死亡した生徒に対し、いじめがあったことを公表する大津市教育委員会の関係者=同市役所で
|
|
先月11日に自宅マンション14階から転落死した大津市内に住む市立中2年の男子生徒(13)は、なぜ死ななければならなかったのか。防げるサインはなかったのか−。2日に市教育委員会が公表した生徒へのアンケート結果から、いじめの実態が浮かび上がったが、市教委は「生徒が死亡した原因は判断できない」。原因が分からないまま調査が打ち切られる。
記者会見で市教委幹部は「学校として、いじめに気づけなかった。適切な対応ができず責任を感じている。職員への指導力不足だった」と陳謝したが、頭を下げることはなかった。沢村憲次教育長は会見に姿を見せず「かけがえのない尊い命が失われたことは痛恨の極みであり、心からご冥福をお祈りいたします」と談話を示しただけだった。
「家から金がなくなっている」。死亡した生徒の父親は9月に二度も学校に相談していた。しかし、生徒は10月11日、マンションの手すりを乗り越えて死亡した。父親が、10月13日に「どんなことがあったのか知りたい」と依頼したこともあり、学校がアンケートに動いた。
「深く反省し、今回の反省を元に生徒たちの思いを真摯(しんし)に受け止め、できるところからすぐ改善に取り組む」「学校と家庭との綿密な連携を図る」
市教委は会見でそんな方針も示した。今後の対策としては▽個人面談などで関係した生徒のケアを含め、在校生の不安感を増幅させない▽複数教員による副担任制の導入で、生徒からの相談、情報提供に対応できるように細やかな観察、支援ができる態勢づくりをする−などを挙げた。これがなぜ事故が起きる前に打ち出せなかったのか。
この記事を印刷する