中野麻美弁護士・秦雅子弁護士への妨害活動と闘い両弁護士を支える集い」基調報告
2011/10/31(Mon)
中野麻美・秦雅子両弁護士に対する訴訟に関する報告書
2011年10月20日
「中野・秦両弁護士への妨害活動と闘い両弁護士を支える集い」準備会
1 経過と背景
(京品争議の真髄を貶める攻撃と誹謗中傷)
松下PDP事件当事者の吉岡力氏(なかまユニオン執行委員)が、松下事件原告の肩書きのもとに、中野弁護士の攻撃を開始したのは、レイバーネットのメーリングリスト上でのことでした。中野弁護士が京品ホテル争議を闘った労働組合東京ユニオンの代理人になったことを揶揄して誹謗中傷する書き込みを始めたのです。
京品ホテル争議といえば、リーマンショック後の雇用と労働者の生活危機に団結権を行使して職場を守り抜く「労働者魂」を見せてくれ、日本全国の労働者をおおいに励ますことになった闘いです。東京ユニオンは数々の不当労働行為(破産申立という究極の手段も含まれていた)に団結権を行使し、職場再建資金を得て労働者のための職場を再建する闘いに踏み出そうとしていたが、解雇無効を訴えた訴訟の解決金以外に組合に支払われた不当労働行為事件に対する解決金=職場債権資金も個人に配分すべきだとして訴訟が提起された。この「解決金返還訴訟」の組合側代理人を引き受けたことについて、吉岡力氏は、中野弁護士の著作・岩波新書「労働ダンピング」にひっかけながら、労働者の解決金をダンピングする弁護士であるかのように揶揄し誹謗中傷したのでした。これは、京品争議の真髄を貶め、人々に誤解を植え付けて労働運動の連帯を分断する卑劣なものでした。
(Mの懲戒申立)
弁護士の非行がメディアでも取り上げられるようになりましたが、懲戒請求された弁護士がそれだけで「非行弁護士」の烙印を押されることは許されません。中野弁護士がM氏から懲戒請求を申し立てられたのは2009年のこと。解雇無効とハラスメントを訴えた訴訟が最高裁で敗訴確定した後、「和解を強要された」「担当弁護士からハラスメントを受けた」などとして懲戒処分を求めたものでした。
(懲戒請求は迅速に否定された)
事実をみれば当然のことながら、懲戒請求は、東京弁護士会も、日弁連も、そして弁護士が関与しない綱紀懲戒委員会も、懲戒申立には理由がないとして懲戒には付さないことが決定されています。決定の主旨は、以下のようなものです。
1.受忍関係が相当長期間にわたって継続しており、その判決内容等からすると、Mが指摘する詳細な事実関係に基づいた相当回数、時間に及ぶ打ち合わせが行われた上での主張、立証活動が行われていることがうかがわれること。
2.当事者間において意思の疎通がはかられないままMの意思に反する訴訟活動が行われたことをうかがわせる十分な証拠は存しないこと。
3.仮に、当事者間の信頼関係に問題があったとするならば、例えば第一審判決の段階でMが中野弁護士を解任して新たな代理人を選任する等して、当事者間の信頼関係の破綻から生ずる諸問題を解決する方策も十分残されていたこと。
4.M自身、主要な期日や和解手続にも参加していたことがうかがわれ、和解手続が行われる状況も熟知していた上で手続に臨んでおり、又、Mの意思に沿わなければ、和解手続に応じないとすることは十分可能な状況にあったのであるから、同人の意思に反する手続が行われたとは言い難いこと。
5.Mが指摘する中野弁護士の種々の発言については、そもそもこうした発言があったと証拠上認められない部分が多く、また、一部中野弁護士が認めている発言についても、その趣旨、受け止め方について当事者間にくい違いがあるものの、弁護士としての品位を害するまでの発言とは言い難く、Mが指摘する中野弁護士の一連の発言を全体として捉えた場合でも、弁護士としての品位を害するとまでの発言とは認められないこと。
6.弁護士報酬について、関係各証拠によると、中野弁護士が受領した報酬は、本件解雇事件の着手金30万円と本件損害賠償事件の控訴審になった段階で受領した30万円(計60万円)であり、また(秦弁護士については、上記控訴審の段階で受領した30万円であって、Mの主張は認められないこと。
(訴訟提起を利用したインターネット上の誹謗中傷)
中野弁護士に対する懲戒請求が認められないとなると、M氏は、今度は秦弁護士を懲戒請求しました。そして、懲戒請求とほぼ同じ主張をして中野・秦両弁護士に5000万円を支払えという訴訟を提起したのです。
2011年6月10日の訴訟提起と同時に、吉岡氏は、「中野麻美弁護士(NPO派遣労働ネットワーク理事長)ら2名の人権派弁護士を訴えた原告Mを支援する会」会長を標榜してホームページを立ち上げた。そして、そのホームページ上に、二人の弁護士の名誉を著しく毀損し、人権を擁護することを旨とする弁護士としての業務を妨害し始めました。
このホームページとそこからつながる誹謗中傷サイトを読んだ人の感想・意見は、「意味不明」「気持ち悪くなる」「両弁護士に対する明白な人権侵害」といったものです。
M氏の訴えは、懲戒手続きの審査によってすでに明白に否定されています。
なお、M氏や弁護士の非行を追及することに力を注いでいる津田氏らは、弁護士会の懲戒手続きは仲間内でかばい合うという批判をしているが、それはまったく違います。 司法改革の一環として、外部の市民だけで構成される綱紀審査会が設置されるようになった弁護士への懲戒手続きは、厳格・慎重を極めるもので、単位弁護士会、日弁連が「理由なし」としてきた懲戒申立を逆に認めるケースも少なくないのです。
その綱紀審査会が懲戒請求に理由なし、としたことは、両弁護士が暴言を吐いたり、和解を強要したりしたなどの訴えに根拠がないとみることができます。インターネット上で不特定多数の市民に垂れ流す行為が正当性をもつには、真実性について懲戒審査以上の確たる根拠がなければなりません。それを知ってこのような書き込みを行うことは、誹謗中傷のためにあえて虚偽の事実を利用するという以外にないものです。
きわめつけは、「会」のホームページの中にある「オリンパスコンプライアンス裁判で濱田正晴さんに全面的非を認める和解を強引に進めようとして、一審途中で解任されていた中野麻美弁護士」という記載です。オリンパスコンプライアンス裁判第一審は、中野弁護士以外に3弁護士が代理人になって、4名全員が一致して行動しています。そして判決にはちゃんと4名の弁護士が名前を連ねていて、代理人を解任されたとか辞任したこともありません。和解についての書き込みも嘘で、和解のなかで金銭の話しが出たことは一切ないことが確認できています。
2 私たちは徹底的に闘います
(人権活動への妨害行為は許さない)
吉岡力氏のホームページや投稿には、これに類することが満載されています。この誹謗中傷の書き込みをみて、「もしかしたら自分も同じようにされるかも知れない」「人ごとではない」と思う人は少なくないはずです。何故なら、相談にはある程度のリスクがつきものだからです。こうしたことがまかり通ったときには、人権活動が不当に制約されることになりかねません。個人の名誉や信用が損なわれるという人権侵害行為にとどまらず、人権のための社会的活動を不当に制約する業務妨害行為というべきです。こうしたネットによる攻撃は無視できない実害を広範囲な人々に及ぼすことになりかねません。
(言論の自由は人権だが)
吉岡力氏のホームページなどへの投稿は、民事・刑事責任を問われるべきものであることはいうまでもありません。この10月12日には、10名の弁護団が吉岡氏に宛てて、誹謗中傷にわたる書き込みのすべての削除と将来にわたる行為の停止を通告しました。通告書には、訴状など(訴えた本人である)依頼者のプライバシー・人権にかかわる文書を垂れ流さないよう求める警告も含まれています。
民主主義社会では、言論の自由は侵してはならない人権です。しかし、根拠のない誹謗中傷記事が自由にインターネット上に掲載して誰にも広く行き渡らせることまで自由に認めることになれば、言論の自由という人権の死滅さえ招きかねないものです。
人権を保障する社会は、人間が相互に尊重し合っているという信頼を基礎に成り立つものですが、信頼はちょっとした暴力によって簡単に破壊できる反面、信頼を築くことには多大なエネルギーを必要とします。暴力(究極の暴力は戦争である)や差別がこうした人間相互の信頼を容易に破壊してしまうことは、これまで歴史が繰り返してきた誤りなのです。それだからこそ、暴力や差別との闘いが重視されてきたのです。
今回浮上した二人の弁護士に対するネット上の誹謗中傷は、「表現による暴力」であり、私たちの社会においては、あってはならない行為なのです。インターネットというこれまでにはないツールを用いた表現の暴力(国際社会においても取り組みの必要が指摘されてきている)は、断じて許されません。それは人権社会の基盤にかかわる、そして私たちの安全と平和な生存にかかわる問題です。
(インターネット暴力との闘い)
この件に関連するホームページやブログ、ユーチューブなどのインターネット配信の書き込みをみると、事件の核心に触れる事実は何も明らかにしないまま、キーワードを強調した誹謗中傷だけを垂れ流しています。表現方法もきわめて差別的・侮辱的です。
社会に根付いて人々の判断をおかしくさせてしまう偏見や固定観念に依拠して、こうしたメッセージを垂れ流し、ターゲットになる人物を公衆に晒して排除を扇動しようとする卑怯極まりないやり方であります。
これは、言論とはいえない「暴力」なのです。
労働弁護士は、こうしたリスクに晒されやすい。しかし、こういう攻撃を受けたら、労働弁護士になりたいと思う人は居なくなるかも知れません。労働弁護士だけの問題ではありません。私たちは、こういう時代だからこそ、一人ひとりを大切にして活かしていけるような社会を展望したいと思います。
まみサポート at 2011/10/31(Mon) 12:35