宿泊施設が不足している岩手県三陸沿岸では、ボランティアの支援団体が冬場の峠越えを警戒し、内陸からの大型バスによる日帰り輸送を休止する動きが出始めている。陸前高田市の光照寺は、檀家(だんか)の研修道場として使っていた本堂の隣の別棟をボランティアに開放した。高澤公省住職は「縁もゆかりもなかった人たちが応援に駆け付けてくれている。自分たちにできることをしなければ」と話す。
陸前高田市は内陸部の花巻、一関から車で約2時間。間に北上山地を挟み、冬は吹雪や路面凍結によりさらに時間のかかることが予想され、支援団体が拠点施設を移転したり撤退したりするケースも増えている。
光照寺は被災を免れたものの、約450世帯の檀家の約8割が自宅を流失。お盆過ぎまでは犠牲者の供養に追われた。檀家や友人らから寄付が集まり、使い道を考えていたところ、支援団体などが冬場の宿に困っているという話を耳にした。
開放した別棟は、和室2室に十数人が宿泊可能だ。さらに十数人分の寝場所を確保するため、蚕棚式ベッドの取り付け作業を進めている。浜松市のボランティアの女性(68)は「車に泊まることもあったが、これで冬も安心して来られる」と話した。
陸前高田市災害ボランティアセンターを通じて現地入りした1日あたりのボランティア数は、ピーク(9月24日)の1215人から既に180人程度にまで激減。だが、春の畑の作付けに向けた細かいがれきの片付けや魚の養殖場の再生の準備など、人手が不足しているのが実情だ。
市社会福祉協議会の安田留美さんは「自立が必要な時期にきているのも確かだが、『老老世帯』で一方が亡くなるなど、支えが必要なケースも多い。支援の輪を絶やさないために、光照寺のような取り組みはとても助かる」と話している。【市川明代】
毎日新聞 2011年10月31日 11時10分(最終更新 10月31日 14時01分)