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日本のTPP参加、米側から出た「反対」の声  編集委員 中山淳史

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2011/11/2 7:01
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 とはいえ、全く相手にしていないかと言えば、「そうは言い切れない」と日本の自動車業界関係者は慎重にみる。「米国では失業率がいっこうに改善されず、来年は大統領選挙の年でもある」。タイミングは微妙である。

 実は昨年、自由貿易協定(FTA)を巡り米国との合意を急いでいた韓国は、最後までもめていた自動車問題で大幅に譲歩させられたことは、あまり知られていない。

■米自動車業界の意向を飲まされた韓国の教訓

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 米韓FTAが発効してもすぐには関税率が下がらない。乗用車は韓国側が主張した「関税の即時撤廃」が「5年後撤廃」になり、商用車については「米側は10年目に撤廃。韓国側は現行10%の関税を即時撤廃」にまで押し戻された。

 しかも、米側には「自動車に限定したセーフガード(緊急輸入制限)条項」が付いた。米国車に対し韓国国内で協定違反があった場合、「米側は韓国メーカーに関税を2億ドル課することができる」決まりもある。これらを米政府に働きかけ、合意に持ち込ませたのはAAPCだった。

 日本車は韓国車より米国内での販売台数が多く、AAPCはより厳しい制限を設けるよう求める懸念がある。だとすれば、TPPに参加するならルールづくりから日本は加わり、米側と直接交渉していく必要がある。TPPとは言っても、実質的には日米間に存在する関税を撤廃できるかどうかが、日本の自動車メーカーにとっては将来の競争力を左右する重大な問題である。

 欧州連合(EU)とのFTA交渉が並行して進み始めてもいる。自由貿易といいながら、EUも自動車には細かい注文を付けてきたのが韓国との交渉からは浮き彫りになった。

 日本は韓国が米・EUとの間で実現できなかったことを検証し、これから始まる交渉ではより有利な条件を引き出すことを心がけていくべきだ。この機会に出遅れたらそれこそ、貿易立国としては命取りになってしまう。

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中山淳史(なかやま・あつし) 89年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)、証券部などを経て産業部編集委員兼論説委員。専門分野は自動車、電機、運輸など。

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