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特集ワイド:女たちの脱原発 座り込み集会ルポ

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 座り込み最終日。参加者たちは都心の銀座やJR東京駅周辺をデモ行進した。

 福島県大熊町から会津若松市に避難している大賀あや子さん(38)は、東電本店前で涙が止まらなくなった。福島第1原発から約8キロの場所に35年ローンで自宅を新築したばかりだった。「新居には地元の材木を使い、屋根にソーラーパネルを乗せ、庭に井戸も掘った。ヤギを飼ってチーズを作るのは私の担当。自然の中で子どもを授かり、育てていきたかった……」

 「住めない家」のローンが重くのしかかる。「再出発にお金が必要だけれど、加害者が勝手に作った賠償案なんて受け入れられない」と憤る。

 3日間の座り込みには福島県から延べ200人以上、県外から延べ2000人以上が参加した。北海道、大阪、広島、和歌山、富山など国内各地、ニューヨークやロサンゼルスでも福島の女性と連帯する集会が開かれた。

 一方、今月23日に発足集会を開く「脱原発をめざす女たちの会」は、評論家の吉武輝子さんや精神科医の香山リカさん、漫画家の倉田真由美さんらが呼びかけ「子どもたちに安全な地球を残すため、エネルギー政策の転換、脱原発の実現」を目指す。賛同人には女優の吉永小百合さん、竹下景子さんらも名を連ねる。

 「女たちの会」の呼びかけ人の一人、田中優子・法政大学社会学部教授は「女性、母親が一番心配するのは子どものことでしょう。除染にしても、避難にしても、目の前の問題に対応しなければならないから、女性の活動は具体的なのです」と解説する。

 「私たちの会は個人の活動を通じて知り合った人たちが連絡を取り合ってできたものです。吉永さんもライフワークとして原爆詩の朗読に取り組んでいます。皆、誰かに言われて参加しているわけではありません」

 吉永さんはドラマ「夢千代日記」で胎内被爆した女性を演じたことから原爆詩を朗読するようになった。7月31日には広島市での日本母親大会で「日本のような地震の多い国では原発はなくなってほしい」と発言。その姿勢は一貫している。

 田中教授は言う。「水俣の公害問題でも被害者が上京して訴えたことで運動が広がった。東北の被災地から出てきて座り込むのは大変なこと。どう息長くサポートしていくか。それが課題でしょう」

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 福島の女性たちの座り込み集会が終わり、全国の女性に引き継がれた。再会を誓って抱き合い、記念撮影をする参加者たち。

 「うさぎ追いし、かのやーまー……」

 「故郷(ふるさと)」を口ずさむ声がどこからか聞こえてきた。

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毎日新聞 2011年11月2日 東京夕刊

 

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