2011年10月31日03時00分
年に数日間だけ現れる「幻の駅」が佐賀にある。その名も、バルーンさが駅。毎年11月の佐賀インターナショナルバルーンフェスタに合わせて、佐賀市の会場近くにできる臨時の駅だ。今年は2日から6日までの5日間。その姿を写真に収めようと、全国から熱心な鉄道ファンが集まる。
バルーンさが駅は、1989年にバルーンフェスタ開催期間中の臨時駅として開業し、今年で23年目。九州唯一の臨時駅で、JR長崎線の鍋島駅―久保田駅間の嘉瀬川河川敷近くにある。屋根のないホームはふだんもあるが、期間中はプレハブ駅舎が置かれ、「白いかもめ」など特急が65本、普通列車は640本が停車する。昨年は5日間で14万2千人が乗降した。
「100機を超えるバルーンと列車のコラボレーションは、もう最高ですよ」と熱弁をふるうのは、「さが鉄道研究会」の古賀宏会長(50)。バルーンさが駅と停車する列車と空に浮かぶ熱気球を同じフレームに収めた写真を狙う。「バルーンと白いかもめが同時に写せるのは、日本でここだけ」と目を輝かせる。
古賀さんによると、良い写真を撮るコツは、(1)バルーンが立ち上がる午前6時半から7時ごろ(2)撮影場所は、当日決まる競技内容をチェックしてから選ぶ(3)駅の南側から北側に向かって撮影する――だそうだ。
撮影好きの鉄道愛好家「撮り鉄」だと自他ともに認める佐賀北高通信制写真部の顧問、新原和俊さん(59)も、5年前から写真部の生徒を引率してバルーンフェスタを訪れる。昨年は、この臨時駅でJR九州のバルーンとディーゼル機関車の共演の撮影に成功した。「ポスターにしたいほどの出来」と胸を張る。
年に数日しか乗車できないという「レアもの感」も、駅の人気を高めている。JR九州は記念乗車券や佐賀バルーンフリーきっぷを発売し、期間中に各駅のみどりの窓口で買えば「バルーンさが駅行き」と印字された切符を手にできる。さが鉄道研究会は「全駅乗降をめざす『乗り鉄』や、記念切符などを集める『収集鉄』にも幻の駅として名高い」と話す。
JR九州の広報担当者は「観光客の交通手段として開業しているので、鉄道ファンのための企画ではない」と困惑ぎみだが、主催のバルーンフェスタ組織委員会、水町博史会長(63)は「鉄道ファンがそんな楽しみ方をしているのは初めて知った。想定外だけどうれしい」と歓迎する。(堀江昌史)