海から戻った少女たちは、食事と風呂を済ませて部屋でくつろいでいた。夜になって合流したオルガさんとルイーダ先生もまた、のんびりと過ぎる時を楽しんでいた。
「じゃあ美影さんたちも、湖刀美たちも巫女さんなんだー。」
そんな、たわいも無い話をしていたその時。唐突に周囲の空気が変わる。濃密な妖気が宿に近付いてくるのを感じる。その数が、半端じゃない。
「ひかり!」
レティの顔も真剣そのもの。他の部屋も慌ただしくなっている。
「行こう!美影さんたちはここに・・・」
そう言って振り向くと、少女たちはすでに臨戦態勢に入っていた。
「うちらなら構へんで?やれるよな、猫乃?」
「はい、ねぇさま。」
二人はすでに巫女服に着替えている。湖刀美たちも巫女服に身を包んでいた。
「私たちも大丈夫だよっ。ねっ、陽子!」
「はい。何が起きているのか分かりませんが、お役に立てると思います。」
彼女たちの瞳に映る、決意と覚悟の光。その姿には、歴戦の戦士の空気すら纏っているようだ。
「ん。わかった。怪我、しないでね?」
外に出ると、遠くからおびただしい数の妖怪や魑魅魍魎がやってくる。海からも、陸からも。当然、空からも。
「ちっ・・・、数が尋常じゃないな。巫女連中がいれば、少しは違うんだろうが・・・。」
エイルが暗闇に浮かぶ無数の光を睨みつけながら、愚痴をこぼす。赤や金色の光が、夜闇に浮かび近付いてくる。
「妖怪退治は本職や無いけど、暴走してるんとちゃうかな・・・」
美影は最前列に立って、そう分析する。その言葉を、湖刀美が継ぐ。
「それか、操られてるのかもしれない。なんていうか、意思みたいなのがないような・・・」
その表情は真剣そのもの。
「なんだか心強いですね・・・。」
レティの呟きに、私は頷く。
「きっと、大丈夫!なんとかなるよ!」
みんなを奮い立たせるように、少しだけ大きな声で答える。
「そうだね!みんな、がんばろっ!」
「うん!みんな居るんだもん、大丈夫だよ!」
フィーが、慧が意気込む。
「問題なんてあるわけ無いわ!私が居るのだから・・・」
「ま、大丈夫じゃろ。期待してるで?」
リズが強がり、美影が笑い飛ばす。
「所詮、雑魚の集まりでしょ?ちゃちゃっとやっちゃいましょ!」
「ボクは、負けない。みんなを守るために・・・」
星が、オルガが覚悟を決めて呟く。
「負けられないねっ。頑張らないとっ!」
「乙女の貴重な時間を邪魔する奴は、許さないんだから!」
湖刀美の気合に、ひかりは思ったことを口走る。一瞬間が空き、辺りから笑みがこぼれる。
「まったくお前は・・・。」
「ひかり・・・」
エイルとレティが、呆れたような笑顔を浮かべる。
「えへへ、何か間違ってた?」
それに笑顔で答える。
「せやな。成長期を邪魔する奴は許せへんな。」
「お肌にも悪いしねっ。」
美影と湖刀美の言葉に笑顔で頷く少女たち。
「じゃ、行くよ!!」
その掛け声で、臨戦態勢は整う。そんな中、ひかりはここに居ない少女の身を案じていた。
(雫さん、大丈夫かな・・・。すぐ、行くからね・・・。)
◇◇◇
「何なの、これは・・・?」
異常な妖気の塊を察知して表に出てみると、妖怪の群れが結界を破ろうともがいている。あまりにも異常な数の妖怪に、愕然とする。
「何が起きているというの・・・?」
その状況は理解を超えている。今までに経験したことの無い、緊急事態。
「しずく・・・。こわいよ・・・。」
月華が震えながら縋り付いてくる。
「大丈夫・・・大丈夫だから、ね?」
励ますつもりが、声が震えてしまう。これだけの数を1人で相手することなど、想像したことも無い。
(みんなが、いれば・・・)
近くに来ている少女たちの姿を思い浮かべる。
「しずく!?だれか・・・来た!?」
月華の叫びに、入り口の鳥居のほうに向き直る。ゆっくりと刀を鞘から抜き放ち、正眼に構える。月華も覚悟を決めたのか、攻撃態勢に移る。
「結界は破れてない・・・のに、内側にトンでもない妖気が・・・?」
視線の先に姿が現れる。
「ふふふ・・・お出迎えとはご苦労なことだ。」
現れたのは男。体格のいい、中年の、それでいて威厳を感じさせる男。
「貴方は何者?人間じゃ、ないわよね?」
問いかける。人の姿をした、人ではないもの。そうとしか思えない。
「我が名は玄奘。碎玄奘と申すもの。汝と、ここに封じられしものを貰い受けに来た!」
「碎、玄奘ですって・・・?あの、裏切り者!?」
聞いたことのある名前。呪術に魅入られ、仲間を裏切った実力派の退魔士。そんな男のやろうとすることが、正義のわけが無い。
「貴方の思い通りにはさせない!はああああぁぁぁぁ!!」
決断。即行動。一瞬で間合いを詰め、玄奘の額めがけ刀を振り下ろす。はずだった。
「なっ・・・?」
踏み込もうとした瞬間、強烈な殺気を感じて飛び退く。さっきまで居たその場所に、二人の女妖魔が立っている。玄奘を守るように立つ女妖魔の顔に、見覚えがあった。
「お、お母様・・・?」
「フフフ、大きくなったわねぇ・・・雫。でも、玄奘様を傷つけようだなんて・・・許さないわよ?」
「たとえ大事な鍵だとしても、粗相をするならお仕置きが必要ですね・・・。」
凶禍、そして琥珀の言葉は冷たく、心に突き刺さる。
「お母様・・・?琥珀も・・・?な、何を言っているの・・・?」
戸惑い。急な状況の変化に、理解が追いつかない。月華も私にすがりつき、怯えたような表情を見せている。
「あぁら、雫・・・?分からないのかしらぁ・・・今の私は玄奘様のメス。忠実な下僕。貴方の・・・敵よ?」
認めたくない現実を突きつけられる。心が悲鳴を上げる。
「お、お母様・・・?どうして・・・嘘だと言ってよ、お母様!!」
そんな言葉に嘲笑を向ける妖魔たち。
「おや、まだ理解できないのですか?まあ、あなたは所詮鍵に過ぎません。理解する必要などありませんが・・・」
琥珀の言葉は、モノとしてしか存在価値が無いと言っているに等しい。
「さあ、奥の本殿の・・・供物殿の封印を解いてもらおう。」
玄奘の言葉に呼応するように、母が、琥珀が迫ってくる。動くことも出来なかった。月華は、いつの間にか姿を消していた。
(月華?逃げて・・・みんなのところに・・・)
両脇を抱えられ、玄奘の前へと引き出される。
「お前には、妖魔の時代の礎になってもらう・・・。」
身体が勝手に動き出す。
命じられるまま、奥の供物殿に向かう。
幾重にも掛けられた結界を、自らの手で解いていく。
心では抵抗しようとしても、身体が言うことを聞かない。
供物殿の封印を解く。
瘴気が溢れ出す。
そこに封じられていたもの。
それは・・・。
コードダークⅡ ~少女たちの聖戦~
第8話 【海風薫る悲しみの挽歌】 完
いかがだったでしょうか?
ええ、見事なまでに寸止めですとも。
今回は顔合わせ&水着シーンがメインなわけですが・・・
え?水着できゃっきゃうふふが無い?
必要・・・ですか?
てなわけで、今回はここまで。
次回はバトルシーンメイン。
一歩間違うと、前・後編に分けるかもしれません・・・。
それでは次回更新でお会いしましょう・・・。
次回予告!
『紅の亡霊』の一大攻勢。窮地に追い込まれる少女たち。操られるまま、封印を解く雫。そして、姿を現す最凶の妖魔。雫に迫る、選択のとき。戦いの果てに少女たちが眼にするのは、希望か絶望か・・・。
コードダークⅡ ~少女たちの聖戦~
第9話 【真夏の夜の狂詩曲】
「「愚かなる妖魔の王よ。その力、妾が貰い受けよう・・・。妾の血肉となり、永遠の安息を得るがいい・・・。」」
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「この辺やと思うんやけどなぁ・・・。」
二人の少女が、海沿いの道をてくてくと歩いている。その手には、一枚の小さな紙が。
「ねぇさまぁ・・・。まだ着かないんですかぁ?」
「ちょ・・・待ってや。・・・あぁぁぁ!こんなんで分かるかぁ!?」
その紙に書かれた地図は、適当すぎる上に昔の記憶を元にしたようなものだった。
「もぉ、ねぇさまが大丈夫って言うから・・・。」
「それはそうやけど・・・。霊力を感知できれば大丈夫やと思ったんよ・・・。」
そう言うと少女は、意識を集中するように目を閉じる。しかしすぐに首を振ってため息をつく。
「あかん・・・。霊気やら妖気やら魔力やら、雑じりすぎとってよう分からんわ・・・。」
「大神さんがパスした理由はこれだったんですね・・・。おかげでねぇさまと二人きりで旅行・・・うふふ♪」
笑顔を見せる少女の耳がぴくぴくと動く。その耳は猫のそれだったが、この街の中では目立たなかった。
「何言ってるん、猫乃・・・。一応お母はんのお使いやし・・・協会から依頼された仕事や。」
「それでも!二人きりの旅行なんですっ!」
ずずいっと顔を近づけて強調する猫乃。一方、姉である少女は目を背けながら苦笑いを浮かべる。
「はぁ・・・。とりあえず歩こか・・・。たぶん、もうすぐじゃろ。この鈴華美影の勘がそう言うとるし・・・。」
その横を一台のバスが通り抜け、少し先にあるバス停で止まる。
『十六夜神社前~。お降りの方は、足元にお気をつけください~』
それを聞いた瞬間、美影と猫乃はがっくりと肩を落とす。
「バス・・・あったんやな・・・。」
そのバスから降りた二人の少女。
「うわ~、綺麗な所だねっ!ね、陽子!!」
ポニーテールの少女が眼下に広がる海を見ながら隣の少女に語りかける。
「ホント!でも、ごめんね湖刀美ちゃん。こんなトコまで一緒に来てもらって・・・。」
三つ編みの少女が申し訳なさそうに呟く。
「もう。陽子ってば、そればっかり。せっかくの旅行なんだし、楽しもうよ。」
湖刀美は苦笑いを浮かべながら、陽子のほうに向き直る。
「それに、他の神社とか興味あるし、ね?」
ちらりと神社があるであろう山のほうを見ながら囁く。
「ん。それにここの神社はね、古くからあるはずなのに記述が少ないの。だからきっと民俗学的にも重要だと思うんだ!なにか隠された秘密があって、知られちゃいけない理由があるんだよ!だからね・・・」
「あはは・・・。その話は来るまでに何度も聞いたよ・・・。」
熱く語りだした陽子に、うんざりしたような表情を見せる湖刀美。それもそのはず、ここに着くまでに10回は同じ話を聞かされていた。
「えへへ・・・でも楽しみだなぁ。どんな秘密が隠されてるんだろ・・・。」
「ホント、陽子って民俗学とか好きだよねぇ・・・。朱礼君でも知らないこと知ってたりするし・・・。」
そう呟きながら、湖刀美はふっと海のほうを見つめる。
「そんなことないよ~。・・・でも、朱礼君も一緒だったら良かったのにね!そうすると私、お邪魔虫かもしれないけどね?」
笑いを堪えながら、陽子は茶化すように囁く。
「も、もう!陽子ったら・・・」
「じゃ、とりあえず行ってみよう?」
そう言って、二人は神社のほうへと歩き出す。
「雫さん、このまま真っすぐ行けばいいの?」
「はい。もうすぐ右手に鳥居が見えてきますよ。」
数人の少女たちが海沿いの道を歩いていく。その横を、一台のバスが通り過ぎていく。
「それにしても、良かったんです?うちの神社、何も見るようなもの無いですよ?」
私は申し訳なさそうに他の少女たちを見る。
「そーだぞー、ひかり~!見に来たって何も無いんだから、海で遊んでこいよー。」
雫の周りをうろちょろしながら、月華は頬を膨らませながら抗議の眼差しをひかりに向けている。
「まあまあ、ちょっと興味があるだけだから。そ・れ・と・も~、何か見られたくないものでもあるのかな~?」
「そっ?!そんなものない!!」
顔を紅潮させながら、月華はぷいっとそっぽを向いてしまう。
「ひかり・・・いじめちゃダメですよ?」
「ひどいなー、レティ。いじめてないよ~。ね?つっきー?」
レティの戒めを受け流しながら、ひかりは月華に笑いかける。
「知らない!・・・あれ?しずくー、お客さんみたいだよ?」
ぷいっと顔を背けた月華が、鳥居の前にいる少女たちに気が付く。その出会いが、世界の運命を変えるものだとは知る由も無く・・・。
◇◇◇
「じゃあ雫さんは、ここで巫女やってるんだー。」
自己紹介もそこそこに、私たちは十六夜神社へと続く長い階段を登っていく。私は湖刀美さんと美影さんの質問に答えながら、一段一段階段を登る。
「はい。普段は父と地元の人が管理してくれているんですけど、夏休みくらいは手伝わないと・・・。」
私は先頭に立ち、すいすいと階段を登っていく。他の子たちも問題なく付いてきているようだ。
「にしても、ここはちと特殊な神社じゃな・・・。」
美影さんがふと、あたりを見回しながら呟く。
「どういうこと?」
誰よりも早く反応したのは、陽子さん。
「ん・・・結界の張り方が独特なんよ。中に入れんようにするんが普通なんやけど、ここは外に出さんようにしてるんか・・・。」
私は驚く。美影さんの言うとおり、ここは封印結界を多重に張っている。奥に封じられているものを、外に出さないためだと教えられた。何が封じられているかは教えてもらえなかった。
「・・・さすがに奥の本殿はお見せできませんよ?」
目がきらきらと輝き始めた陽子さんに釘を刺す。
「ぐっ・・・。わかってます・・・でも、それ以外は見てもいいですよね?!」
それでも食いついてくる陽子さんに微笑で返すと、ようやく階段を登りきった。
「ようこそ、十六夜神社へ!」
「確かに何もないね・・・。」
ひかりさんが思わず呟いた。仕方がない、神社としての最低限の設備しかないのだから。親子で住める程度の家と、社殿があるだけの質素な造り。レティさんが慌てるように取り繕う。
「そ、そんなこと・・・。あ、美影ちゃん戻ってきた。陽子さんも。」
二人の表情は対照的だ。お母さんのお使いで来た美影さんは晴れ晴れとした笑顔で、陽子さんは何だか渋い表情で戻ってくる。
「陽子・・・どうしたの?」
湖刀美さんが不安そうに聞く。しかし返ってきた答えは。
「うう、何も見れなかったよ・・・。きっとこの神社には民俗学的に重要な意味があるはずなのに!調べれば色々出てくるはずなのに!・・・ああ!湖刀美ちゃん!図書館行って調べよう!今すぐ行こう!」
まくし立てる陽子さんを手で制しながら、呆れたように首を振る湖刀美さん。
「もう、陽子ってば・・・。とりあえず一旦戻ろ?ね?」
涙すら流して懇願する陽子さんも、しぶしぶ頷いて歩き出す。
「猫乃ー!そろそろ行くでー!」
美影さんはそのまま階段のほうへ歩きながら、境内のほうにいる猫乃ちゃんを呼ぶ。
「あ、はぁーい。じゃ、またねー月華ちゃん。」
「うん!またねー猫乃ちゃーん!」
月華が猫乃ちゃんにぶんぶんと手を振っている。それに手を振り返しながら、美影さん達と一緒に帰っていく猫乃ちゃん。
「じゃ、また明日。お昼前には行きますね。」
私は階段を降りていく彼女たちに声をかけ、姿が見えなくなるまで見送った。
◇◇◇
「ええんか?!一緒に泊まらせてもろて?」
「お邪魔じゃない?友達と一緒なんでしょ?」
美影さんと陽子さんの言葉に頷く。
「大丈夫!部屋はあるし、食事も余裕もって準備してもらってあるから!」
ひかりは胸を張る。
「もう。参加予定の人が数人来れなくなっただけでしょ。」
レティの突っ込みに、苦笑いを浮かべる。
「じゃ、お言葉に甘えよっか。いいよねっ、陽子。」
「そうね。よろしくね、ひかりさん。」
湖刀美さんの言葉に陽子さんが頷く。
「おっけー!まかしといて!それと、私のことはひかりでいいよ。」
「じゃ、私たちのことも呼び捨てでいいよっ。ね、ひかり。」
笑顔が溢れる。
「せやったらうちらも世話になろか。ええよな、猫乃。」
「ねぇさまがそう言うなら・・・。」
美影さんと猫乃ちゃんも、一緒に泊まることに同意する。
「やー、助かったわー。行き先神社やし、泊まらせてもらえる思て宿取ってなかったし・・・。」
一瞬の沈黙。
「ねぇさま・・・。笑い事じゃないですよ・・・。」
遅れてやってきた少女たちと合流し、食事を済ませて海へと向かう。顔を合わせたときの緊張感はどこへやら、少女たちはすっかり打ち解けていた。
「ほぅ・・・これはなかなかですわね。」
リズがサブリナを伴って砂浜へと降りてくる。そして早々にすぐそばにある海の家に入っていく。少し狭いのと地元の人間しか知らないせいか、人影はまばらで海の家も開店休業に近い。ほとんど貸切のプライベートビーチと言ってもいい。
「ひかりー!こっちこっちー!」
波打ち際で呼んでいるのは、フィーとアーニャ。二人とも本来の姿、マーメイドとスキュラの姿で波と戯れている。
「わーお。結構広いねー。こんな近くにいいトコあったんだー。」
「ホント・・・。キレイなところですね・・・。」
慧と昴は早々に水着に着替え、フィーたちのところに駆け出していく。
「なんか、いいのかなぁ・・・。こんな簡単に参加しちゃって・・・。」
「陽子、何言ってるの。ちゃんと水着用意してきたクセにっ。」
「湖刀美ちゃんこそ・・・。ちゃっかり新しい水着じゃない。」
湖刀美さんと陽子さんも、楽しそうに波打ち際へと走っていく。
「・・・猫乃。また、大きくなったんとちゃうやろな・・・?」
「え・・・?そ、そんなことないですよ、ねぇさま・・・?」
「いいや!また数ミリ大きゅうなっとる!?何で・・・何で猫乃ばっかり!?」
「ねぇさま、目が怖いです・・・」
海の家から響くのは、美影さんと猫乃ちゃんの会話。その会話に思わず視線を下に向け、自分の胸を確認してしまう。
「確かに、猫乃さん大きかったですからね・・・。」
レティの言葉に反応したのは、背後にいた少女。
「悪かったわね、小さくて。」
「星・・・。そこで突っかかると余計惨めだぞ・・・・。」
小さく非難の声を上げる星を、たしなめるエイル。
「アンタはナイスバディだからいいかもしれないけどね・・・。」
星の言葉をさえぎったのは、すでに遊び始めている少女たちだった。
「ほーらー!ひかりたちも早くおいでー!」
波打ち際には、色とりどりの水着と少女たちの笑顔が弾けている。
「レティ、みんな、行こっ!よーし、遊ぶぞー!」
みんなのところへ走り出す。明日も一日海で遊ぶつもりだが、まずは今日楽しもう。明日には雫さんと月華ちゃんもやってくる。そうすれば、もっと楽しいだろう。
◆◆◆
少女たちが波と戯れている頃、その様子を遠くから見ている者たちがいた。コードダーク実働部隊の面々だ。
「楽しそうね・・・。」
「そうですね・・・。」
狭い室内、閉じられた窓。冷房は付いてはいるが、人口密度が高すぎて効果が無い。つまりは、とてつもなく暑い。
「あの娘たちの情報は無いの?イレギュラーは少ないほうがいいんだけど。」
そんな暑さの中、モニターを睨みつけている女が呟く。
「ヒバリさん・・・。そんなにカリカリしなくても・・・。」
そういった女にヒバリが噛み付く。
「そうは言ってもねえ、こんな大所帯で監視する必要なんて無いでしょう。大体ルシル様やショウコたちがこの時点で来る必要ないじゃない。そう思わない?ツバメ・・・。」
そう詰め寄られ、ツバメは苦笑い。ルシルをはじめとした主力メンバーは下の砂浜で海水浴と洒落込んでいる。現状仕事が無いとはいえ、うらやましいとは思う。
「ま、まあまあ・・・。これは私たちの仕事ですし・・・。」
ヒバリを中心とした諜報活動メインのチーム。それが今ここにいる彼女たちの正体。
「それはそうだけど・・・。そうだ!チーム名でも決めましょうか!」
「いいですね!じゃあ・・・『ヒバリと愉快な仲間たち』とかどうですか?」
隊員たちは思いついた名称を口々に言い合う。真夏の室内、異様なテンションで意味の無い会議が続く。そしてそれは、ルシルたちが戻り日が暮れるまで続いたのだった。
◇◇◇
夜。海から戻った少女たちは、食事と風呂を済ませて部屋でくつろいでいた。夜になって合流したオルガさんとルイーダ先生もまた、のんびりと過ぎる時を楽しんでいた。
「じゃあ美影さんたちも、湖刀美たちも巫女さんなんだー。」
そんな、たわいも無い話をしていたその時。唐突に周囲の空気が変わる。濃密な妖気が宿に近付いてくるのを感じる。その数が、半端じゃない。
「ひかり!」
レティの顔も真剣そのもの。他の部屋も慌ただしくなっている。
「行こう!美影さんたちはここに・・・」
そう言って振り向くと、少女たちはすでに臨戦態勢に入っていた。
「うちらなら構へんで?やれるよな、猫乃?」
「はい、ねぇさま。」
二人はすでに巫女服に着替えている。湖刀美たちも巫女服に身を包んでいた。
「私たちも大丈夫だよっ。ねっ、陽子!」
「はい。何が起きているのか分かりませんが、お役に立てると思います。」
彼女たちの瞳に映る、決意と覚悟の光。その姿には、歴戦の戦士の空気すら纏っているようだ。
「ん。わかった。怪我、しないでね?」
外に出ると、遠くからおびただしい数の妖怪や魑魅魍魎がやってくる。海からも、陸からも。当然、空からも。
「ちっ・・・、数が尋常じゃないな。巫女連中がいれば、少しは違うんだろうが・・・。」
エイルが暗闇に浮かぶ無数の光を睨みつけながら、愚痴をこぼす。赤や金色の光が、夜闇に浮かび近付いてくる。
「妖怪退治は本職や無いけど、暴走してるんとちゃうかな・・・」
美影は最前列に立って、そう分析する。その言葉を、湖刀美が継ぐ。
「それか、操られてるのかもしれない。なんていうか、意思みたいなのがないような・・・」
その表情は真剣そのもの。
「なんだか心強いですね・・・。」
レティの呟きに、私は頷く。
「きっと、大丈夫!なんとかなるよ!」
みんなを奮い立たせるように、少しだけ大きな声で答える。
「そうだね!みんな、がんばろっ!」
「うん!みんな居るんだもん、大丈夫だよ!」
フィーが、慧が意気込む。
「問題なんてあるわけ無いわ!私が居るのだから・・・」
「ま、大丈夫じゃろ。期待してるで?」
リズが強がり、美影が笑い飛ばす。
「所詮、雑魚の集まりでしょ?ちゃちゃっとやっちゃいましょ!」
「ボクは、負けない。みんなを守るために・・・」
星が、オルガが覚悟を決めて呟く。
「負けられないねっ。頑張らないとっ!」
「乙女の貴重な時間を邪魔する奴は、許さないんだから!」
湖刀美の気合に、ひかりは思ったことを口走る。一瞬間が空き、辺りから笑みがこぼれる。
「まったくお前は・・・。」
「ひかり・・・」
エイルとレティが、呆れたような笑顔を浮かべる。
「えへへ、何か間違ってた?」
それに笑顔で答える。
「せやな。成長期を邪魔する奴は許せへんな。」
「お肌にも悪いしねっ。」
美影と湖刀美の言葉に笑顔で頷く少女たち。
「じゃ、行くよ!!」
その掛け声で、臨戦態勢は整う。そんな中、ひかりはここに居ない少女の身を案じていた。
(雫さん、大丈夫かな・・・。すぐ、行くからね・・・。)
◇◇◇
「何なの、これは・・・?」
異常な妖気の塊を察知して表に出てみると、妖怪の群れが結界を破ろうともがいている。あまりにも異常な数の妖怪に、愕然とする。
「何が起きているというの・・・?」
その状況は理解を超えている。今までに経験したことの無い、緊急事態。
「しずく・・・。こわいよ・・・。」
月華が震えながら縋り付いてくる。
「大丈夫・・・大丈夫だから、ね?」
励ますつもりが、声が震えてしまう。これだけの数を1人で相手することなど、想像したことも無い。
(みんなが、いれば・・・)
近くに来ている少女たちの姿を思い浮かべる。
「しずく!?だれか・・・来た!?」
月華の叫びに、入り口の鳥居のほうに向き直る。ゆっくりと刀を鞘から抜き放ち、正眼に構える。月華も覚悟を決めたのか、攻撃態勢に移る。
「結界は破れてない・・・のに、内側にトンでもない妖気が・・・?」
視線の先に姿が現れる。
「ふふふ・・・お出迎えとはご苦労なことだ。」
現れたのは男。体格のいい、中年の、それでいて威厳を感じさせる男。
「貴方は何者?人間じゃ、ないわよね?」
問いかける。人の姿をした、人ではないもの。そうとしか思えない。
「我が名は玄奘。碎玄奘と申すもの。汝と、ここに封じられしものを貰い受けに来た!」
「碎、玄奘ですって・・・?あの、裏切り者!?」
聞いたことのある名前。呪術に魅入られ、仲間を裏切った実力派の退魔士。そんな男のやろうとすることが、正義のわけが無い。
「貴方の思い通りにはさせない!はああああぁぁぁぁ!!」
決断。即行動。一瞬で間合いを詰め、玄奘の額めがけ刀を振り下ろす。はずだった。
「なっ・・・?」
踏み込もうとした瞬間、強烈な殺気を感じて飛び退く。さっきまで居たその場所に、二人の女妖魔が立っている。玄奘を守るように立つ女妖魔の顔に、見覚えがあった。
「お、お母様・・・?」
「フフフ、大きくなったわねぇ・・・雫。でも、玄奘様を傷つけようだなんて・・・許さないわよ?」
「たとえ大事な鍵だとしても、粗相をするならお仕置きが必要ですね・・・。」
凶禍、そして琥珀の言葉は冷たく、心に突き刺さる。
「お母様・・・?琥珀も・・・?な、何を言っているの・・・?」
戸惑い。急な状況の変化に、理解が追いつかない。月華も私にすがりつき、怯えたような表情を見せている。
「あぁら、雫・・・?分からないのかしらぁ・・・今の私は玄奘様のメス。忠実な下僕。貴方の・・・敵よ?」
認めたくない現実を突きつけられる。心が悲鳴を上げる。
「お、お母様・・・?どうして・・・嘘だと言ってよ、お母様!!」
そんな言葉に嘲笑を向ける妖魔たち。
「おや、まだ理解できないのですか?まあ、あなたは所詮鍵に過ぎません。理解する必要などありませんが・・・」
琥珀の言葉は、モノとしてしか存在価値が無いと言っているに等しい。
「さあ、奥の本殿の・・・供物殿の封印を解いてもらおう。」
玄奘の言葉に呼応するように、母が、琥珀が迫ってくる。動くことも出来なかった。月華は、いつの間にか姿を消していた。
(月華?逃げて・・・みんなのところに・・・)
両脇を抱えられ、玄奘の前へと引き出される。
「お前には、妖魔の時代の礎になってもらう・・・。」
身体が勝手に動き出す。
命じられるまま、奥の供物殿に向かう。
幾重にも掛けられた結界を、自らの手で解いていく。
心では抵抗しようとしても、身体が言うことを聞かない。
供物殿の封印を解く。
瘴気が溢れ出す。
そこに封じられていたもの。
それは・・・。
コードダークⅡ ~少女たちの聖戦~
第8話 【海風薫る悲しみの挽歌】 完
いかがだったでしょうか?
ええ、見事なまでに寸止めですとも。
今回は顔合わせ&水着シーンがメインなわけですが・・・
え?水着できゃっきゃうふふが無い?
必要・・・ですか?
てなわけで、今回はここまで。
次回はバトルシーンメイン。
一歩間違うと、前・後編に分けるかもしれません・・・。
それでは次回更新でお会いしましょう・・・。
次回予告!
『紅の亡霊』の一大攻勢。窮地に追い込まれる少女たち。操られるまま、封印を解く雫。そして、姿を現す最凶の妖魔。雫に迫る、選択のとき。戦いの果てに少女たちが眼にするのは、希望か絶望か・・・。
コードダークⅡ ~少女たちの聖戦~
第9話 【真夏の夜の狂詩曲】
「「愚かなる妖魔の王よ。その力、妾が貰い受けよう・・・。妾の血肉となり、永遠の安息を得るがいい・・・。」」