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グランセル地方編(7/20 第37話修正)
第四十五話 中枢塔、悪魔のゲーム
<空中浮遊都市 中枢塔アクシスピラー前広場>

戦艦グロリアスの処理をカシウスとレナ、レグナート達に任せたエステル達は工業区画からの地下通路を抜けて開けた場所に出た。

「うわあ、アルセイユから見た時も目立っていたけど、本当に大きくて高い塔ね」

目の前にそびえ立つ中枢塔を見上げて、エステルは感心したように声を上げた。
ラッセル博士によればこの中枢塔が浮遊都市の全ての機能を管理しているらしい。
《輝く環》が存在するかどうかは解らないが、ここは重要な場所であり自分達の制御下に置きたいと言うのがクローゼ達の依頼だった。

「逆回りのルートでここに向かっているリシャールはん達はまだ着いとらんようやな」
「あいつら程の腕ならそれほど後れを取る事もあるまい」

ケビンのつぶやきにレーヴェはそう答えた。

「お前ら、今のうちに薬や道具を確認して置け」
「はーい」

アガットに元気良く返事をしたエステルは鞄の中の道具類を確認して整理した。
そんなに待つまでも無く先程の5人にレンを加えて6人となったリシャール率いる調査隊が地下道から姿を現した。

「レンちゃん、大丈夫だった? 怪我とかしていない?」
「平気よ、リシャールさん達の活躍のおかげで敵はレンに指一本触れて無いわ」

駆け寄って心配そうな声で尋ねたティータに、レンは胸を張って答えた。

「やあ、待たせてしまってすまないな」
「それほどでもないさ」

リシャールが謝ると、レーヴェはそう答えた。

「リシャールさん達はどんな所を通って来たんですか?」
「私達は歓楽区画、行政区画などを通って来たが、とんでもない所だったな」

ヨシュアの質問に答えたリシャールの言葉に、エステルは不思議そうに尋ねる。

「でも歓楽街って楽しそうな場所だと思うけど……」
「いや、そこでは人間の欲望の醜さと言う物を見せつけられたよ」

リシャール達が訪れた歓楽街の店は、世界中の美男美女を模したと思われる人形達であふれていたのだと言う。

「他にも旨そうな匂いが漂って居る店もあったな」
「それで、ジンさんは食べたの?」
「まさか敵地でそんな事はしないさ」

エステルが尋ねると、ジンはそう言って笑い飛ばした。

「くっくっ、功夫カンフーが足りない人間は腑抜けにされちまうぜ」
「ヴァルターの言う通り、私達は日頃から修行が必要なのよ。弱い人間はあの街の誘惑に負けてしまうわね」

キリカの言葉を聞いたケビンはからかってリースに声を掛ける。

「まさかとは思うけど、焼き立てのパンの香りに釣られたりはしてせえへんやな?」
「バ、バカ言わないで、そんな事あるわけが無いでしょう!」

あわてて赤くなって言い返すリースの態度はバレバレだった。
リシャールとキリカの話を聞き終えたレーヴェは深いため息をつく。

「なるほど、そうしてアメを与え続け依存させて従わせるわけか」
「当人達は知らず知らずのうちに洗脳されている事に気が付いてなかったんやろろうな」

ケビンも同じようにあきれ果てた顔でぼやいた。

「でも、快楽を受け入れなかった人には酷い事が待ち受けていたみたいよ」
「どういう事ですか?」

悲しそうにキリカがため息をつきながらつぶやくと、エステルは不思議に思って尋ねた。
するとリシャールが淡々と説明を始める。

「歓楽街を抜けた私達は行政区画へと入ったのだが、そこには市庁舎や裁判所、治安を維持するための刑務所などがあった」
「えっ、でもあたし達が行った所にも役所みたいな場所があったわよ?」
「そこはきっと市役所の出張所ではないかしら」

エステルが疑問を口にするとキリカはそう答えた。
リシャール達が裁判資料を調べると、多くの市民が公務執行妨害で起訴されて逮捕されているのが目立った。
証拠について議論もされた様子も無く事務的に有罪と処理されて刑務所の方に送られている。

「空中の楽園都市が一転、監獄都市とは酷いもんやな」

ケビンがあきれた顔でため息をついた。

「快楽に釣られて溺れた人間も、だんだんと慣れて来ると要求もエスカレートする。とんだ悪循環ね」
「そんな街、復活させても何も良い事は無いじゃない!」

キリカのつぶやきを聞いて、エステルは怒って拳を握った。

「どんな力もその使い方次第とは聞くが、これは人間が扱えるほどの力じゃねえな」
「ああ、多分《輝く環》の魔力に飲み込まれてしまうだろうな」

アガットの言葉にレーヴェがうなずいた。

「ふん、与えられた力なんてテメェのもんにはできないんだよ」
「そうだな、自分の努力で身に付いた物でなければ使いこなせない」

ヴァルターの意見にジンも同意した。
会話が途切れて静けさが辺りを支配すると、程良い緊張感がエステル達を包む。

「気合が入ったみたいだね」

ヨシュアが尋ねると、エステルは黙って首を縦に振った。

「ではこれより中枢塔に突入する、良いな!」

リシャールの号令に、エステル達は異口同音に大声を上げながら入口に向かって突進するのだった。



<中枢塔第1階層 玄関ホール>

浮遊都市の機能を管理している中枢塔はセキュリティも当然厳しいものだと思われていたが、入口の扉にはロックもトラップも仕掛けられておらず、エステル達は拍子抜けするほど容易

に中へと侵入できた。

「あっさり入れちゃったけど、どうして?」
「おかしいですよ、お祖父ちゃんの話だと中枢塔の正面ドアには強力なプロテクトが掛かっているはずだったんです!」

エステルの疑問にティータもあわてて戸惑っている様子で答えた。

「もしかして、この中枢塔のマスターはレン達と遊びたいんじゃないかしら?」
「え?」

レンのつぶやきをきいて、エステルは驚いた顔をして固まってしまった。
しかしリシャールはレンの見解に納得する。

「なるほど、我々は誘い込まれてしまったわけか」
「面白え、受けて立とうじゃねえか」

ヴェルターは少し嬉しそうに指を鳴らしながらつぶやいた。
気が付けば、中央の床がチェッカー模様になっている。

「もしゲームを挑んでいるのだとしたら、あそこで開け放たれたドアはマスターの挑戦だな」
「明らかさまな挑戦ですね」

レーヴェがそう言って奥へと続く通路への先にある出口を指差すと、リースはあきれたようにため息をついた。
その通路の両側にはオレンジ色の液体で満たされたプールがある。
液体の正体が気になったエステルが屈んで顔を近づけると、エステルは不快感を覚えて口を手で押さえる。

「なんか血の匂いがする……」
「なるほど、かすかに漂う血の香りはこの液体からだったのね」

エステルの言葉を聞いたキリカは納得してうなずいた。

「エステル、なんだか危険そうな液体だから触るのは止めておこうよ」
「そうね」

心配そうなヨシュアの顔を見て、エステルは素直に従った。
落ちたら無事では済まなそうな危険な様子に、エステル達は緊張感に包まれながら通路を歩いて行く。
突き当たりのドアをくぐると、次は長い螺旋階段が続いている。
エステル達はウンザリとした気持ちになりながらも、階段を登り始めた。
体力の少なそうなティータの導力砲やレンの荷物などはアガットやジン達が代わりに持ち運ぶ。

「エステル、君の荷物も持ってあげようか?」
「ううん、大丈夫だから」

エステルも正直、荷物を持ってもらった方が助かる。
しかし同じ女性であるキリカやリースが顔色を変えずに階段を登っているのを見て、ヨシュアの申し出を断った。
階段の終点は広い部屋に通じていたが、その部屋はおかしな事にステージや観客席などがあった。
それはさながら闘技場コロッセオの中のようであり、正面にある鍵の掛かった扉には『自由か死か』と大きい文字で書かれている。
エステル達が部屋の様子に驚いていると、左右の扉から1体ずつ槍を装備した人形型の機械兵器が、窪んだ床が床がせり上がって小型の戦車が1台現れてエステル達の前に立ち塞がった



「な、何よこいつら!」
「考えるのは後だ、倒すぞ」

戸惑うエステルにそう声を掛けたアガットの号令により、エステル達の総勢12人のメンバーは機械兵器に続けざまに攻撃を仕掛ける。
さすがに人数が多い事もあり、エステル達の攻撃はラッシュとなり、機械人形兵器はすぐに倒れて動かなくなった。
小型の戦車型兵器は装甲が厚く、守備力もなかなかの物だったが、エステル達の集中砲火の前にやられた。
すると、部屋に入った時正面にあった扉が動き出し、鍵を自動で外して口を開く。
扉の先はまた上の階への階段になっているようだった。

「どうやらここは闘技場を真似て造った部屋のようだな」
「上への階段が勝利の報酬か、面白れえ」

レーヴェの言葉に、ヴァルターは楽しそうにつぶやいた。

「そんな楽しそうにしないでよ」

ヴァルターの様子を見て、エステルはあきれたように声を掛けた。
ティータは少し青い顔でつぶやく。

「お祖父ちゃんからもらったデータでは中枢塔の内部情報は機密扱いでしたけど……こんな事になっているなんて」
「きっと特権階級の人達が楽しんでいた秘密のゲームだったのよ」

レンはあまり落ち込んだ様子もなく見解を述べた。
キリカも冷静な口調で自分の意見を言う。

「今までの娯楽に飽きた者は新しい刺激的な物を求めた、そして導き出された結論がこの闘技場と言う事ね」
「刑務所に送られた人達にゲームに勝てば自由になれるって話したんだろうね」
「そんな……!」

ヨシュアの言葉を聞いたエステルはショックを受けて両手で口を押さえた。
エステル達が話をしていると、再び部屋の両側にある扉が開き、先程と同じ2体の人形型機械兵器と小型戦車兵器が姿を現した!

「どうやら早く昇って来いと急かしているようだな」
「まったく勝手なやつだぜ」

リシャールとアガットはウンザリしたような表情でため息をついた。
現れた人形機械兵器と小型戦車兵器はエステル達によるラッシュ攻撃であっけなく倒される。

「そうと分かったら、先に進みましょう!」

しかし階段に向かおうとしたエステルはキリカに止められる。

「待って、敵が闘技場のルールを守り続けるとは限らないわ」
「なるほど、増援を食い止める役目が必要だと言うわけだな」
「だが、まだこの塔は上の階がありそうだ。ここに留まって戦うとなるとかなりの長期戦になるな」

キリカの言葉に納得したジンのつぶやきを受けて、リシャールはそう言って考え込んだ。

「それでは俺がここに残ろう、体力には自信があるからな」
「ふん、お前だけに良い思いをさせられてたまるか、俺も残るぜ」
「サポートか回復をする人間が居た方が良いでしょう? 幸い、私は方術が使えるわ」

ジンが名乗りを上げると、ヴァルターとキリカもそれに続いた。
グループ分けが決まったエステル達はジン、ヴェルター、キリカに声を掛けて上の階への階段を駆け上った。
敵を足止めしてくれる仲間のためにもこのバカげたゲームを終わらせる!
エステル達は気合に満ちていた。



<浮遊都市 公園区画 高速巡洋艦アルセイユ付近>

エステル達の調査の間も、飛行機能回復の修理が順調に進んでいたアルセイユ。
それはラッセル博士とアルセイユのクルーである親衛隊と整備スタッフ、カノーネ士官が指揮する情報部の隊員達の努力によるものだった。
この区画の辺りには元々敵が少なく、宰相オズボーンの護衛を務めているミュラー率いる帝国軍の兵士達も余裕を持って力仕事などを手伝っている。
特にオーブメント停止現象を無効化する装置を敵の機械兵器から奪取して実用化できた事で導力工作機械などを使用出来るようになり作業は大きく進展した。
そしてカシウスとレナが援軍として現れ、エステル達が中枢塔に到着した知らせを受けると、アルセイユの中は希望に満ちた歓声に包まれる。
しかし、そんなタイミングで今までにないほどの大規模な機械兵器の軍勢がアルセイユを急襲したのだった。
野外で作業をしていた非戦闘員達は悲鳴を上げながらアルセイユの中に逃げ込む。

「敵を何としてでもアルセイユに近づけるな!」

せっかく修理した浮遊都市脱出ための翼であるアルセイユを壊させるわけにはいかない。
ユリアは決死の形相で防衛の指揮を執る。
リベール王国の中ではライバル視していた情報部のカノーネも、ミュラー率いる帝国軍の兵士達も、ユリアの指揮に従って一丸となって戦った。
回復のアーツが使えるようになったクローゼとオリビエも、デッキに出て戦いをサポートしている。
オズボーン宰相も堂々とした態度で戦況を眺めている。

「オズボーン宰相、貴方の身に何かがあったら大変です、お下がりください」
「ふん、帝国と王国の精鋭が揃っているのだ、その心配は無用だ」

クローゼの言葉をオズボーン宰相は首を横に振って断った。
オズボーン宰相の勝利を確信しているかのような自信満々の振る舞いは、不思議と周囲の者に安心感を与えた。

「どうしてこうなる前に察知できなかったの、調査隊や策敵班は何をしていたんですの!?」
「憶測だが、敵は意図的に姿を隠していたんだろうね」

苛立っているカノーネをなだめるように、デッキに居たオリビエがつぶやいた。

「もしや、最初に敵の数が少なかったのは我々を油断させるためか?」
「多分、導力停止現象を無効化する装置を作るのも見越していたのだろう」

ミュラーの意見にユリアも補足を付け加えて同意した。

「ふん、我々を弄んだと言う事か」
「なるほど僕達に希望を与えて置いて摘み取るのか、悪魔の所業だね」

オズボーン宰相に続いて、オリビエもため息をついた。
戦況を眺めていたクローゼがユリアに声を掛ける。

「住宅区画で山猫号を修理しているジョゼットさん達はもっと苦戦なさってはいませんか?」
「しかし、こちらからは敵の大群に阻まれ救援に行く事には出来ません……」

ユリアは辛そうな顔でそう答えた。

「こうなったら、こちらから連絡してカシウス殿達が救援に向かってくれる事を祈るしかないだろうね」
「そうですね……」

不安を感じたクローゼはついオリビエの手を握ってしまった。
オリビエはそれに気が付いたが何も言わずに手を握られるままにしておいた。
そしてオズボーン宰相はそのオリビエとクローゼの姿を複雑な表情で見つめていた。



<中枢塔第3階層 煉獄れんごくの間>

中枢塔の第2階層では馬と象を模した機械兵器が現れてエステル達に襲いかかって来た。
倒す事に成功したエステル達は、リシャール、アガット、ティータの3人にその場を任せて先へと進む。
第3階層に着いたエステル達は今までとは全く違った雰囲気の部屋に驚いた。
薄暗い部屋の空気は背筋が凍るほど冷たく、かすかだが不気味なうめき声が聞こえて来る。

「何か変な感じなんだけど……」

幽霊やお化けの類が苦手なエステルは震えながらヨシュアにしがみついた。
そのエステルの姿を見たレンがあきれた顔でため息を付く。

「エステルお姉さん、いくらなんでも怖がりすぎよ」
「わ、分かっているわよ」

自分より5歳も年下のレンに指摘されたエステルは、ゆっくりとヨシュアから体を離した。

「どうやらこの部屋は今までゲームに敗れた者達の霊魂が捕らわれている場所やな」
「ええ、彼らの一部は怨霊と化してしまっているみたい」

ケビンの言葉にリースは真剣な顔をしてうなずいた。
部屋の中ではたくさんの宝石がちりばめられた王冠を被って豪華な服を着た男女のミイラが数匹の霊魂を側に従わせて待ち構えていた。

「余は剣帝アントニウスなり、勇敢なる挑戦者達よ、ここまで来れた事は褒めてやろう。だが、ここを抜けた者は今まで誰もおらぬ」
「妾は王妃エルザ、そなた達の心まで凍えさせてやろう」

今までの機械兵器とは格の違うこの敵に、エステルとヨシュアは恐れを抱いた。
そんな2人の気持ちを見抜いたのか、レーヴェがエステルとヨシュアに声を掛ける。

「戦う前から恐怖に飲まれるな、平常心を失えばお前達の実力を発揮できないままやられてしまうぞ」
「そうね」

レーヴェの落ち着いた声を聞いてエステルとヨシュアは冷静さを取り戻した。
そしてレーヴェが《剣帝》に斬りかかったのを皮切りに戦いが始まった!
《剣帝》はレーヴェの攻撃を自分の剣で受け流すと、レーヴェに向かって反撃を開始した。
それは剣が舞っているかのようであり、他の誰かが割って入れるような間合いでは無かった。
エステルとヨシュアはレンと組んで《王妃》と対峙した。
《王妃》は戦う前にエステル達に言い放ったように、冷気系の攻撃を得意して高位の水のアーツも操った。
エステル達はプレイムジッポーを装備して凍結は防げたが、受けるダメージが大きくて防戦一方だった。
ケビンはボウガンで、リースは法剣を飛ばす戦技クラフトを使って部屋へと召喚されてくる怨念の塊と化した霊魂を近くに来る前に少しでも撃ち落とそうとした。
ダメージを受けた霊魂は自爆攻撃をして、エステル達を苦しめた。
混戦状態を脱したのは、クロックアップのアーツでスピードが上がったレーヴェが決めた《剣帝》への剣の一撃だった。
体制を崩した《剣帝》にレーヴェがさらに追い打ちを掛けて決着はついた。

「せっかくの勝負に水を差したみたいで済まへんな」
「この場でこだわる事はないさ」

ケビンの言葉にレーヴェは軽くそう言って否定した。
そして、レーヴェが加勢したエステルとヨシュアはレンのアーツによるサポートもあり《王妃》を倒した。
残る霊魂を蹴散らしたケビンとリースもほっと息をついた。

「凄いね兄さん、《剣帝》と呼ばれる相手を倒してしまうなんて」

ヨシュアは感激してレーヴェに話し掛けるが、レーヴェは浮かない顔をして首を横に振る。

「残念ながら俺が倒したのは本物の《剣帝》には及ばない存在だろう」
「今までのパターンからすると、複製コピーのような物じゃないかしら」
「それなのにあんなに強かったの!?」

レーヴェとレンの言葉を聞いて、エステルは驚きの声を上げた。

「どうやら、その推測は正しいようやな」
「うん、まだこの部屋に満たされている負のパワーは衰えていない……!」

ケビンの意見にリースも真剣な顔をしてうなずいた。

「じゃあまた復活して襲ってくるって事なの?」
「多分、そうだろうね」

エステルの言葉をヨシュアは肯定した。

「だから私はここに残る、ケビンは先に行って」
「俺も止まろう、《剣帝》の攻撃を受け止められる人間が必要だからな」
「だったらレンも協力するわ、アーツのサポートがあった方が戦いやすいでしょう?」

リースの提案にレーヴェとレンが賛成し、自然と先に進む組とここに止まる組とに分かれた。

「と言う訳だ、お前達は先に進め」
「でも、この先に居るのは親玉みたいなやつなんでしょ、それならあたし達がここに残った方が良いと思うけど」

レーヴェに言われたエステルは戸惑ったような表情でそう答えた。
しかし、レーヴェは首を横に振って否定する。

「いや、俺はお前達にこの事件の首謀者と対峙して、そこから何かを感じ取って成長する糧にして貰いたいと思ってる」
「まあ、カシウスはんが直接黒幕の所に乗りこまないで陽動役を引き受けたのにも、2人にそうして欲しいって意味やないかな」
「確かに父さんと母さんならならもっと早く黒幕をやっつけて事件を解決してそうだけど……」
「……エステル、行こう。ここまで言われたら期待に応えなくちゃいけない気がするんだ」

覚悟を決めたらしいヨシュアはエステルに手を伸ばした。

「分かったわ!」

そしてエステルもそのヨシュアの手を握って決意を固めた。
エステルとヨシュア、ケビンの3人はレーヴェ達の期待を込めた視線に強くうなずいて先へと続く階段を駆け上った。
この先の部屋に、この中枢塔を使ったゲームを仕組んだ黒幕が居る……!
きっとこの都市の異変や《輝く環》の重要な鍵を握っているに違いない人物との遭遇にエステル達は闘志を燃やすのだった。
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