きょうの社説 2011年10月30日

◎輪島沖の風力発電 電力の「地産地消」モデルに
 輪島沖で進められる沖合養殖を兼ねた洋上風力発電計画は、電力の「地産地消」と漁業 振興を組み合わせたユニークで、可能性のあるアイデアだ。輪島市内の電力需要をほぼ賄える上に、エネルギーの多様化という国策に合致し、雇用を増やす経済効果も期待できそうである。

 問題は、奥能登を代表する景勝地の沖合に、最新鋭の風車が並ぶ光景をどう評価するか だ。「自然破壊」と見るのか、それとも輪島の新たな「名所」として積極的に受け入れるか、地元の受け止め方はどうなのだろう。風力発電の設置には漁業権を持つ地元漁業者の同意が必要だが、風車に設置するいけすが漁業振興にどの程度寄与するのかも気になるところだ。

 風力発電は二酸化炭素の排出がなく、繰り返し使える再生可能エネルギーの中でも採算 性が高い。発電コストは太陽光の4分の1程度で、太陽光に比べて経年劣化も格段に少ない。欠点は、発電が風任せになり、安定しない点だが、能登の海岸線は大陸からの季節風を直接受ける有利さがあり、風力発電の適地といえる。

 日本初の本格的な洋上風力発電所であるウィンド・パワーかみす(茨城県神栖市)は、 東日本大震災の震度6の地震と5メートルの津波に耐え、今も安定的に電力を供給している。耐久性という点では全く不安はなく、陸地から離れた海の上だから騒音の心配もない。ただ、雷が多い地域だけに十分な対策が必要であり、環境や漁業などへの影響評価も重要だろう。

 設置場所は輪島市曽々木海岸や、名舟海岸沖が想定されており、景観が変わることへの 不安がある。曽々木のシンボル的な存在である「窓岩」周辺などは、観光客の撮影スポットでもあり、避けるべきだろう。ただし、設置場所次第では、自然と調和したテクノロジーの造形美が楽しめる場所として、人気を集めるかもしれない。

 東日本大震災後の電力不足は、電力供給を単一の大規模発電のシステムに頼る危うさを 浮き彫りにした。地域で使う電力を地域で賄う小規模分散型のシステムは、電力の安定供給に役立ち、地域の活性化にも一役買うのではないか。

◎日本再生戦略 地方を活性化する道筋も
 政府の重要政策の司令塔を担う「国家戦略会議」が始動し、当面の優先課題は年内に策 定する「日本再生の基本戦略」となる。来年半ばにはこの基本戦略を具体化し、「日本再生戦略(仮称)」を決定する。

 菅政権が昨年6月に打ち出した新成長戦略を強化する狙いだが、東日本大震災や長期化 する超円高などを受け、経済成長戦略、エネルギー戦略なども抜本的な見直しを迫られている。戦略会議にまず望みたいのは、日本再生の道筋として、地方重視の視点を明確にすることである。

 野田佳彦首相は2度目の所信表明演説で、日本再生戦略に関して、新産業の創出や世界 の成長力の取り込み、新たなフロンティア開拓へ向けた方策などを挙げたが、9月の所信表明の内容から踏み込まず、戦略会議の議長でもある首相が何をしたいのか今ひとつ伝わってこない。

 国家戦略会議については、小泉政権時代の経済財政諮問会議が内閣府設置法に基づく強 い権限が与えられたのに対し、役割や位置づけがあいまいで、政策実行という点で懸念が残る。首相が覚悟を決め、強いリーダーシップを発揮しなければ、各省庁の抵抗をはねつけることはできないだろう。

 菅政権時代の新成長戦略は、環境、医療、観光など七つの戦略分野に21の重点プロジ ェクトを掲げ、国際競争力の強化を柱に据えたが、既存の政策を寄せ集めた総花的な印象が強かった。東京一極集中の是正にも触れず、物足りなさが残った。

 東日本大震災の被災地でこれから具体化する復興計画は、特区制度や交付金制度、農漁 村振興策にしても、地方再生の試金石となる。日本再生戦略もそれを踏まえて方向性を肉付けする必要がある。

 全国総合開発計画(全総)に代わって2008年に閣議決定された国土形成計画は、人 口や産業が東京、太平洋ベルト地帯に集中する「一極一軸」の是正を目標に掲げた。国家のリスク分散という観点からも計画の意義はさらに高まっている。日本再生戦略でも、その理念を明確に打ち出してほしい。