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福島第1原発:原子炉内なお不安定 年内冷温停止に黄信号

福島第1原発2号機原子炉建屋を2、3号機の間の西側高台から撮影した様子=東京電力提供
福島第1原発2号機原子炉建屋を2、3号機の間の西側高台から撮影した様子=東京電力提供

 東京電力福島第1原発2号機で、核分裂の際に生じる放射性キセノンが2回にわたって検出され、一時的に臨界が生じた可能性が高まった。原子炉が依然不安定で、政府が目指す冷温停止状態の年内達成方針に黄色信号がともる恐れもある。【河内敏康、中西拓司】

 原発の収束目標を定めた工程表のステップ2では、年内に原子炉の「冷温停止状態」を達成するのが目的だ。具体的には、原子炉圧力容器底部の温度を100度未満に維持▽原子炉建屋などから出る放射性物質の放出の抑制・管理--を目指している。

 原子炉温度については10月以降、1~3号機で100度未満を達成。東電は10月28日に原子炉格納容器の空気を吸収・浄化する「格納容器ガス管理システム」を2号機に設置した。キセノンの検出は、そのさなかに起きた。

 検出されたのは、放射性のキセノン133とキセノン135。半減期はキセノン133が約5日、キセノン135が約9時間といずれも短い。複数の専門家は「検出が事実なら、ごく最近も小規模な臨界が起きている可能性がある」と分析する。

 なぜ臨界が生じうるのか。核燃料に含まれるウラン235などから自然に生じた中性子が、原子炉内にある水に衝突し、別のウラン235に当たることで核分裂が起こる。臨界は、この核分裂が続く状態を指す。小林圭二・元京都大原子炉実験所講師によると、圧力容器底部の温度低下によって水の密度が高まり、効率よく核分裂させる中性子が生じやすくなることなどによって、臨界が起きた可能性があるという。経済産業省原子力安全・保安院は「核燃料中のプルトニウムなどは、連鎖反応を伴わず単発で自発的に核分裂するため、ある程度キセノンが検出されても不思議ではない」としている。

 一方、3月の事故では検出された放射性ヨウ素が、今回は見つかっていない理由を、東電は「炉内の温度が低いためヨウ素が揮発せず、固体として残って、(ガス管理システムの)フィルターにかからなかったのではないか」と説明する。

 東電は、1、3号機でもガス管理システムを導入すればキセノンを検出する可能性があるとしている。小林元講師は「核燃料の場所も把握できていない。事故収束を議論する以前の問題だ」と話す。

 ガス管理システムを導入した際1%だった2号機の格納容器内の水素濃度は、10月30日には2.7%まで上昇した。4%まで高まると爆発する恐れがある。東電は「格納容器内の水素がガス管理システムで吸引された可能性がある」として、窒素ガスの注入量を上げるなどした。今回のキセノン検出でも、東電は2日未明にホウ酸水を注入したが、ともに対症療法に終始した。

 九州大の工藤和彦特任教授(原子炉工学)は「キセノン濃度は低く、核分裂の規模は極めて小さいと考えられる。政府と東電は原子炉から外部に出ている放射性物質の管理に全力を挙げるべきだ」と指摘する。

毎日新聞 2011年11月2日 23時59分(最終更新 11月3日 1時29分)

 

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